イタリアのいろんな都市に、建物を建てる。と同時に貴族とのコネを作って権力を得ようというゲーム。
……というのは例のよくあるやつなのであまり紹介にならないわけだけど。
だが、シャハトなのだ。
王と枢機卿とか、コロレットとか。この人はちょっとすごいゲームを作る。システムを煮詰めて、余分な要素をすべて排除したデザインをする人だ。こういうデザインのゲームを簡単に分類するのは適切ではない。
手札は3枚。この少なさがシャハト。
手札からカードをプレイして、カードの色の都市の塔にコマを積む。そうすると、都市に1枚置かれている(表向き)カードをもらえる。すぐにカードは補充される。
カードには貴族の顔も描かれている。この貴族の顔を3枚集めると得点になったりもする。
塔は各都市に2本建つ。
塔には複数のプレイヤーのコマが積み重なっていくわけだが、最終的にその塔の所有者となる人は一人。その塔に一番多くコマを積んでいる人のものになるんである。
ちなみに、同点の場合は「より上にコマを積んでいる人」が有利。悪意を感じるルールだ(笑)。
山札が尽きて、すべてのカードを使いきったらゲーム終了。
各塔の得点と、貴族の顔セットの得点を合計する。
ひどくシンプルなルールだ。
それでいて、塔と貴族の顔という二筋の得点経路を用意している。
それを両方ともカードに集約してしまった。けっきょく選択肢は「どのカードをプレイするか」だけ! この人っぽい。
なにしろ、手札はたったの3枚しかない。そして、プレイヤーにできることはカードをプレイすることだけ。
与えられた選択肢は、たったの3択である。しかし、それをどの順序でプレイするかによって、展開はまったく違ってしまう。
少ない選択肢で悩ませるあたりは、王と枢機卿を思わせる。こういうデザインはすなおにすごいと思う。職人の仕事だ。
ただ、若干、スリムにしすぎた感もないではない。
山札のカードは、けっきょくすべて使う。山が尽きたら補充がなくなり、手札がなくなるまで続く。なので、もし他人がとったカードを憶えていれば、終盤は確定完全情報ゲーム(運がなく、隠した情報もないゲーム)になってしまう。
ということは、ゲームの理屈でいって、ほぼ必ず、いわゆるキングメイカーが生まれるということになる。
そしてじっさい、そういう展開も多いように思う。
あと、たぶん1番手不利だよなーとか。
若干、そういう感じも、しないでもないんである。
しかし、これは理屈の上での話。じっさいにはそこまで他人の手札を憶えないだろう。
いちおう手札は非公開なので(憶えていればほぼ全部わかるはずだけど)、運のせいにする余地を残している。
なにしろ選択肢が少ないから、すぐに習得できる。長いゲームでもない。本当に意外と気軽にプレイできるのだけれど、悩むところはしっかりある。
すなおにすごいゲームだ。