おもしろいですよ。
ただ、たとえばジャンルを一言でいいあらわせない。「ワーカープレイスメント」とか「オークション」とか、いろいろ言葉があるじゃん。しかし、アルビオンを表現する言葉は難しい。なんかないのかなあ。
ボードにはイングランドの地図。南からローマ軍が攻めてきた。
そういうお話。プレイヤーたちはローマ軍となって、イングランドに開拓地を作る。
イングランドには、蛮族であるピクト人が住んでいて。ローマの支配に抵抗している。それを制圧しつつ、魚や石の生産地を確保したり、砦を作ったり。
目的は、開拓地を建てることだ。
とりあえず初期状態では、開拓者が1部隊いる。これを動かして、新たな開拓地や生産拠点を作ることができる。
開拓地を増やすと、開拓者が増える。砦を作ると、1ターンに使える移動力が増える。バリケードを作ると、ピクト人に対する戦闘力が上がる。
石切場や金鉱で開拓者を働かせれば、その資源の生産力が上がる。
すごくわかりやすい。ボード上にいろいろな建物を建てるわけだけど、その建てた建物によって、いろんな効果がある。
チットはなにやらたくさん入っているが、臆することはないんである。ルール自体は非常にきれいに整理されている。わかってしまえばぜんぜん簡単だ。
ピクト人コマははじめ、裏向きに置かれている。新しい建物を建てたとき、こいつを表がえす。そこで、戦闘力を比べる。負けていたら、建物が壊される。
開拓者コマの他に、軍隊コマというのもあって、こいつがいると、戦闘力が増えたりもする。また、軍隊はピクト人を脅してとなりに移動させることができる。これを使って、他のプレイヤーの開拓地にピクト人を送りこんだりもできる。
原住民の反乱を制圧しつつ、生産力を確保して開拓地を作る。
表現している内容からすると、すごく重いゲームでもおかしくなかった。しかしそれらを、かなりシンプルに凝縮してしまった。
ゲームの選択肢は要するに、どの建物をどの順序で建てるのか。
軍隊を強化して反乱に負けるリスクを抑えるか。移動力を増やしてより奥地を目指すか。
あるいは、開拓者を増やして人海戦術なのか。それともまずは資源生産力を重視するのか。
ルールはシンプルなのに、いろいろなことが考えられる。
またはトップのプレイヤーを少し妨害してみるのか、他人がまだ到達していない未開の土地を目指してみるのか。そういったインタラクションも、ほどよくある。
ゲームデザインとして、かなり深く考慮されている感じがある。じつはまだ1回しかやっていないのだけど。個人的にはかなり好きだ。
しかしまあ、地味っちゃ地味かも。
このゲームがすごい話題になるとか、そういうことはまずないだろう。また、日本人プレイヤーたちが最重要視する、いわゆる「モリアガル」要素はない。「ワー!」と騒げるものではない。
すごく整理されていてすごいと思うけど、なにか目新しいところがあるかというとそうでもないし。
たとえばサイコロを振る楽しさとか、カードをめくる楽しさとかも、あまりない。強いていえば、ピクト人タイルをめくるときくらいだろうか(これも、ゼロか1かという単純な乱数だ)。
淡々と、粛々とやるゲームだ。しかし、それが楽しい。
なんというか。
よくいう「ゲームバランス」という言葉がなにをさしているのか、考えてみるとよくわからないわけではあるけど、でもこういうゲームをさして「バランスがいい」というのじゃないかという気がする。
たとえば他の傑作ゲームと比べたら、セールスポイントが足りない。やる機会が少ないかもしれない。でも、たとえば欠点を捜せといわれたら挙げられない。そういう完成度のあるゲーム。地味に、しかし高水準のいいゲームだ。
だれかが「もっと評価されるべき」とつぶやく種類のゲームかもしれない。