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キングスバーグ
 ボードゲーム

2009/06/09 01:04 てらしま
キングスバーグ
Kingsburg
2007年
Fantasy Flight Games
Andrea Chiarvesio , Luca Iennaco
2~5人(たぶん3~5人)
120分
thx to play:game
amazon

 ボード上に人の絵がたくさん並んでいる。サイコロを振ってそこに配置し、なにか効果を得る。というあたりは、王への請願を髣髴とさせる。
 春夏秋冬と季節であらわされるフェイズが進んでいくあたりは、ヴァレンシュタインあたりを思い出させる。
 でも考えてみれば、どちらもそれほど似ていないわけだが。

 プレイヤーは、王に国境地方を任された知事。それぞれ別の地方の知事なので、それぞれに領土を持っている。
 毎年冬に、国境の向こうからいろんなものが攻めてくる。いろんなものというのは、ゴブリンとかゾンビとか、ドラゴンとか。
 そんな冬に備えて兵力を蓄えつつ、いろんなものを建てて領土を発展させようという話。
 春夏秋には、生産フェイズがある。そして冬に、戦争フェイズがあるんである。

キングスバーグ

 生産フェイズでは、「王の助言者」という人たちに頼んでなにかを生産する。それが、ボードに描かれている人たち。
 つまり、生産してるんじゃなくて王様からもらってるんだと思う。側近に耳打ちされたから、じゃああの地方に資源を送ろう! という王様なんだと思う。
 王の助言者の人たちは多忙なのか、会えるかどうかはサイコロ次第。
 サイコロは3個振り、助言者のマスに置く。書かれている数字ちょうどの組みあわせで置かなければいけないので、すべて思いどおりというわけにはいかない。
 基本的に自分の領土を発展させる箱庭系のゲームだけど、この助言者への配置にはインタラクションがある。他の人が置いたマスにはもう置けない。
 各々の領土は離れているけど、王のいる都はひとつだし助言者の人もひとりずつしかいないんである。
 そのあたり「インタラクションが強くないけどある」くらいのゲームの舞台設定(いいわけ)としては、けっこう自然かもなあとも思うわけだが。
 助言者の人たちはなにか資源をくれるので、それを使って、特殊効果のある建物を建てたりする。

 で戦争フェイズ。王様は気まぐれで兵士を送ってくる。サイコロ1個分の兵士が、とりあえずくる。
 それに私兵を加えて、ゴブリンだのゾンビだのと戦う。
 サイコロ1個って、1が出るか6が出るかでだいぶ違う。

 ルールはいろいろと多い。でもめんどくさいところはないし、明確でわかりやすいのでプレイしやすい。かなり練られたものじゃないかと感じる。
 システム面以外でも、舞台設定や言葉の選びかたなど、いろいろな面でよくできていると感じた。
 上に書いた舞台設定のこともそうだが。
 フェイズ進行に「春夏秋冬」という言葉を与えたというだけでも、だいぶわかりやすくなっている。ふつうに「3回の生産フェイズのあと戦争フェイズ」などという説明だったら、絶対に「2回だったっけ?」という話が出てくるだろう。
 わざわざ寒い冬に攻めてくる敵というのも、考えてみればよくわからないけど。冬はなんか暗いイメージだし、敵がくるといわれればイメージとして納得できる。
 あと、別にファンタジーである必要はまったくないのだが、「ゴブリン」とか「ゾンビ」とかいわれればどう考えたって敵だ。
 直感的にそういうことが理解できて、かつそのとおりのシステムになっている。
 もちろん、整理されているところはしっかりされている。コアとなるダイス配置部分は特に。けどそれ以外の部分で、無駄がないかといえばあると思う。
 でもそれらが、それほど気にならない。直感から外れず、納得できるからではないかと思うのである。

 ルールをそぎ落として抽象化が進んだゲームは好きだけど。こうして手作業で作りこまれたものもいい。
 プレイヤーには、ロジックから理解する人と雰囲気から入る人がいる。キングスバーグはまず雰囲気から入り、そこから理解しやすい種類のゲームだ。
 近年のゲームの技術力はすごい。少し前のものと比べると、ルールがものすごく洗練されている。でもその中に、いろんなおもしろさが組み込まれている。
 でもそれは、抽象化が進んでいることも意味する。『ケルト』って、どのへんがケルトなんだろう? 
 抽象化すればルールがシンプルになるが、そのぶん雰囲気が失われる危険がある。たとえば、いわゆる「初心者」にとって、どちらが理解しやすいのかというのはわからないんじゃないかと思う。
 30分を超えるゲームを敬遠してしまうということは、もちろんある。わたしもある。でも本当は「時間がかかるから」「ルールが多いから」というのは関係ない。
「ロジック派」と「雰囲気派」とを比べると、雰囲気派のほうが多い。個人的な経験上からいえば。それならむしろ、ほとんどアブストラクトゲームみたいになってるゲームよりも、キングスバーグみたいなもののほうが導入しやすいかもしれないんじゃないか。
 もちろん場合によるけど。

 斬新なところはどこにもないし、ルールがすごく洗練されているということもない。でもおもしろい。傑作なんじゃないか。

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キングスバーグを