遊星ゲームズ
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倉庫の街
 ボードゲーム

2011/07/06 02:13 てらしま
倉庫の街
Speicherstadt
2010年
Stefan Feld
Eggert spiele
2~5人
60分
thx to play:game
倉庫の街
2011/08/28 18:15 ボードゲーム

 こんなタイトルだけど、倉庫は1個しか登場しない。
 ゲーム開始時にコインを配るのだけど、配ってみたら銀行のコインがほとんど残ってない。えっ足りない? と思いつつはじめてみたら、ぜんぜん足りるし。
 という。
 この人、シュテファン・フェルドのゲームは、わりとそんなところがある気がする。リソースが絞られていたりネガティブなジレンマがあったり、強いインタラクションがあったりして、苦しい。
 近ごろ話題のデザイナーで、近いうちに賞を獲るだろうなどとも囁かれているようなのだけど。なんかこう、この苦しさを喜ぶのはマニアだけなんじゃないかというような感もないではないような。

 soukonomati.jpg
 タイトルのとおり、倉庫が建ち並ぶ港街が舞台だ。船から降ろされる商品を受けとることで得点になったりする。
 やることは、場の建物カードを獲得するという、ほとんどそれだけ。とてもシンプルなゲームだ。
 ただこの獲得方法が、とても独特だ。
 変則オークションのようなことをするのだけど。
 ほしいカードの上に、自分のコマを置いていく。コマは各プレイヤー3個くらい持っている。
 コマを一番最初に置いたプレイヤーが、コインを使ってそのカードを購入できる。
 そして、その値段は「そのコマよりも上にあるコマの数」。
 このルールが最大の特徴だ。
 早く置かないとほしいカードがとれないが、人気のあるカードほど高くなってしまう。
 高くなりすぎて買えなくなったりもする。買えなければ、一つ上にコマを置いたプレイヤーに購入の権利が移る。このとき、カードの値段となる「そのコマよりも上にあるコマの数」はもちろん、1つ減っている。
 人気があれば高くなる。早く買いにいけば確実に買えるけど高い。そうかそれこれだけのルールで表現できてしまうかという、なんともきれいなシステムだ。
 非常に洗練されたシステムだ。こういうのを作るから、話題のデザイナーなのだろう。

 さてしかし、システムとゲームバランスというのは、関連しているようであまりしていない。
 ゲームバランスというか。表現されたゲームというか調整というか。コンピュータゲームの言葉ならレベルデザインということになるのか。
 もちろん調整はシステムに制約を受けるし、システムによって表現しやすいものとそうでないものもあるだろう。しかし、それ以上に、調整にはデザイナーの色が出る。
 システムが決まったとしても、その中でできることには大きな幅があるのだ。その中でデザイナーがいいと思った場所に、ゲームは着地する。
 じつのところ、ゲームシステムよりもいわゆるゲームバランスのほうに、デザイナーの特徴が出やすいと思う。
 なにがいいたいかというと、フェルドはかなりのサディストだよね。
 この人はなにやらすごいゲームシステムを作る。そこは、才能あるデザイナーとかそういうやつだろう。
 そして、そのシステムの中で、プレイヤーに与える資源を絞ったうえジレンマを入れ、苦しいマネジメントを要求する。いわゆるインタラクションも非常に強い。
 プレイヤーを苦しめるゲームバランスだ。
 というような印象がある。

 この倉庫の街が、まさにそれ。
 予想に反して、いわゆる拡大再生産は全然しない。建物カードがたくさんあるから、そのつもりで最初にそれっぽい建物を買っていたら、これがぜんぜん弱いのだ。
 そんなゲームじゃなかった。得点できるときはしないといけない。
 また、上に書いたルールだけではわからないところなのだけど。これじっさいのところは「相手に買わせないためにコマを置く」というゲーム展開になる。買う気なんかなくてもコマを置き、お互い資金が足りないのにさらに妨害しあう泥沼。
 そして、いわゆるインタラクションはとても強い。「お仕事」も「キングメイカー」も簡単に発生する。
 そういうゲームだ。おもしろいかというと、おもしろいけどそれはなんというか、こういうのが好きならかなあ。

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倉庫の街を