遊星ゲームズ
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ドラゴンランド
 ボードゲーム

2003.11.24 てらしま
ドラゴンランド
Ravwnsburger
Reiner Knizia
3-4人(最適4人)
45分

 真骨頂はルールや設定にはないのだが、まずは紹介から。
 ドラゴンの国が天変地異に見舞われ、危機に瀕している。それでドラゴンの王から依頼を受けた、人間、ドワーフ、魔法使い、エルフたちは、卵を救うために大噴火間近の火山地帯にやってきた。
 というストーリーがついている。なんかいいかげんにファンタジーな、いいかげんな設定だ。このゲームの気軽さにはふさわしい。
 ドラゴンは、巣である山の頂上に宝石をためこんでいる。卵を救い出すついでに宝石を集める火事場泥棒が本当の目的。卵と3色の宝石をどれだけたくさん集めたかを競うのである。
doragonnranndo.jpg
 4つの種族はそれぞれ、3色のコマを1つずつ持っている。コマの色は宝石の色に対応している。緑のコマなら緑の宝石しかとれないわけだ。ゲーム終了時の得点計算では、基本的に宝石か卵1個で1点なのだが、卵と3色の宝石の組み合わせは10点になる。要するに全色均等に集めていかなければまともな得点にはならない。十数個あるドラゴンの巣には卵と宝石の他にイベントタイルが裏向きに置かれていて、それでいろいろいいことが起こる。
 コマの移動をサイコロでやるので、双六(バックギャモンじゃなく、一般的な)みたいなもの。まあ双六よりは全然考える部分が多いが、ゲームの気軽さは変わらない。
 で、ドラゴンの卵を全部救い出したらゲーム終了。簡単なルールだし、獲得した宝石はついたての裏に隠しているので、あまり真剣に考えずにプレイできる。勝利得点を隠すというのは、知らないふりをすることを正当化するための処置なのだ。
 乱数を使う場面が多いのだが、わりとそれより戦略の方が重要だったりして、けっこうきれいにまとまったゲームだと思う。登場するリソースは少なく、自分に与えられた時間をいかに効率よく勝利点に変換していくか、という部分に焦点を絞ったゲームである。
 であるのだが、そんな話はともかく。このゲームの真の主役は別にある。
 それが、その名も『運命の塔』だ。
 ゲームを始める前には、まず厚紙製のこれを組み立てなければならない。名前の通り塔の形をしていて、中には斜めの仕切りがついている。穴の空いた塔の屋上からダイスを投げ入れると、中でガラガラと転がって下から出てくるしくみになっている。
 要するに、ダイスを振るための装置である。
 これが、なんかいいのだ。
 普通にダイスを振ればいいはずなのだ。他のゲームはそうしているんだし、それで特に問題があるわけではない。ゲーム的にはまったく必要のない装置ではないか。それなのに、なぜかこのゲームには『運命の塔』がついてくる。ダイスを振る、ただそれだけの装置が、定価の何割を占めていることだろう。
 まったくの無駄、贅沢品、嗜好品なのだ。しかし人間にはゆとりが必要だというではないか。
 クニツィアのゲームがおもしろいのは、ゲームもよく作りこんであるが、その上にどこか、こういう遊びが入っているところ。例えば、ラーのラー駒や指輪物語のサウロン駒。
 そうしたクニツィアらしさの極めつけはチグリス・ユーフラテスだと思う。得点を秘密にしたいなら、普通ならカードを使う。しかし、そこをあえて木製のチットを使い、隠すためにはついたてを用意した。タイルをランダムで引くためには布の袋を用意した。2つの木製駒を合体させて使うモニュメント駒などは、ただ見ているだけでも楽しい。
 そういうこだわりが、クニツィアのゲームにはある。カードではなく厚紙のタイルを使う。プラスチックや木製のチットが箱の中にザラザラと入っている。よくあるぺらぺらの紙束なんか、絶対に使わない。
 理由はたぶん「その方が楽しいから」だろう。そのため、箱から出して飾っておきたくなるような美しさを持っている。
 箱を開けるときにはいつも、なんとなく気分が踊るものだが、クニツィアのゲームではそれが特に強い。開けてからも「早くプレイしたい」という気持ちがどんどん強まる。
 人間は本能的に、こういう立体物に弱いんだと思う。
 ボードゲームと気どってみたって、要するに遊びである。人生には必ずしも必要のない、もともとが嗜好品なのだ。ならば、そこでけちけちしたってしかたないじゃないか。
 そこで、運命の塔だ。これがあるだけで、なんとなくダイスを落としてみたくなる。それだけでもう、このゲームは成功しているのである。気がつくと、カタンに運命の塔を使っていたりする。
 たばこを吸うのと同じ理由でダイスを振ることができる。運命の塔とはそういう装置なのである。
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