非常にいいゲームなんだが……箱に「Ⅲ」と書いてあるのが大変よくない。
別に、なにかの続編でもなんでもない。同名のコンピュータゲームの、ボードゲーム版なのである。Ⅲだけボードゲームになったので、ⅠもⅡもないのである。
もとのコンピュータゲームを知っていれば「あのゲームのボードゲーム版ならやってみたい」と、思うんじゃないか(わたしはⅠしか知らないんだが)。
このゲーム、もともとがマルチプレイヤーズゲームなのである。それも、目的も終了もないMMOなどとは違う。複数のプレイヤーが同じルールで戦い、限られた時間で一人の勝者を決める、本物のゲームだ。
そのボードゲーム化なら、そう間違ったことにならないだろう。そういう信頼感がある。
でも、知らない人にとってはどうだろう。「ああ、ファン用のコレクターズアイテムね」という風に、見えてしまいそうな気がする。
しかも、いきなりⅢだし。わたしも最初は、ⅠとⅡのボード版を捜した。
というわけで、敬遠されてしまうともったいないのだが、非常におもしろいゲームなのです。
新大陸にやってきたヨーロッパの国々の話。探検し、入植者を送り、資源を貿易し、ときには戦争したりもする。
ゲームとしては、最近流行のワーカープレイスメントだ。
ワーカープレイスメント、という言葉は最近聞かれるようになった。少しだけ説明すると。
つまり、プレイヤーに与えられたコマを順番に、アクションに配置していくというシステムだ。
まず「配置フェイズ」がある。ここでプレイヤーは、すべての自分のコマを(順番に一つずつ)盤上のアクションマスに配置する。アクションマスには定員があり、早いもの勝ち。
Age of EmpiresⅢでは、ワーカーの配置先は「イベントボックス」と命名されている。たとえば「入植者ドック」「主要建物」「発見」というようなイベントボックスがある。ここに、順番にワーカーコマを配置していくのである。
次には「解決フェイズ」がある。ここでは、前のフェイズで配置したアクションを解決していく。
プレイヤーに与えられたワーカーコマは、選択できるアクションの数。アクションの選択はそのまま戦略の選択。
定員のあるところに順番に配置するから「どの戦略を優先するか」はプレイヤー次第となる。
また、他プレイヤーとの駆け引きも生まれる。やりたいことがあるなら、他のプレイヤーより先に配置しなければならない。そこに、強いインタラクションがある。
ワーカープレイスメントは、いままさにトレンドのシステムだ。とにかくつぎつぎと傑作が生み出されている。
近ごろ話題になるボードゲームはどれも、驚くほど質が高い。かつてのプエルトリコに匹敵するレベルの傑作ゲームが、ごろごろ出てくるという印象だ。
無視できないゲームが多すぎて、ユーザとしては大変だ。
この一因は、ワーカープレイスメントにある。と思う。
ワーカープレイスメントは傑作生産機だ。適度なインタラクションと戦略の多様性を自動的に実現してしまう、まさに画期的発明なのじゃないかと思う。
たぶん、そろそろ、評価基準を大幅に辛くしなければならない時期がきている。そうしないと、星5つのゲームが多すぎて、どれを選べばいいかわからなくなってしまう。
Age of EmpiresⅢも、ワーカープレイスメントを採用したゲームである。それも、けっこう素直に王道をいっていると思う。
チットの数や種類からの印象よりはずっとわかりやすく、プレイしやすい。これも、ワーカープレイスメントの効用だ。
得点戦略が複数あり、その選択肢ごとに対応するアクションがある。
基本の得点手段は「未発見の土地を探検する」「発見済みの土地に入植者を送る」の2つ。もちろん、それらに対応するアクションがあり、そこにワーカーを配置するわけである。わかりやすい。
また、どこか『プエルトリコ』を思わせる建物が、さまざまな特殊効果を生み出したり、やはり得点になったりする。
「建物」への依存度合いもプエルトリコっぽい。ゲーム内容は違うのだが、建物の特殊効果で生産を拡大し、その選択によって戦略が分岐する感じが、よく似ている。デザイン時に意識したのではないかとも感じる。
じっさい、プエルトリコに近い種類のおもしろさを感じている。これはなんだか久しぶりで、うれしくなったりもする。
加えて、「戦争」もできる。新大陸は次々に開拓されていくので、やがてフロンティアはなくなってしまう。そうなったら次に起こるのは、植民地の覇権を争う戦争なのである。
そうして、時代が進むごとにゲームが移り変わっていくあたりは、ちゃんと歴史ゲームらしい演出として機能している。
History of the Worldとか、昔のゲームでよくあった歴史ゲームを思わせる感覚もちゃんとあり、しかし最新技術であるワーカープレイスメントを使っているから、ずっとプレイしやすい。
いろんな作戦をやりこみたいと思う。
近年量産されている同系列のゲームでは、ストーンエイジ次ぐ出来! とさえ思っていたりする。
しかし。やっぱり2時間かかるゲームだ。今時じゃあ、プレイする機会が少ないかもなあと思う。
スピンオフ作品ということで、敬遠されてしまうかもしれないというのも心配。
箱が大きすぎるとか、ボードが大きすぎてちゃぶ台に乗らないとか、しかも、びっくりするほど大量のチットが入っているせいであまり圧縮できないとか、現実的に問題もある。
しかもいまは、ドミニオンがあるのだ。新しい重量級ゲームに手を出す暇は、あまりない。
でもがんばって持ち歩くつもりだけど。