遊星ゲームズ
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ドラゴンの心臓
 ボードゲーム

2010/10/17 16:44 てらしま
ドラゴンの心臓
Drachenherz
2010年
KOSOS
Rüdiger Dorn
2人
30分
thx to play:game
amazon

 2人用ゲームは、ゲームを作ること自体はマルチゲームより簡単だ。マルチゲームに特有のいろいろな問題を考えなくてすむから。2人用ゲームをデザインする方法と、3人以上のゲームをデザインする方法とではまったく違う。
 そのため、ゲームの内容、雰囲気などの面でも違いが出ている。2人専用ゲームと3人用ゲームとでは、趣がだいぶ違うのだ。
 たとえば、戦闘をテーマにしたゲームは2人用のほうが作りやすい。2人用では、相手の損は必ず自分の得だ。だから、攻撃をすればそれはそのまま勝利につながる。マルチゲームでは、第3者プレイヤーがいるからこうはいかない。
 名作『バトルライン』などは、まさに2人用であることに依存した戦闘ゲームといえるだろう。またマジック:ザ・ギャザリングや他のいろいろなトレーディングカードゲームなどは、だいたいのものが戦闘をテーマにしている。
 しかし、マルチゲームでは素直に戦闘をテーマにできない。
 そのため、マルチゲームはいろいろな紆余曲折をたどって試行錯誤を続けてきた。オークション、ワーカープレイスメント、などなどの新システムが生み出されたのもそのためといえる。2人用ゲームだけでいいのなら、そんな努力は必要なかったのだ。
 あと、2人用はアブストラクトが多いという面もある。この理由ははっきりとはわからないが、たぶん、システムとテーマとの兼ね合いのためだろう。
 オークションやワーカープレイスメントや、そういう複雑なシステムを採用したら、それを説明するために世界観が必要になる。だから、マルチゲームではテーマが必要なのだ。
 逆に、はるかにシンプルなシステムで成立してしまう2人用ゲームでは、世界観をつける必要がない。いやむしろ、たぶん、シンプルすぎてテーマになかなか結びつかない。だから、アブストラクトが多くなる。
 戦闘と、アブストラクト。2人用ゲームを、わたしはおおむねそういう風に理解していた。
 しかし最近、2人用ゲームもいろいろやってるんだなということに気づきはじめた。

 2人用でも、マルチゲーム的なプレイ感をとりこもうという流れを、少し感じるのだ。
 たとえばマルチゲームでいういわゆる「ソロプレイ感」を軸とした箱庭ゲームのプレイ感は、2人用には不要のモノだった。また、ワーカープレイスメントのように、直接の殴り合いではない間接的なインタラクションも、2人用には必要ない。
 しかし、そうしたマルチゲームで生まれたデザインは、なにしろおもしろいのだ。だったら2人用ゲームにだって、という、そういう流れがあるんじゃないかと、思うんである。
 具体的には、テーマを大事にすること、インタラクションを直接の攻撃ではなくすこと、というあたりだろうか。

doragonnnosinnzou.jpg ドラゴンの心臓は、とにかくテーマが明解だ。ボード上に勇者がいて、お姫様がいて、ドラゴンがいる。そして、ゲーム内容もまさにボードに描かれているとおり。
 手札から1種類のカードを選び、ボード上の同じ絵が描かれたマスに置く。そうすると、そのカードの能力を発動できる。
「ヒーロー」は、ボード上に置かれている「トロル」か「プリンセス」のカードを獲得する。「プリンセス」は「宝箱」か「石化ドラゴン」を獲得する。
 弓を構えた「ドラゴンハンター」は、空を飛ぶ「ファイアードラゴン」を獲得する。
 そのあたりは、ボードにちゃんと矢印が描かれている。わかりやすい。
 カードをプレイしないことはできないのだけど、たとえば宝箱をプレイしたら次の相手のターンにプリンセスでとられてしまうかもしれない。そういう、なんとなくかけひき的なものもあり。
 しかしなにより思うのは、このゲーム、直接殴りあうゲームではないんである。このテーマなら、素直に作れば、ドラゴン側と勇者側に分かれて殴りあうゲームでもよかったはずなのに。
 それで、さっき書いたようなことを感じたのだ。

 ボード上に配置するカードを通しての、まあ攻撃というイメージではない間接的なインタラクションがゲームを成り立たせている。これは、マルチゲームで発達したデザインに近いように思える。
 2人用らしくシンプルなシステム、だが、ルールが少ないわけではない。アブストラクトゲームよりはだいぶ多い。なにしろ、カードの効果がそれぞれ違うのだ。
 そのために、世界観が必要になっている。これがただのアイコンやカードの色だったらちょっと難しいゲームになっているだろうが、誰でもわかるテーマをあてはめることで、プレイアビリティを確保することに成功している。

 2人用ゲームのそういう流れは、少し前からあったかと思う。というか実のところ、2人用ゲームを積極的に買うほうではないので、もっと前からやっていたのだろうと思うのだけど。
大聖堂の建設』あたりで、ちょっと気になりはじめた。この『ドラゴンの心臓』で、これは本当に無視できないのかもしれないと思いはじめている。

cut4.jpg

はっくる -2010/12/01 14:18
場を介して相手とやり取りをするという意味ではジャイプールに通じるものがあるのでしょうか?
ジャイプールはそこまで複雑なルールではないですけどね^^;


てらしま -2010/12/04 19:29
 そうですねー。もっとゆるい感じかもです。カードの種類も枚数も多いので、けっこう運が強くなってて、わりといい感じに気軽かなと思います。
 ジャイプールもおもしろいですね。


ドラゴンの心臓を