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ペルガメムノン
 ボードゲーム

2012/01/08 02:52 てらしま
ペルガメムノン
Pergamemnon
2011年
Bernd Eisenstein
Irongames
2~5人
45分
thx to play:game

 いま世界中で数多く登場してるデッキゲーム。ペルガメムノンは、その中でもかなりの異端だ。

 各プレイヤーはデッキを持っていて、そこから手札を引く。このゲームでは、手札は兵士とモンスターだ。手札を使って、場に並んでいるカードを購入する。
 ちなみに、コインではなくて「カリスマ」。より高いカリスマがあれば、より強い兵士やモンスターを従えることができる。
 用語こそ違えど、そのへんはまさに一般的なデッキゲーム。なのだけど。ヘンなのはここからだ。
 手番がきたら、上記の購入かまたは「攻撃」をする。
 これがもう、ふつうに他のプレイヤーを指定して攻撃するという、時代に逆行した攻撃だ。
 両軍は1枚ずつのカードを出して戦う。各カードには、攻撃方法と攻撃力と、各攻撃に対する防御力が書かれている。剣を防ぐには兜、槍を防ぐには胸当て、弓を防ぐには盾という感じになっている。これが全部カードに書いてあるので、カード1枚の情報量はけっこう多い。
 防御に成功したら反撃ということで、今度は防御側がカードを出したりする。
 そんな戦闘の結果、勝ったほうは、負けたほうが戦闘に使ったカードを奪い自分のものとする。
 じつに素直な殴り合い。勝者は得る。敗者は失う。
 人間の本能に即した殴り合いではあるのだけど、でも、近代ボードゲームの多くが否定してきたメカニクスでもある。
 こんなものがデッキゲームで成立するのか。そう思うのは当然だろう。
 しかも。戦闘に勝つと、そのプレイヤーの手番がくる。
 1ラウンド中に同じ相手を2回攻撃することはできないのだけど、それにしても、戦闘に勝ち続けると何度も手番をやれる。ひどい。
 なんでドミニオンが直接攻撃を採用しなかったのかとか、考えたことないのかと。ドミニオンではじまったところのデッキゲームムーブメントの中でも、直接攻撃を採用して成功した例はひとつもないだろう。
 ……といいたいところなのだが、このゲーム。たぶんそのあたりのことをわかった上で作られている。あえて殴り合いのゲームにしたんじゃないかと、少し思わせるところがある。
 戦闘に負けるとカードが奪われるのだけど、そのとき失うのは、戦闘で負けたカードだ。戦闘に負けるのだから弱いカードなんである。
 デッキゲームで、弱いカードをとりのぞく効果(「圧縮」などと呼ばれる)がいかに強いかは、ドミニオンを見てもわかるとおり。
 つまり、負ければたしかにカードを失うのだけど、じつはそれは損失ばかりでもない。
 というようなところで、正当化できそうな感じがするんである。
 じっさいにそうかというと怪しいんだけど……。

 なんといってもテーマがいい。
 このゲーム、初期デッキがプレイヤーによって違う。
 例えば、ハンニバルが率いるカルタゴデッキとか、クセルクセスが率いるペルシャデッキとか。アガメムノンが率いるギリシャデッキには、やたらと攻撃力の高いヘラクレスなんてカードが入っていたりする。
 そしてなぜか、中央のサプライにはモンスターが並ぶ。ミノタウロスとか、メデューサとか、スフィンクスとか。
 いや時代の違う人たちがてきとうに混じってるし、モンスターとか関係ないし。なんともいいかげんだ。でもそこがいい。

 でじっさいのところどうなのかというと、とても怪しい。成立してるのかしてないのか、きわどいところにいるゲームだ。
 デッキゲーにあえて直接攻撃を入れて、しかもそこに特化してみた、意欲的な実験作……と思っている。のだけど、どうなんだろうこれ。
 ダウンタイムは長いし。攻撃を受け続ければ、手番が1度も回ってこないままゲームが終わる場合さえありうるし。かなりめちゃくちゃなバランスとはいえる。
 でもなんか、けっこう嫌いじゃない。
 大きな欠点があるだろうけど、いちおうエクスキューズがあるし、あとそれで埋めきれない部分はテーマでなんとか補っている。って感じなのか。
 この危うさがいい。

 かなりのミュータントだ。デッキゲームムーブメントの中からしか生まれてこなかっただろう、ヘンなゲームのひとつである。
 ただ、いわゆる「ドミニオンクローン」ではない。それだけはたしかだ。
 意欲作というか、気概を感じるというか。こういうの嫌いじゃない。

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ペルガメムノンを