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マリア様がみてる 特別でないただの一日
 読書

マリア様がみてる 特別でないただの一日
<a href="shohyou2004.html#chaosorerra">マリア様がみてる チャオ ソレッラ!</a> 今野緒雪 集英社 コバルト文庫

2004.10.17 てらしま

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 とうとう学園祭なのである。
 まあこのさい、妹の話が学園祭でやられようがそうでなかろうがどちらでもいいのだが、とりあえず読者はそのつもりで読まざるをえなかったわけで、それを「特別でない」という言葉でかわしてみせる今野緒雪のあまのじゃくなエンターテイナーぶりはやはりえらく、一回一回に感動はしなくとも先が気になるので読ませるという、こうなるとこれは、結果的には、平日昼間にテレビでやっている石鹸会社をスポンサーにしたドロドロドラマと手法としては差がなくなってきており、それはつまりなんだ、書評といっても書くことがなくなってきたのである。
 あ。ネタバレ書いちゃってる? ごめんなさい。このシリーズについてだけは許してください。もう内容に踏みこまなければレビューを書けないのです。
 三角関係があり、主人公がどちらを選ぶのかというところをじりじりと引き延ばす。王道である。このシリーズの場合、あくまで同性同士の友情関係にすぎないわけだが、姉妹(スール)という制度で三角関係を実現している形だ。考えてみれば、今まで三角関係の話がなかったことの方が不思議なくらいなのだ。
 それはそうなのだが、それにそんな荒技が自然に実現できるところがこのシリーズのおもしろいところなのだが、しかしこれはあくまで王道であって、それをやってしまうと作品の特殊性が薄れてしまうという弊害もある。
 わたしがレビューを書けなくなってきたのも、そういうことだろう。同じようなソープオペラを延々とやっていることで有名なのはWWEだが、WWEのストーリーに関して真面目に評を与えてもしかたがないのである。客を飽きさせないためにはなんでもやるということを観客全員が知っており、クソ真面目にキャラクター間の関係やら構造やらを解析したところで、特番の度に覆されることがわかっているからだ。しかしそれをわかっていても、キャラクターの魅力と、なにが起こるかわからないから先が気になるという部分で、観客はWWEを見るのである。
 そういえば、最近読んだ少女マンガ『NANA』(矢沢あい)がまさにそんな感じだった。しかもあのマンガ、ものすごく売れている。あれを名作という人はいないとわたしは思うのだが、でも主人公のバカ女がなにをしでかすかわからないから、気になって読者が離れないのだと思う。連載が終わったらブックオフに大量に流れるタイプのマンガはああいうものだろう。後まで人々の記憶に残るわけではなく、いずれ忘れ去られるだろうが、連載中の評価が高い、そういうタイプの話があるのである。
 むろん、マリみてがそこまでの域に達しているとはいわない。まだ大丈夫だ。この手法を使った上で名作と評価されている作品だっていくつもあるし、そうなる要素はまだ残っていると思う。
 ところで、またネタバレに近いことを書くが。
 登場人物が泣くときというのは、その登場人物の扱いがもうどうしようもなくなってしまったときに、無理矢理決着をつけるときだと思う。
 いくら描写を重ねてもキャラクターが立ってこず、しかし張ってしまった伏線はいつか解決しなければならない。そういう歪みが臨界に達して、ついには、それを解決しなければ本筋が進められなくなってしまう。長いシリーズではそういう瞬間があるのではないかと感じることがある。
 少年マンガならば、そのキャラクターに特攻でもさせて、見せ場を作ってから殺してしまえばいいかもしれない。しかしマリみてのような話ではもちろんそういうわけにはいかない。それで残された最終手段が、泣くことなんじゃないかと思うのだ。
 いや、別に、泣く場面が必ずダメというわけではもちろんない。しかしこの巻の場合のように、読者がぜんぜんついてきていない状況で泣かれるとどうも、そういう勘ぐりをしたくなるわけである。
 まあ、わたし個人の感想ならば、あのキャラクターにはどうしても馴染めなかったわけで、ここで決着がついてしまうのならばむしろ歓迎なのだが。


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