遊星ゲームズ
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トーレス
 ボードゲーム

2003.12.23 てらしま
トーレス
FX
W.Kramer/M.Kiesling
2-4人(4人)
1.5時間

 箱を空けると、大きな袋に塔の部品がどっさり。まずこれにびっくりする。
 塔の部品はいくつも積み重ねられるようになっている。これを使って、城を高く、大きくしていくゲームだ。
 基本的には、ルールは単純だ。プレイヤーはそれぞれ、騎士コマを持っている。自分の騎士が置かれた城の大きさにしたがって得点が入っていくのだが、この得点の計算方法がいい。単純に「騎士がいる高さ×城の面積」という得点がもらえるのだ。
 同じ城から複数のプレーヤーが得点を得るのだが、とにかく他人より高いところにいれば高い得点が得られるわけで、これはわかりやすいし、単純でいい計算方法だと思った。
「バカと煙は高いところが」とかいうが、それはつまり人間はすべからく高いところが好きなのだという意味でもある。その本能にしたがっていけば得点につながる、いいルールではないか。
 他人のコマがあるところには移動できないし、2段以上高いところにも移動できないというわけで、なかなか簡単にはいかない。でかい城を必死で造っても他人が便乗しにきたりして、やはり簡単ではない。限られた時間と資源でいかに他人よりも多くの得点を稼ぐかというこういうタイプのゲームは、実はあまり得意ではないが嫌いでもない。考えるのは楽しい。
 しかし、「高さ×面積」というこのルールは単純すぎて、それだけではゲームにならなかったのだと思う。
 なんとなく自作ゲームを作ってみようかなーと考えている今日このごろなのだが、そういうことを考えていると、ゲームをプレイするときの見方が変わってしまう。デザイナーの気持ちというか、思考過程がわかってしまうときがあるのだ。
 ルールが単純すぎると、すぐに煮詰まってしまってゲームにならない。ゲームに多様性を持たせるため、ゲームデザイナーがまず考えることは、イベントカードである。つまりイベントカードの存在は、一つのルールの範囲内でゲームをデザインできなった場合の「逃げ」ともいえる。
 トーレスにもイベントカードが存在する。それも、「斜めに移動できる」とか「2段高いところに移動できる」とか、そんな微妙なカードばかり。
 どこか、無理矢理作ったという感をぬぐえないのである。
 ほとんど使い道のないカードもあれば、恐ろしく強いカードもある。基本的には得点を計算し、次の手を読みながらプレイできるゲームだけに、カードの引きが大きく勝敗を分けてしまう。というより、真剣にプレイしたらほとんどのゲームで、強いカードを引いたプレイヤーが勝ってしまうと思う(ちなみに、もう一つの問題のせいで、手番が最初のプレイヤーが勝つこともまずないと思う)。
 積み重ねられる塔のコマはよくできている。得点計算方法もいい。でも、それなのにイベントカードにたよらなければならなかったとすれば、その前にゲームルールを根本から考えなおしてほしかった。
 けっきょく私の総合評価は「イマイチ」だ。塔を重ねるのは楽しいし、なにしろかけ算ゆえ派手な得点の動きも楽しい。でも、真剣に考えても勝てないゲームは、個人的にあまり好きじゃない。
 しかし、例によって「上級ルール」が用意されており、それを使えばカード運に左右される部分はなくなる。でもまだ問題がある。どう考えても手番が遅い方が有利なのである。
 このゲームの前年、同じ作者コンビが作った『ティカル』では(ゲームシステムも似ているので比べてしまう)、上級になると手番を競りで買うというウルトラCで、見事にこの問題を解決して見せた。しかし二番煎じが嫌だったのか、トーレスでは、上級ルールを使っても欠点が埋まりきらない。むしろ、不利な手番のプレイヤーが運に頼って逆転を狙うことができなくなってしまうので、欠点は広がっていると思う。残念。
 とはいえ、一見の価値は充分にある。立体的に発展していく盤面というアイデアには素晴らしいものがあった。私にとっては、まさに見たこともないゲームだった。そのあたりはさすがクラマーというところ。しかし、リソースの種類を絞りこみ、小さくまとめすぎてゲームが煮詰まってしまうあたりもクラマーらしい。
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