教会の大きなフレスコ画を修復する話。独特の雰囲気があるゲームだ。
ボードのまん中に、大きな絵がある。はじめは絵の上にタイルが並べられていて見えないんだけど、修復するとタイルがとりのぞかれて絵が見えてくる。
この絵の修復のために、絵の具を集める。絵の具を買うために肖像画を描いて小銭を稼いだり、といったことをやる。
あと、絵の具を混ぜて新しい色を作ったりとか。赤と青を混ぜれば紫ができるんである。
まずは、職人の起床時刻を決める。
職人は、早起きするほど機嫌が悪くなる。あまり機嫌を損ねると、生産性が悪くなってしまう。逆に寝坊を許せば、機嫌がよくなってよく働く。
通常は1日に5アクションの行動をできるのだけど、すごく機嫌のいい職人は6アクションする。機嫌が悪くなると4アクションしかしない。機嫌をとるのも大切だ。
で、そうして宿屋から出てきた職人たちは、まず市場に向かう。
市場には、絵の具が売っている。早起きすればいい絵の具がたくさん買えるかもしれない。寝坊すれば売れ残りしか買えないけれど、タイムセール(?)で安く買える。
絵の具を買ったら、次は教会にいってフレスコ画を修復する。
あと余った時間は、アルバイトをして小銭を稼いだり、絵の具を混ぜたり。職人を劇場につれていって機嫌をとる、なんてこともやれる。
そうしたアクションを、秘密でプロットして決める。ついたての後ろで、アクションボードにコマを置いて、1日(ラウンド)分の行動を決めるんである。
ちなみにこのゲーム、ついたてが2枚配られる。このアクションプロット用のついたてと、資源を隠すためのついたてだ。
こういうムダな豪華さも大事なところで。
新鮮さはそれほどないのだが、テーマがいい。フレスコ画の修復という具体的な目的があるから、すぐにテーマを共有できる。
また、それをゲームにする、料理のしかたもおもしろい。
職人の機嫌とりとか、絵がだんだん完成していく楽しさとか。絵の具を混ぜて色を作るのも楽しい。
これ、リアリティとかそういうのをまるっきり考えてないと思う。絵の具を混ぜたら別の色の絵の具ができるって、じゃあ混ぜてなかったのかって話だし。設定的なつっこみどころはある。
もちろん、ゲームにリアリティは不要なんだけど。ふつうはもう少し、現実に即したシステムを考えるだろう。
でも、これでいい。
このちょっと抜けたばかばかしさが、とてもいい味になっている。
とりあえず全部、テーマに合ってるし。適度にデフォルメされた世界だ。むしろ納得しやすいし理解しやすいというくらいではなかろうか。
まあ変だけど。
じつは、ゲーム終了時にお金が得点になるというルールもあって。そのおかげで、絵なんかそっちのけで寝坊してお金を稼ぐというプレイもできるようになっている。
そういう戦略の幅があったりもして、ゲーム自体は、よく調整された戦略ゲームである。
そこに、さらに「拡張キット」というものが3個ついている。
……えっ?
最初から、拡張が入っているんである。しかも3個も。
いろいろと、頭のおかしいゲームだ(ほめている)。
じつのところ、ゲーム自体はそれほど革新的という感じはしない。テーマのとりかたにうまく成功した、完成度の高いゲームという印象だ。
ふつうなら、数回プレイして「おもしろかった」で終わるかもしれない。いくら出来がよくても、新作ボードゲームの寿命はわりとそんなもの。特に、ゲームをたくさん買う人がいる場合は。
しかしフレスコは、拡張キットが3個ついている。つまり、拡張キットの組み合わせで、少なくとも8回遊べるんじゃないか。
(拡張キットの意図が「上級ルール」なのか「オプションルール」なのかについては、和訳ルールブックからは読みとれなかったのではあるけど)
ゲームバランスはよく調整されている。「バランスが悪い」というのはよくある批判の言葉のひとつだけど、じつは、よく調整されたゲームは似たような展開が多く「飽きやすい」という問題もある。
そういう問題を、デザイナーも感じていたのかどうか。すぐには飽きないように拡張キットをつけた。
考えて作ったんだろうなあと感じる。
変なところはあるんだけど、細かいところまで配慮が行きとどいた好ゲーム。