アクションを伏せて出し、いっせいに表を見せる。そしてそのアクションを実行する。他人とバッティングしたり、手番順が大事だったりもする。
と、そういう種類のゲームだ。
アクションに言語依存があるものの、13種類しかないし英語だからなんとかなる。シンプルでわかりやすい中にいろんな要素がつまった、傑作かもしれない。
全員、同じ内容のアクションカードを13枚持つ。この状態でゲーム開始だ。
アクションカードが表すのは、おもに生産のためのアクション。これを、毎ラウンド2個実行できる。
1ラウンド目は、2枚のアクションカードを伏せて出す。これをいっせいに表にし、アクションカードの数値を小さい順に並べる。「8」のアクションと「1」のアクションなら「18」になる。この数字が小さいプレイヤーから順にアクションを実行する。
数字が大きいアクションは効果が強いが、順番がとれない。「シエスタ」というアクションは効果がなにもないが、数字が「0」。
そういう感じで、効果と順番のジレンマに悩みながらアクションを選択する。
ポイントは、実行できるアクションが1個ではなく2個だというところ。
2ラウンド目以降は、前のラウンドに使った2枚のアクションのうち1枚を選んで捨て、新たなアクションを出す。
ここがおもしろい。1枚だけ、交換するんである。
2アクションのうちひとつは、前のラウンドで実行したものと同じになる。お望みなら、ずっと「闇市」のアクションを実行しつづけてもいい。
この、2枚のうち1枚だけど変えるというところがキモだ。それについては後述しよう。
アクションで、いろんなリソースを生産する。「お金」か、5色の「資源」か「労働者コマ」だ。
アクションは伏せて出すので、他人とバッティングすることもある。そうなったら、基本的に順番が早いほうが有利になる。そういう要素もある。
しかし完全に無効になることはそれほどない。アクションによって違うが、バッティングしたら効果が半分になるという感じになっている。
そうして生産した資源は、建物を建設するために使う。
建物カードは場に並んでいる。各建物には、建設に必要な資源と勝利得点が書かれている。
7種類の資源を生産し、建物を建てる。内容はそれだけといっていい。非常にシンプルなのだ。
ゲームとして分析すると、いわゆる拡大再生産をしない。生産力はゲームを通じて拡大しない。これはなんとなく意外だった。
そのため、内容とタイトルから想像できる街系ゲームとは印象が違う。むしろ、もっと小さいカードゲームのプレイ感に近い。
とはいえ、たとえば「ハゲタカのえじき」などのようなバッティング系カードゲームともちがう。
なにがちがうといえば、バッティングしてもいきなり完全に無効にはならないという点だ。そしてなにより、前述のアクションを2枚出す点。
これらの要素が生み出しているものは、計画性である。
バッティング系ゲームの多くは、他人の行動に左右される部分が大きすぎて計画を立てられない。なにしろ「バッティングしたら無効!」のルールでは、本当に計画的に行動するためには相手の思考を完全に読まなければならない。むろん、それは不可能なのである。
気軽なカードゲームではそれでもいいだろう。しかしけっきょく読めないのでは、バッティングは運次第でしかない。ゲーマーズゲームとして、毎ラウンドその場限りの運勝負では少し難しい。
ハバナは、そうした欠点を補うさまざまな工夫が施されている。
次のラウンドのことを考えてアクションを選択する必要があったり。もしバッティングしても動けないわけではないから、修正のための行動を考えられるようになっていたり。というわけだ。
また、2枚のアクションカードのうち1枚は次のラウンドに残るのだから、そこから考えれば他人の選択を読むことができる。
計画的な選択は、ゲーマーズゲームにとって必須要素といっていいだろう。そこを、うまい方法でクリアしている。
このシステムはすばらしい発想だなと思う。
傑作かもしれないと思うのだけれど、難点もある。
上述のリソースのうちのひとつ「建材」は、全部で5種類ある。これに、お金と労働者を加えると7種。これは多すぎると思う。ゲームの長さと手に入れられる数を考えれば、せいぜい4種か5種までだったんじゃないだろうか。
資源が多すぎるため、なかなか思いどおりの資源が手に入らない。場に出ている建物しか建設できないから、不要な資源があるのだ。
ゲームは予想以上に短い。13枚持っているアクションカードを使いきる前に終わってしまうだろう。そのため、資源がうまく手に入ってしまえば、あっという間に勝ち抜けてしまう。バッティングなどのためうまくいかなかったプレイヤーは、必要な資源が手に入らずそのまま脱落してしまいがちになる。という気がする。
加えて、アクションカードの中に「ペソ泥棒」「建材泥棒」というものがある。これがもう、対象プレイヤーも対象の資源も使用者が選んで盗むという強力な攻撃なのだ。
泥棒がいる以上、資源を溜めて一気につかうという作戦はとれない。操り人形の暗殺者や泥棒のように、対象の指定に読みや運が必要、というシステムならまだよかったのだが。
せっかく、計画的な選択を堪能できるはずのシステムなのに。リソースの種類とゲームの長さとのバランスが少し崩れており、活かしきれていない。そういう印象がある。
そういう意味で、すばらしいシステムを考案したが完成型ではないような気がする。だから、いまのところは傑作「かもしれない」だ。
とはいえ、なにしろ13種類のアクションの組みあわせはさまざまな作戦を考えられる。まだ全貌は見えていない。
シンプルでおもしろいから、これから何度も遊ぶ可能性はある。そうしたら、まだ見えていない本当の姿が見えてくるかもしれない。そんな期待もいだいている。