というわけで読んだ。ゲームデザインの視点から語る、ゲームの本。
読みかえしたいところはけっこうあるけど。
「全員読め」といいたいなどと。こないだ書いたけど。
まあそりゃそうなのです。なにしろこの本、わたしがこのサイトでグダグダいってる内容とだいたい同じ立場だから。わたしがこの本を読んでほしくないなら、このサイトも読んでほしくないということになってしまう。それじゃあなにを書いてるんだかわからない。
立場が同じなので、書いてある内容も理解しやすい。いちいち納得してしまうというわけで、ページ数多いわりにはずいぶん読みやすかった。
ただこれ、逆にいえば、それほど大きな新発見もなかったということになる。それぞれの記事も概説にとどまる感じになっていて、それほど深いところまではいかない。
たぶん、これに書かれた内容というのは、意識的なゲームデザイナーとか、ゲームについていろいろ考えてきた評論家とかならだいたいいきついている範囲の話だと思う。
もちろん、わたしにとっては知らないことはたくさんあったし(なにしろいいかげん知識が足りないので)、読んだことない本もたくさん紹介されていたけど。
でもとても丁寧に説明されていて、わかりやすい。
知っている人はいたかもしれないけど、ちゃんと言葉にすることができていたとは限らない。ここまでちゃんと、いろいろなことをふまえてまとめてくれたというのは、大変価値があることだ。
そういう、よくできた教科書という感じの本だった。
丁寧なだけではなく、とても慎重に書かれているという印象もあった。
これはやっぱり「ゲーム」という言葉があまりにも広すぎるんだろうなと思う。一般的な用法の意味でも、あつかわなければならない内容の面でも。
さまざまな方面からの反論が当然ありえるし、それに対するための防御を施しておかなければならない、のかなあという印象はある。このあたりは、日本もアメリカも同じなんだなあというか。
広く、妥協せずにゲームをとらえようとしている結果だとも思う。ここまで正面から、ちゃんとゲームを解説する本は他に知らない。
もちろん、ゲームにはボードゲームも、RPGも含んでいる。上巻の内容でいえば、ボードゲームの話が一番多いくらいだ。我々にはなじみ深いゲームタイトルがちょろちょろ登場したりもする。
ホイジンガ『ホモ・ルーデンス』が、再三引用されている。この本もとても好きなのだけど。
ホイジンガが語ったのはゲームだけではなく、遊び全般の話だったはずだ。「ゲーム」の本なのだが「遊び」の話がけっこうな割合で入っている。
ゲームデザインからゲームを考えるといっても、そのゲームとはなんなのかと考えると、どうしても遊びに踏み込まざるをえない。ゲームを語るために必要な「遊び」を、再検証しなければならなかったということだろう。
特に、ホイジンガに触発されたという「
そういう外堀の話もあるけど、ゲームを構成せしめる内部の話もある。
この本、下巻までを通して4つのユニットに分けられている。
ユニット1は「核となる概念」。上に書いた魔法円の話や、そもそもこの本が語ろうとするゲームとはなんなのか、この本が語る範囲はどこまでなのかといったことが、注意深く詳細に書かれている。
ここで、ゲームを構成する3つの視点が紹介される。「ルール」「遊び」「文化」だ。
以後のユニットは、この3つを論ずるという構成になっている。
この上巻に入っているのは、このうち「ルール」のユニットだ。ルールの視点から見たゲームを解説する。
ルールはゲームを定義するが、ルールとはなんだろうか。ルールはどのように働きゲームデザインにどう関わるか。
「情報理論」「フィードバックシステム」「ノイマンのゲーム理論」なんて言葉が、矢継ぎ早に出てくる。
たしかにゲームに必要な要素ばかりだ。
とりわけ、ゲームデザインの視点からと思ってみると、デザイナーならどこかで意識しているだろうと思える内容ばかり。
ただし、それぞれの解説は概要にとどまり、くわしくは別の本を読んでねという感じになっている。そのあたりは教科書的というか、今後の研究の土台になればいいのだろう。
「全員読め」といいたい、などと書いたのだけど、じつはそれどうなんだろうとも思いはじめている。
もちろん、できるだけ多くの人に読んでほしい。日本のゲームはアメリカに遅れをとっているなどということを見聞きするけど、その差を埋められるのがこの邦訳かもしれない。そんなことさえ思う。
でも、ゲームデザインの視点から考える本なので、プレイヤーの視点にとっては不要な知識かもしれない。評論には役立つと思うけど(紹介されているいろいろな言葉とか)。ゲームを遊ぶ上では不要という気もする。
また、基本的に教科書なので、内容については全部知ってるよという人がいてもおかしくない。そういう人は、この本の先の議論をすればいいような気もする。
発見する本ではなく、整理する本なのだ。
とはいえ、とてもよくできた教科書です。おすすめ。