ちょっとがっかりだ。小道具がいろいろあって楽しそうだったんだけど。
インドかセイロンか中国のマップを、タイルの並べかたで選ぶんだが、まあともかくそのあたりでお茶を買いつけてヨーロッパに売る。テーマ的にはよくある、強かったころのヨーロッパが当時の発展途上国を開発する話。
マップ上を、茶箱を持った買いつけ人コマが歩き回る。そしてお茶箱タイルを手に入れるんだが、これがなぜか、タイルには箱半分しか描かれていない。
タイルには、茶箱を対角線で切った三角が描かれている。2枚並べると、四角になって茶箱が完成するんである。
半分の茶箱が2つ描かれているタイルや、3つ描かれているタイルもある。
船に積んで出荷するときは、タイルを並べて、茶箱を完成させてみせなければならない。並べたとき「蓋が閉じていない」茶箱があってはならない。
買いつけ人を街の近くに移動させると、船への積みこみができる。たくさん積みこむほど得点が高い。
枝葉を除いたコア部分は、とても素直なシステムだ。茶箱タイルの組みあわせを考えるあたりにちょっとパズル的な要素が入っているけど、そこを除けばまあ、テーマから普通に考えた感じのシステムといえるだろう。
しかし、往々にして、そういう無作為なシステムのままではゲームにならない。
たとえば、普通に作ったらだいたいは1番手プレイヤーが有利になる。広い盤面をプレイヤーコマが歩き回るだけではプレイヤー同士が出会わないため、インタラクションが足りない。拡大再生産を組みこめば逆転が難しくなるし、安易にダイスを使えばスゴロクになってしまう。
基本的に、ゲームは直感では作れない。作りこまなければゲームにならないのだ。そのあたりを解決するための、さまざまな工夫をしてきたのがドイツゲームである。
ダイスをどこに使うかとか、手番順を単純な時計回りではなくしたりとか、プレイヤーのひとつの選択に複数の意味をもたせたりとか、とにかくいろんな試行錯誤をしてきた。
その中にはもちろん、それほど効果のなかった試行もあったわけで。
ダージリンはちょっとがっかりだった。その理由は、典型的な「手番順の問題」を解決していないシステムだからだ。
ルールブックを読んだだけで、とりあえず1番手が有利なのは読みとれてしまう。
茶箱を組み合わせなければならないとしたところは、任意のタイミングで出荷できなくすることで手番順の効果を薄めるための工夫だと思われるけど、なにしろそれはみんな同じ。やはり1番手が有利なのだ。
「パズル要素を入れてみる」というのは『フィレンツェの匠』などでも試行されているが、ゲームの上ではあまり効果がなかった要素のひとつだと思う。ゲームを攻略するための手順がひとつ増えるだけで、ゲームそのものに影響するわけではない。
このゲーム、他にもいくつか小道具が用意されている。ひとつひとつはけっこうおもしろくて、その中でも「積み出し口」による物価システムは秀逸だ。
(各商品2個ずつのコマが並んでいて、出荷をするときにその商品のコマを一番上に移動させる。その商品のコマ2つのあいだにはさまれたコマの数が、その商品の価格になる)
しかし、手番順の効果というのはじつは恐ろしく強い。生半可な工夫では、1番手の有利は覆らない。そこに目をあて、得点トラックとは別に手番順トラックを用意してしまったドラゴンイヤーなんてゲームさえある。
このゲームの場合、むしろいろいろな追加システムが1番手の有利を助長している節もある。
過去に多数のゲームが採用しているような「得点の低いプレイヤーから順にプレイ」とか、そんな感じにするだけでもかなり違ったんじゃないかなあと思うのに。