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マリア様がみてる バラエティギフト
 読書

マリア様がみてる バラエティギフト
今野緒雪 集英社コバルト文庫

2004.1.10 てらしま

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既刊の評
マリア様がみてるシリーズ
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 まあ、ほとんど雑誌で読んでたわけだけど。しかたないだろ、買わないと。
 過去のいろいろな時点を舞台にした、番外編短編集。人気が出たせいか最近、雑誌コバルトの方で、しょっちゅう短編が載っていた。それを集めてみたわけである。
 もちろん俺はファンだし、概ねおもしろい。
 この人、デビューはノベル大賞だし、もともと短い方がおもしろかった人のようだ。以前書いていた『夢の宮』シリーズは、正直マリみてほどおもしろくないのだが、その中でいいものを拾うと、やはり短編集のような形式の巻になる。そういえばそういう人だった。
 マリみてにしても、世界観を広げ、シリーズの魅力を形作ってきたのはやはり短編だった。
 このシリーズが成功している要因の一つは、こうした番外編で、あえて主人公以外の脇役を使ってきたところだとも思う。そうすることで、リリアン女学院という舞台自体に読者を引きつけ、舞台の中心にいる主人公たちを別の角度から見ることができる。女子校という異常な世界にどっぷりとつかりながら、ねちねちと心情を掘り下げた重いシリーズになってしまわないのは、常に外側からの視点が補給されているからだ。
 しかも今回は、脇役中の脇役たちの話ばかり。存在だけ確認されていた先生の青春時代とか。初めて登場した誰かのクラスメイト、ならまだいいが、高校を見物にきた中学生の話まである。
 ようするにどーでもいい話なのだが、だからといってこれを切り捨てるのは忍びない。短編の中にも充分おもしろい登場人物がいるのだ。
 むしろ、登場人物を「当たり」と「はずれ」にわけるなら、短編の方が当たりが多い。それ一つで充分おもしろい番外短編の中に、一瞬だけ輝くキャラクターが何人もいて、実は彼女たちがマリみての世界を形成している。
 シリーズのレギュラーの中には、ときどき、違和感のある描写をされてしまう登場人物がいる。「こいつ、こんな奴だっけ?」と思って既巻を読み返すと確かにそんな奴と書いてあるのだが、印象が残っていない。「~が好き」とか、ただ書かれただけで活かされていない設定が、よくある。
 そもそも、どんな奴かわからないまま卒業してしまった(いまだにわからない)旧薔薇さまたちの例もあるし、実は、あまりに立っていないキャラクターが多いのだ。
 立っていない、というより、これは始めから造形に失敗しているんじゃないかと思うこともある。どのキャラクターがとはいわんけど。
 もちろんその一方で、主人公をはじめ成功しているキャラクターはとても成功しているわけだし、これで補って余りあるのではある。
 つまり、けっきょく、長編でたくさんの要素をコントロールし続けるのが好きなタイプじゃないんだろうなと思うのだ。そういう人が、たぶん苦しんで長編を書いてきたから、この独特のおもしろさを獲得できたんじゃないか。そんなことを考えた。ともかくこういう短編集が一番安心できる。


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