未知の病原菌が、世界中に蔓延しようとしているんである。しかも、4種類も同時に。
人類の滅亡を食いとめるため立ち上がった、熱き勇者たち!
というお話。
協力ゲームということで、ゲームの結果は「全員勝利」か「全員敗北」だけ。
こういうゲームではよくある「裏切り」もない。
4種類のウイルスに対するワクチンをすべて完成させたら勝利、そのほかはとにかく敗北だ。「アウトブレイク」が規定回数起きたら敗北だし、山札が尽きても敗北。
ゲームが進行すると、病原菌はだんだん増えていく。まだまだ大丈夫と思っていても、感染はどんどん加速するようにできている。「あっ」と思ったらもうゲームオーバー、という展開になったりする。
この感染の広がりかたが、とてもよくできている。最初は少しずつだけど、ある時点で突然「アウトブレイク!」で一気に拡大する感じがウイルスらしいし、緊迫感の演出がすばらしい。
アウトブレイクは連鎖する。ウイルスがすごい速さで世界中に拡がっていく様は、プレイヤーとしては負けてるんだが、なんとなく快感があったりして。
協力ゲームはいままでにも多くあったけど、このゲームの特徴はこの早さ。運が悪ければ15分ほどで負けて、終わってしまうんである。
山札が尽きても負けだから、ゲームは必ず収束する。終わりが決まっているから、ゲームがだらだらと長引かないし「あの行動がミスだった」など反省点もわかりやすい。
だから「もう一回やろう」ということになりやすい。
こうした早さは近ごろのゲームのトレンドだ。それを、協力ゲームにも適用してみたら、こうなったというところだろうか。
通常のマルチゲームで「1位をとる」ことの価値は、人によって違う。
勝つことより「盛り上がる」ことのほうが大事だと思う人もいるだろうし、「2位でいい」と考える人もいる。
「全員が1位を目指すべきだ!」という人にとって、2位でよしとする発言はいらだたしい。逆に「盛り上がる」ことを目的とする人にとっては、勝ちにいくプレイと喧嘩との区別がつかない。
そのあたりは、ゲームがずっと抱えてきた問題点だ。
しかし協力ゲームでは、勝ち負けの価値がよりはっきりする。プレイヤー同士は必ず味方であり、得点の優劣もつかない。結果は「全員勝利」か「全員敗北」のみなのだ。
協力ゲームでは、間違いなく全員が目的を共有できる。
「盛り上がる」などというあいまいな概念ではなく、明確な「勝利」を共有できる。
ウイルスは強敵だ。プレイヤーはまじめに考えないと、簡単に負けてしまう。全員が間違いなくゲームに参加できるという点で、協力ゲームは優れているのではないか。と感じた。
目的を共有しているから、みんなでああだこうだと議論できる。ちゃんと議論しないと負けるから、みんな真剣になれる。
勝つために議論するという、コミュニケーションツールとしてという意味では、非常によくできているのではないか。
もっとも、協力ゲームに特有の問題はある。
「全員分の行動を一人で考えて命令する人」が、いるかもしれないのである。
しかも、そのほうが有利かもしれない。たいていの場合、頭は少ないほうがいい。
そういう人がいれば勝ちやすくなるだろうが、なにもしなかったプレイヤーはつまらないかもしれない。
みんなが同じレベルならいいが、特にやりこんだ経験者がいる場合、彼が一人で考える展開になってしまうことが多い気がする。パンデミックの敵は、決して甘くない。経験者である彼が手を抜いたら、おそらく負けてしまうのである。
ゲームの構造的に、そうした事態を防ぐことができない。この点は、致命的な欠点になるかもしれない。
ちょうど最近、「ボードゲームはコミュニケーションツールではない」という記事を書いた。パンデミックは、この記事の中に書いた「パーティゲーム」の問題点を、そのまま抱えている気がする。
ゲームルールの中に、プレイヤー同士の相談に関するルールがない。ということはつまり、ゲーム外の人間関係がそのままゲームに持ちこまれてしまう。
ウイルスに勝利したとしても、なにも口を出せず楽しくなかったプレイヤーが、いるかもしれない。ひょっとしたら、ルールすらわかっていないプレイヤーがいてもおかしくない。ただいわれるままに駒を動かしていれば、ゲームを進めることができてしまう。
これはパンデミックに限らず、協力ゲームが構造的に必ず持っている弱点だと思う。
通りすがり -2010/01/16 15:19
記述がないからダメだってどこのクレーマーですか?
誤解を招くような書き方だと思いますよ?
てらしま -2010/01/16 15:59
わたしは協力ゲームも好きです。ダメとはいっていないつもりですし、じゃあなにがいいたいかというと上に書いてあります。
もちろん、意図と違う読み方をされた方が1名いらっしゃったことは憶えておきますし、表現のつたなさへのご指摘と受けとって今後に活かそうと思います。
がとりあえず、ご自身がクレーマーでないことを証明する気がおありなら、もう少し書かれたらいいと思います。できれば「通りすがり」以外のお名前を名乗られると、ここを読んだ方があなたに対して抱く印象も変わるのではないかと。
ボヤッキー -2010/01/18 22:39
多人数で協力あるいは対戦するゲームの場合、大抵どこかで盛り上がる場面が発生します。
しかし、そのピークを過ぎてしまうと、逆にダラダラと消化試合をこなしているような状態に陥る場合が多々あります。
「パンデミック」は常に緊張感を持たせることにより、そういった時間を極力生まないようにしている感じがします。
>「全員分の行動を一人で考えて命令する人」
言い換えるとソロプレイが可能とも受け取れます。(携帯ゲームのコンテンツに最適かも…)
てらしま -2010/01/19 01:32
コメントありがとうございます。
パンデミックはよく調整されているなあと思います。アウトブレイクの危機!がだいたい1度くらいあって、ぎりぎりで勝てるくらいの展開が多いようにできてる。
ムダのないデザインになっているし、ムダな行動はじっさいできません。ゲーム時間も長くないですがそれだけではなく、おっしゃるとおり、ゲーム中ダレるところもないですね。よくできているなあと思います。
言い換えるとソロプレイが可能とも受け取れます。(携帯ゲームのコンテンツに最適かも…)
たしかに、ソロプレイ可能ですよね(笑)
トール -2010/03/15 20:54
昨日プレイしました。
おっしゃる通り、「一人で考えて命令する人」が出る可能性がありますね。
幸い、「十年以上の付き合いがある仲間たち」が「全員初めて」プレイしたので
そういう展開にはなりませんでしたが、そう考えるとあまり親しくない人や
目上の人とはやりにくいゲームなんですかね
ゆーぐ -2010/05/15 20:15
先日はじめてプレイしました。
私は誰とでもよく話す方なので、あまり考えずにどんどん作戦を立てる。
他の人はそれをたたき台にして、より能率的な動きを提案する。
最後に出た案をみんなで吟味して、
私が最終案を出す
という感じでプレイしました。
それなりにうまく機能したんではないかと思います。
N.K. -2010/05/16 20:15
パンデミックは非常にシステマティックで、最適戦略がわかってしまうのが問題かと。そうなると、多人数である意味がほとんどない(最適処理を目指すとソロプレイで複数駒動かしても同じになる)。
やり始めの数回はシステムが理解しきれなくて、みんなでバタバタして楽しめるけど、数回やって何人かシステムを理解すると、協力ゲームとしては微妙になるような気がします。いや、きれいにまとまったゲーム・システムとは思うけど。
ただ、パンデミックはこの手の問題が顕在化しやすいだけで、普通のゲームでも同じような問題は起こりうるのでは。逆方向だけど、人数合わせのために参加させられた人が、適当なプレイしてゲームを壊すとか。
結局、ゲーム論よりプレイヤー論(各プレイヤーのやる気の差とか、初心者育成問題とか)の割合が大きいような気はします。
長文失礼しました。