遊星ゲームズ
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80日間世界一周
 ボードゲーム

2005.10.18 てらしま
80日間世界一周
Kosmos
M.Rieneck
3-6人(?)
60分

 いわずとしれたヴェルヌの小説が原作のゲーム。汽車と船と気球で世界を一周する。
 カードとダイスを使って、できるだけ少ない日数で出発地のロンドンに戻ってきた人の勝ちである。まずはなんとなく気になってしまうのが、どうしてカードがあるのにダイスも使わなければならないのかというところ。どっちかでいいじゃん。というか、なんとなくゲームデザインとして美しくないなあと思う。
 そのせいか、なんかまとまっていない印象なのだが、ゲーム自体はまあ楽しい。
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 とりあえず数字の書かれた汽車カードや船カードを出すことで、決められた一本道のルートを進む。でこのカード、書かれている数字はかかる日数なのである。つまり、数字が小さいほど強いカードなのだ。
 考えてみると、これはなかなか変なゲームだ。ボード上で先を競っているように見える各プレイヤーのコマだが、実はそうではない。同じマスにいるように見えても、実は時間がずれているのである。すごい速さで進んでいるプレイヤーがいても、たいていそういう人は日数もかかっている。実はその人が一番遅いのだ。
 まあ、あまり状況を想像しようとしてはいけないのだろう。この時間のズレを変換して盤面を再構成することは、すでに人間の能力を超えている。
 実際のところは、(日数という名の)勝利ポイントを消費しながらルートを進んでいる、のである。
 カードは、場に6枚オープンされている中から毎ターン一枚を選んで手に入れることができる。このカード置き場に、なにやらいろいろな効果がある。カードをとると、その場所のアクションも同時におこなうことができる。この効果とカードを見比べていろいろ考えるのが主なゲームの選択ということになるわけだ。
 カード置き場の効果は、気球で旅程を縮めたり探偵を派遣して他のプレイヤーを妨害しする、次のラウンドのスタートプレイヤーになる、イベントカードをもらう、などいろいろだ。
 似ているシステムとしては……エルグランデとかかなあ。カードに書かれている基本的な性能(日数)と特殊効果を見比べて選ぶあたりは、近いといえる。
 なにしろ、カードの数字は少ない方が絶対強い。そうルールで決まっている。つまり数字という明白な性能差があるわけなのだが、特殊効果の方は状況次第でいろいろな使い道があり、価値は変動する。そのあたりをいかに見極めるかというのがとても難しく、考えさせられる。
 のだが、このシステムから想像されるほどガチンコのゲームではないのである。むしろ、サイコロ勝負、運勝負の割合が大きい。
 とりあえず、必死に考えたものが一瞬で無に帰すイベントがある。
 というのは、イベントカードの変なルールである。イベントカードはカード置き場の一つで手に入れることができ、汽車や船カードと一緒に手札に持つことができる。ところが、このイベントカードの中に「災害カード」というカードが2枚含まれている。これがまた、ひっどいのだ。
 災害を引いたら、そのことを全員に公開しなければならない。そしてまず、全員が1日か2日、日数をロスする。
 これはまだいい。ひどいのはこの続きだ。
 次に全員が、自分の手持ちのイベントカードをすべて捨て、イベントカード山にシャッフルする。すべて捨てるんである。全員のイベントカードが、すべてなくなってしまうのである。そんなバカなって感じだ。
 つまり、イベントカードはためこむことができないのだ。だから、イベントカードをおりこんだ計画にはほとんど意味がない。というより、もしも災害が起こったらイベントカードを持っていたプレイヤーは手ひどいダメージを受けてしまう。
「イベントカードを引かない」という戦略をとればいいかといえば、しかしそうもいかない。イベントカードの中には決定的に強いものも多いからだ。
 たとえば「象」である。
 これもイベントカードの中に入っているカードの一つ。原作にもあった気がするが、これはインドで使う。
 インドの砂漠には、鉄道がない。もちろん船は使えない。というわけで歩いて砂漠を渡るわけなのだが、普通に歩いたら12日もの日数がかかってしまう。そこでこの「象」だ。このカードを使うと、12日が[6+D6]日に縮まってしまうのである。
 はっきりいって、強烈に強い。
 このために、インドではみんながイベントカードを引きたがるのだが、もちろんそうすると災害が起こって全員のカードが流されてしまう。災害カードはかなり頻繁に、だいたい(体感では)3枚に一回くらいのペースで出る。
 インドで「象」を「今引いた」で使い、ダイス目もよかったプレイヤーが、たぶん勝つ。あるいは「象」を手に入れることができなかったプレイヤーは大きく後退する。そうなってしまっている。
 あまり考えさせるようなデザインは時流にあわないのだろうか。わざわざ運に頼らざるをえないようにデザインされたとしか思えない。名作『エルグランデ』に似たこのシステムは、非常に戦略的なゲームを実現することも可能なはずなのだが、なぜかそうしなかった。
 しばしばダイスを振らされ(振りなおせるなどの救済処置はあるのだが)、その出目で強烈な差がついてしまう。要所で必要なイベントカードを引けてしまえば大きなアドバンテージをえられる。もちろん、ある程度までは腕でカバーできるだろう。10日以上差がついているなら、それはたぶんうまい人と不慣れな人との差かもしれない。けれど、1位と2位の差が5点以内なら、それはきっとダイス目とカード運の差だ。
 まあおもしろくないとはいわないし、買ってもいいゲームではあるのだが。なにもこんなに運勝負にしなくてもよかったのにと思ってしまう。カードとアクションを選ぶ部分はいいシステムなのに、勝敗を決するのはダイス目、ではなんか納得がいかないような。
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