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シャドウハンターズ
 ボードゲーム

2006.03.06 19:39 てらしま
シャドウハンターズ
シャドウハンターズ
2006年
ゲームリパブリック
4-8人(多いほうがいい?)
1時間

 つまり『超人ロック』である。正体を伏せられていて、敵か味方かわからない相手を推理しながら戦うのだ。なんていうか、みんなそういうの好きだよね。
 ただし、ロックよりもかなり単純になっている。戦闘はただ一方的に殴るだけで反撃もない。マップは6マスしかなく、ダイスで移動。
 もちろん特殊能力などもあるが「ラフノールの鏡」だの「ニケ」だのといったとんでもないものはない。……超人ロックのボードゲームを知らない人は、まあそういうものがあるんだと思ってくれればいいです。
 GOODとEVILに分かれて戦うところも超人ロックと同じだけど、「ハンター」「シャドウ」といいかえられている。ハンターはシャドウを全員殺せば勝ちで、シャドウはハンターを全員殺せば勝ちだ。
 独自の勝利条件を持ったニュートラルもいる。
 で、情報やアイテムを集めながら戦う。
 情報は「おばばの家」なる場所で他人を占ってもらうと、限定的に判明していく。「シャドウかニュートラルならアイテムをよこせ」とか「最大体力が12以上ならダメージを受けろ」とか、そんな感じのカードを他人に渡して、反応を見て絞りこんでいく。
 移動はダイスでおこなう。D4+D6という変なダイスを使って、出た目でそのターンのいき先が決まる。つまり好きなところにいけるわけではない。
 戦闘は、近くにいる相手を「殴る」といえばすぐに殴れる。相手に変な特殊能力がないかぎりは、反撃も受けない。
 全体的に「ジレンマが少ないように」というデザイナーの意図が感じられる。あまり重くない、気軽なゲームにしたかったのだろう。
 というかたぶん、そうしなければ売れないと判断したのだと思う。

 がんばったなーという印象である。たしかに『超人ロック』風のゲームを、できるだけ簡単な(そして明確な)ルールの中に再現しているのだ。
 ただし、簡単にしすぎた感もないではない。
 なにしろ、他人を攻撃することの、表面上のリスクが非常に小さい。だからてきとーに殴られる。
 わたしは情報もなく殴るべきではないと思っているが、実際は、近くに人がきたら必ず殴られると思っていたほうがいい。なにしろ反撃されないのだから、ほんとにてきとーに殴れてしまう。
「実は味方だったんだー」となったら大変だとは誰でも思うが、ニュートラルの勝利条件をうまく利用すれば味方になりうるというあたりは、このゲームか『超人ロック』に慣れていなければわからない。となれば、たった1人(か2人)の味方以外は全員「殴ってもいい相手」になってしまうのだ。
 こうしたプレイは実は間違っているが、しかたのないことでもある。そもそもこんなマニアックなシステムで、気軽なゲームを作ろうとしたところに無理があると思う。ルールブックにミスリードされているのである。
 ルール上リスクなく殴れるんだから殴る。それは責められないのである。すごく責めたいけど。
 ということで、まあだいたいは、運悪く自分のいる場所に他人がたくさんきてしまった人が、最初に殺される。ちょうどそのころにはだいぶ情報が明らかになってきていて、残りの誰がどちらのサイドなのかも判明している。
 一人死んで、そこからゲーム開始なのである。
 まあそれが悪いとはいわないが……「汝は人狼なりや?」がもともとだと思えばそれでもいいのだろうが、その「最初に死んだ人」が誰だったかで以後の趨勢が決まってしまうわけで、そうすると、勝つか負けるかは運次第、ということになってしまう。
 システム上、バランスはとれていない。というか、きれいにバランスよく作られている必要はないシステムである。だから、ほとんど必ず勝つキャラクターというのもいるし、まず勝てないキャラクターもいる。
 そうしたことを理解した上で、プレイヤーが積極的にバランスをとろうとしなければならないのが、超人ロックゲーの難しいところ(おもしろいところでもある)。
 プレイヤーたちが全員「運勝負」のリスクを避けるプレイスタイルなら、いいゲームになりえる。
 しかしそういう人はごくごく少数派だ。
 まあ楽しくないわけではない。「運勝負」を受け入れてしまえば、まあやっているときは楽しいと思う。でも他人のプレイを見ていて「そのリスクは避けられた」と感じ、そこにストレスを感じてしまうと、これはかなりキツイ。
 攻撃にリスクがないぶん、ロックよりもずっと、そういうところが強調されてしまっているのだ。

 とはいえ、単純な完成度ということでいえば、小さいゲームにしたぶん、シャドウハンターズのほうが上だろう。
 ロックは、プレイヤー全員がゲームをゲームとして成立させるための努力をしなければゲームにならないほど完成度の低いゲームだった。それに比べればまあなんとかなっている。
 そもそも、そんな完成度のゲームがいままで続くファンを獲得しているのだから『超人ロック』というゲームにはなにかがあったのだろうとは思う。
 それが、シャドウハンターズにも引き継ぐことができているのかどうかは、もっとやってみなければわからない。
 心配なところはある。とりあえず、キャラクターの種類がまったく足りない。すぐにエキスパンションでも出してほしいところだ。この3倍くらいいてもいいと思う。
「最後まで生きていたら勝ち」なんてキャラクターがいるのだが、こいつは他のプレイヤーがなにをしていても関係ないわけで、ゲーム上必要ないキャラクターだと思う。『超人ロック』でいえばジェシカとか。こういうキャラクターは、何度もプレイするうちに「抜いちゃおうか」ということになりかねない。だから、完璧なバランスで作られているのでなければ、キャラクターは余分にいるくらいでもいいと思う。
 システムでがちがちに固めることはあえて避けた「開いた」デザイン。ちょっとした改変も容易なため、ローカルルールが生まれやすそうだ。
 そのへんも『超人ロック』と同じ。これはあまりいいことではないだろうが、ゲームのおもしろさを決定づける要素というのは、こういう完成度とかそういったものとはまったく別のところにある。
 つまり、何度もプレイさせるなにかを、持っているかどうかなのだ。
 わたしは、シャドウハンターズは少し厳しいかなと考えている。でもがんばったって感じ。ぜひこの会社には、どんどんボードゲームを作ってほしいのだ。

 ……あと、せっかくイラストつきのカードなのに女の子キャラクターが足りないよね。

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シャドウハンターズを