外国の勘違い漢字ゲームでは、わたしのお気に入りはドラゴンイヤー。というのは関係ない話だが。
日本ブームの影響か、そういうゲームがしばしば出てくる。ゲームの内容はいいのだけど、びっくりするくらい意味不明の漢字が、ただのデザインとして使われていたりする。まあそれはそれで楽しくなるけど。
このサムライ・カードゲームも、わりとそんなところはある(笑)。
けど、なにしろクニツィアだ。このデザイナーの多作っぷりにはもうあきれたくなるけど、それだけたくさん作れるということは、ハズレが少ないということを意味する。
少なくとも信用できる。
そんなクニツィアの近作の中でも、傑作のひとつだ。日本語版も出ている。
テーブルに「村カード」というものが置かれている。村カードには●、▲、■の3種のマークが書かれている。
とりあえず各プレイヤーは「武力カード」を手札から出し、村カードの横に置く。
ちなみに、武力カードの裏にはむやみに漢字で「侍」と描かれていたりする。
武力カードには●▲■と数字が書かれている。となりの、同じ記号が描かれた村に対して、数字分の力を及ぼすことができる。という意味だ。
プレイヤーが武力カードを出した結果、村が囲まれたら、村が占領されたことになる。その村に対してもっとも大きな力を及ぼしているプレイヤーが、村に描かれているマークの得点マーカーを獲得する。
あと、武力カードの中に「侍」というのがある。これは、ようするにすべての村に力を及ぼすことができるオールマイティ。これのつかいかたももちろん重要だ。
得点マーカーは3種類ある。これはクニツィアお得意の手法だ。
チグリス・ユーフラテスをはじめ、個人的に憶えているものだとドラゴンランドとか。
3種類か4種類の得点マーカーで、ゲーム終了時に「持っている中で一番少ないものの数が得点」とか。「基本は1個1点だが全種類のセットだと10点」とか。そういう、単純な数ではない方法で得点になる。得点の計算方法はもちろんゲームによって違うわけだけど。とにかく、得点がひとつではなく、数種類の得点マーカーの組みあわせで決まるんである。
数種類の得点マーカーを集めなければならないようになっている。こうしたしかけを、クニツィアのゲームではしょっちゅう見る。
もちろんクニツィアは、我々には想像もできないほどの職人だ。そのゲームデザインは多様で、これひとつではない。簡単にいいあわらせるものではない部分も大きいだろう。
だが、信じがたいほどの多作を実現するためにはそれなりの、ゲームシステムの共通化、部品化みたいなものがあるはず。そういうライブラリが、デザイナーの頭の中にはあるはずではないだろうか。
などということを、思わないでもない。
この得点計算方法だけでも、じつはゲームになっているんじゃないか。というようなことも、ときどき思う。それほど、この手法は優秀だ。少なくとも、ゲームデザインの難しいところのいくつかを、これが解決しているのだろう。
余談だけど。
日本のボードゲームはまだ、ドイツやアメリカのゲームに追いついていない。現状はけっこう、背中が遠いと思う。ならばまず、こうした手法を真似してとりいれてみたらいいんじゃないかと思う。
もちろん、とりいれるのは手法だけにすべきだ。ゲームを丸ごとコピーとか、充分な考慮なしに乱雑なルールを足しただけとか、そういうのでは経験値にならないだろうと思うけど。
話を戻すと。
サムライ・カードゲームの得点計算方法は、こうだ。
「いずれかの種類の得点マーカーの所有数を支配(単独1位)しなければ、敗北」
「支配に使った以外の得点マーカーが得点となる」
これまたじつにジレンマ。
4人でプレイした場合、なにしろ得点マーカーは3種しかない。多くても3人しか生き残れない。しかし、あまり生き残りに固執すると、肝心の得点が伸びない。
世間には「クニツィアジレンマ」という言葉があるらしいのだけど。
予想以上に抽象的な内容だが、よくツボをおさえた、さすがの好ゲーム。