新作じゃないけど。
食糧とか木とか石とかが出てくる、文明発展系のゲーム。こういうのがやたらと好きなタイプのゲーマーというのがいる。わたしがそうだ。
資源を手に入れて建物を造ったり、そこからさらに資源が出てきたりする。建物を増やすと人口も増える。
ただこのゲーム、ひと味違うところがある。
そこが、妙に気に入ったんである。
ゲームは競りが基本。といっても、かなり奇形の競りだ。
場にタイルが並べられ、好きなタイルの上にコインを積むことで入札する。
ただし、タイルには最低落札価格が設定されている。その額以上のコインを置かなければならない。
入札額が上回られたときのルールが独特だ。自分がつけた値段よりも高い額のコインを置かれたら、それまでおいてあったコインをそのまま、他のタイルの上に移動しなければならない。このとき、手元にコインが余っていても追加はできない。もちろん、すでに他のプレイヤーが値をつけているタイルに置くには、それよりも高い額でないと置けない。
つまり、競りといってもつり上げることはできず、最初に決めた額は動かせない。競りっぽくはあるけど、じつはもうほとんど競りじゃないという気もする。
そのあたりはやはり、いまどきのゲームだ。
競りは非常にいいシステムで、導入してしまえばゲームデザイン上のいろいろな問題が解消してしまう。プレイヤー間のインタラクションも、いわゆるゲームバランスも、競りがあればどうにかなる。
しかし欠点は、プレイ時間が長くなること。無邪気に競りを導入しても、いまどきの短気なプレイヤーには受けいれられないだろう。
だから最近は、そのままの「競り」というゲームは見なくなった。
もし競りを使うなら、短時間で終わる工夫が、どうしても必要だ。
そういうわけで、いろいろなゲームでさまざまな工夫がなされている。
最近だと『ホームステッダーズ』の競りが記憶に新しい。といってもあのシステムは『アメン・ラー』からの引用だ。数個の商品を同時に競ることで時間を短縮している。
『アメン・ラー』って、ドイツ年間ゲーム大賞受賞作の中では微妙なゲームだなと思っていたのだけど、こうして考えるとすごいところはある。競りゲームを終わらせた、あるいは、競りの未来のひとつを示した、という面が、あったかもしれない。
余談だった。
このペロポネソスも、同時に複数の賞品を扱う競りだ。そして、アメン・ラーシステムよりもさらに短い。
もはやほとんど競りじゃない。これほどまでの変形が、いまのゲームには必要なんである。
さて、そうして、競りでタイルを獲得する。
タイルは土地と建物の2種類がある。土地は資源を生み出すが勝利点があまりない。建物はいろいろな効果があったり高い勝利点がついていたりする。
そのタイルから毎ラウンド、収入がある。食糧とか木とか石とかが出る。
まあそのへんは一般的なやつだ。
食糧とか木とか石とかが登場すると、それだけでわくわくするのだけど。
資源は、建物を造るときに使う。
あと、ときどき起こる決算時に人口分の食糧が必要だ。人口分だけ食糧を支払い、足りなければそれだけ人口が減る。
問題はその先。
災害というのが5種類ある。これはゲーム中に必ず1回ずつ起こる。あとシステム的に、ゲーム中盤以降に集中して発生するようになっている。
食糧が減るとか、人が減るとか、建物が壊れるとか、いろいろ起こる。
これがけっこう、厳しい。
しかも、いつ起こるかわからない。
そして、このゲーム最大の特徴は、勝利点の計算方法だ。
前述したように建物などに勝利点がついているのだけど、その勝利点がそのままもらえるとは限らない。勝利点の上限は「人口×3点」なのだ。
いくら立派な建物がたくさん建っていても、人口が3なら、勝利点は9点にしかならない。
これ、決して極端な話ではなく。悪いタイミングで災害が起きて食糧が減ったりすると、決算で人口が極端に減ってしまったりする。終わってみたら3人しか残ってないなどということが、本当に起こる。
災害のタイミングは、ある程度読めるとはいえランダム。決算のタイミングもランダム。そこがすごいというか。悪いタイミングが重なると、本当にひどいことになる。
この厳しさがしかし、なんとも、わたしは好きだ。
小さいメーカーならではという感じがある。
いまどき競りゲーム?というところもそうだし、ともすれば「バランス悪い」といわれてしまいそうな厳しさもそう。日本でいえばゲームマーケットの同人フロアにありそうな気がする(あってほしい)ゲームだ。
この Irongames というメーカー、特にそんなところがあって最近気に入っている。『PAX』も『ペルガメムノン』もそんな感じの、自由なデザインが楽しかった。