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プラエトル
 ボードゲーム

2014/06/14 11:12 てらしま
プラエトル
Praetor
2014年
NSKN GAMES/テンデイズゲームズ
Andrei Novac
2-5人
90分

 このゲーム、おもしろいと思うのだ。ここ1年ほど以内にやったゲーマーズゲームの中では一番感触がいいかもしれないくらい。ただちょっと、問題がいろいろあって……。
 まあ、ネットで評判見てる人はわかると思うけど、悪い評判が多いゲームなのだ。じっさいの話、問題点はいくつもあって、ちょっと手放しで褒められる感じではない。
 内容はワーカープレイスメント。ただしワーカーコマの代わりにサイコロを使う。振るわけじゃない。サイコロの目でワーカーのレベルを表す。仕事をすると熟練度が1段階上がって帰ってくる。ワーカーの働き先の効果で、熟練度1につき資源を1個獲得するなんてのがあったりする。2のワーカーは1のワーカーの2倍強い。ただし、6レベルになると引退してしまう。
 ワーカーが引退するというあたりは『村の人生』っぽいか。ワーカープレイスメントってワーカー増やすと強いから、いろんなゲームがいろんな対策を入れてるんだけど。ワーカーに寿命があるというのもその一つだろう。ワーカー数の差で大差がつきにくいように、だと思う。
 じっさい『村の人生』は、よくいえばバランスがとてもいい、悪くいえばなにをやっても変わらず差がつかないというところのあるゲームだった。
 でもプラエトルは違う。場合によっては100点差とかつく。その理由が、このゲームへの好意的でない感想の一因。一言でいえばバランスが悪い。そのあたりは後で書くけど。

 ワーカープレイスメントで資源を獲得して、その資源を使って建物タイルを建てる。建てた建物は自分の前ではなく街に建てる。他のプレイヤーも使えるのだ。自分の建物を使うには使用料がかからないが、他のプレイヤーの建物を使うとそのプレイヤーに使用料を支払わなければならない。
 そのあたりは『ル・アーブル』と同じ。このシステムおもしろいんだけど、欠点は選択肢が多くなりすぎること。ル・アーブルは長時間ゲームなのだけど、そんなに複雑なことをしているわけではない。プレイ時間のほとんどはプレイヤーの長考だ。なにしろ、後半は手番のたびに数十個の選択肢を検索しなければならない。
 プラエトルもそうなりそうなもんだけど、意外とそうでもない。ル・アーブルと違ってプレイヤーの前ではなく中央に並べられてるせいか、効果がシンプルで種類がそれほど多くないせいか。
 このへんは比較的よくできてる。と思う。

 最初に書いたけどこのゲーム、悪いところがいくつかある。はっきりいえば、調整に失敗したゲームだ。そのあたりは書かないわけにいかない。
 まず、強すぎるタイルがある。「強制労働施設」だ。
 このタイル、使うと、引退した労働者を働かせることができる。なにしろ引退した労働者はレベル6だ。とても強い。
 強いからだと思うのだけど、使用料は3コイン。しかしそのコインは銀行ではなく所有者に支払われる。他の建物はたいてい1コインなのに。しかもこの建物、特別ルールで、各プレイヤーがラウンドに1回ずつ使える。ワーカープレイスメントだから、普通の建物は1回しか使えないのだけど、この建物はプレイヤー人数分使われる。単純に建物からの収入を比べると、ふつうの建物の10倍を超える。ちょっとどういうつもりで作られたのか考えたくなる、異常な強さだ。
 そのあたりの、いわゆる「バランスの悪さ」が一つ。
 もう一つはもっとたちが悪い。「収束性の悪さ」だ。収束性については先日も書いたけど。

 具体的には「プルートス神殿」「メルクリウス神殿」の2つのタイル。持っている資源の数に応じ勝利点を得るという効果だ。
 この効果、資源を消費せずに大量の得点を得ることができてしまう上、資源を使わない選好を生んでしまっている。
 ゲームの終了条件はマーケットのタイルが売り切れることで、建物を建てなければゲームが終わらない。建物を建てるには資源を使うわけで、資源を使わないのはまずい。
 建物を建てずに神殿を使い続ける展開が発生する。こうなるとゲームはなかなか終わらず差が開く一方。100点差のゲームは見たことがあるが、まだましな方だろう。構造上、数百点差になってもおかしくない。

 どうしてこうなったと思うけど、まあ一言でいったらテストプレイ不足だろう(なんにでもいえてしまうマジックワードだからあまり使いたくないが)。
 ただ、擁護したい面は大いにあって。
 ゲームを作るとき「バランス」を良くするのは大事なことなのだけど、やりすぎるとよくない。プレイヤーがなにをしても差がつかないのでは、なにをしているのかわからない。ゲームをしているのかどうか定かでないものになってしまう。上に挙げた『村の人生』もそんなところがあるんだけど。
 そうではなく、バランスよりもその行動を選んだ意味を重視する、そういうスタイルのゲームが好きだ。自分はプラエトルが好きなのだけど、それは、バランスが調整されていないからかもしれない。
 なにより、遊んでいて楽しい。

 終わらないというのは、現代のボードゲームシーンでは致命的な欠点だ。修正しないとちょっと遊びようがないというのがじっさいのところ。
 とはいえ、魅力的なゲームなのだ。欠点があるから遊ばないのではもったいないと思う。欠点のない、小さくまとまったゲームばかりになったら、それはひどくつまらないだろうとも思う。
 たいていのゲームには欠点があるけど、それがたまたま「収束性」だったときだけ評価を下げるのではフェアでないという気もしないでもない。
 とりあえず「全員が同意したらいつでもやめる」と宣言してから遊ぶようにしている。


てらしま -2014/08/09 14:56
 やっぱりいろいろ議論があるらしく、BGGで作者が修正版ルールを発表したらしいです。今日もプレイミスさんで和訳されていました。
 記事にも書かれてるけど全部解決するわけじゃないです。でもだいぶ遊びやすくなりそうな気がするので是非採用してみたい。
【翻訳記事】「プラエト ル」のルール改定と選択ルール、および建物の強さとさまざまな戦術について - 今日もプレイミス


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