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ゴースト・フォー・セール
 ボードゲーム

2010/04/03 12:40
ゴーストフォーセール

 ひとことでいうなら、情報もあつかうオークションゲーム。
 物件もオークションするが情報もオークションする。
 ゲームのデザインとしては、けっこうなチャレンジだと思う。ボードゲームは、リソースを可能な限り切り詰めた、モデル化された世界だ。過去の例を見ても、実体のない「情報」を実体のあるリソースと変換するゲームというのはけっこう難しそうだ。と思う。

 プレイヤーは酔狂な金持ちたち。売り出されている屋敷や城をオークションで買うのが目的。
 でも本当の目的は、建物じゃない。建物に出ると噂されている、幽霊がほしい!
 ……というバカネタなんだが。
 建物には幽霊がいるらしいけど、まだ噂なのでわからない。幽霊がいれば得点が高いが、いなければ意味がない。
 あと、幽霊がいすぎてもいけないらしい。それはちょっと、いくらなんでも危険すぎるんだろう。
 この噂の真偽がポイントだ。
 プレイヤーたちはオークションの前に、噂を流しあう。
「あの屋敷にいったけど幽霊いたよ」
 とか。
「幽霊なんか見なかったなあ」
 とか。
 でもこの噂、本当かどうかわからない。
嘘か本当か ラウンドの最初に「?カード」というものを1枚渡されている。ここには「true」「false」のいずれかが書いてあり、自分しか見ていない。
 trueのプレイヤーが流した噂はすべて本当。falseのプレイヤーが流した噂はすべて嘘。なのである。

 噂というのは、各プレイヤーの色がついたタイル「宣言トークン」を、物件の脇に並べていくことで表現する。
「幽霊がいた」「幽霊じゃなくて絵だった」の2種類の宣言が、各物件に並んでいく。
 物件の得点は、この宣言トークンによって決まる。幽霊が多いほど得点が上がる(多すぎると0点)というわけなのだが。
 嘘つきのプレイヤーの宣言は、すべて逆になるんである。
 オークションがすべて済んでから、正直者か嘘つきかを公開する。そこではじめて、各物件の本当の価値が決まる。
 つまり、まだ価値の決まっていない商品をオークションするゲームということ。

 で。このゲームの最大のポイントであろう点。
 この「嘘か本当か」という「情報」も、買うことができるんである。
 建物のオークションの前に、情報をオークションするフェイズがある。
 他の一人の伏せカードを見る権利と、余った「?カード」を全部見る権利のオークションがある。
 情報を手に入れれば、もちろん有利だろう。しかし、そこにお金を使いすぎては、肝心の建物を買えない。
 じゃあ情報はいくらなのか?
 なかなか難しい問題を提示されている。

 きわどいところにチャレンジしてるゲームと思う。
「情報」を明確にリソースと同格として扱ったゲームは、過去にも多数ある。しかし、すべてが成功だったわけではない。というよりも、じつはけっこう「佳作どまり」が多いという印象がある。
 たいていのゲームでは、伏せられている情報を手に入れれば有利だろう。だから、情報は力になりうる。
 しかしたとえば「あの伏せカードが『○○』という前提で動く」のはいつでも可能だ。そして、そうすることにしてしまえば、情報にリソースを支払う必要はない。その読み(あてずっぽう)が、偶然にでも当たってしまえば、当然そのプレイヤーが勝つ。
 ならば、最終的には、それを狙うことになってしまう。
 これはさまざまなボードゲームで見てきたことで。
「うまくいけば勝つ」選択肢は、強い。
 というより、ボードゲームはマルチプレイヤーズゲーム(3人以上のゲーム)なのだ。誰か一人くらいは運のいいプレイヤーがいるもので、そのプレイヤーに勝つためには、自分がもっと運のいいプレイヤーにならなければならない。
 まあ、この仮説の真偽はともかく。
 プレイヤーがひとたびそう思ってしまえば、情報にリソースを支払う必要は、いっさいなくなってしまう。情報の価値はゼロである。
 そうなってしまえば、もうあとは運勝負になる。
 単純に情報をリソースと変換させる場合、少なくとも「プレイヤーを選ぶ」。悪ければ「意味がない」「運勝負」になる。と思う。
 それを回避するための工夫が必要になる。ということになるだろう。それがなかなか難しい。と思う。
 失敗した例を、けっこう見てきた気がする。

「情報」に特化したゲームなら、傑作もあると思うのだけど。
 それほど多くやっているジャンルではないから、ごく個人的な範囲になるが『スルース』とか『シャーロック・ホームズ 切り裂きジャック事件』とか『ドメモ』あたりが思い浮かぶ。
 問題は「情報」と「実体」という、2種類の選択肢があったとき。この2つの統一理論が難しいのだと思う。

 ゴースト・フォー・セールも、そのあたりの罠に陥り気味という気がする。しかし、チャレンジは買いたい。
 デザイナーにとっての難度(わたしの想像だけど)のわりにはちゃんと楽しめる。ふつうのオークションとは少し違うおもしろさもある。もしかしたら、あと一歩だったのかもしれない。

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ゴースト・フォー・セールを