遊星ゲームズ
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サンマロ
 ボードゲーム

2013/06/25 02:46 てらしま
サンマロ
2012年
alea
Inka & Markus Brand
2~4人
45分

 メビウス便。最近お気に入りのゲームのひとつ。前に『ロール・スルー・ジ・エイジズ』というゲームがあったのだけど、あれにとてもよく似ている。意識して作られたものという気がする。
 あとこれ『村の人生』の作者の人なのね。
 ゲームを買うとき、とりあえず箱の浦は見ると思う。そこで「えっ」と思うだろう。
 ボードの写真があるのだけど。街らしきものが描かれていて、四角のマス目が並んでいる。そこに木駒を置くんだろうと思うのがふつうだが、写真はどうも様子が違う。ボードのマス目には、明らかに手書きと思しい、妙にゆがんだ図形が描かれている。
 このゲーム、駒を一切使わない。獲得した資源も、建てた建造物も、すべて水性サインペンでボードに書く。
 ボードの表面がそういう風に加工されていて、ちゃんと消せる。
 サインペン1本あればいいんだし、コマが不要だから、かなりのコスト削減になっているはず。それなりに複雑なリソース管理もあるゲームなのだけど、この要素数のゲームとしてはだいぶ安い。
 サインペン方式の理由はそれだけではない。さっき『ロール・スルー・ジ・エイジズ』の名を挙げたけど、このゲームもあれと同じように、サイコロを振る。サインペン方式なら、サイコロが駒に当たって動いてしまうという事故を防ぐことができるのだ。じっさいちゃんと合理的な理由だと思う。
 ただ斬新なコンポーネントで人目を引くだけでなく、まあいちおう合理的な理由があるあたりは感心する。
 すごい斬新な発明!っていう感じではないけど。コマとサイコロを併用するゲームだってたくさんあるんだし、それで大きな問題なのかといったらそうでもなくて。これじゃなければ実現できないゲーム性ってのも特になくて、絶対必要というわけでもない。でも物珍しいし、そこに合理性があるとうれしい。

 あと、同人ゲームで使ってみたくなる(笑)。コスト削減できるの魅力。
 そんなところもあるので、少し考えてみたい。この方式の利点と欠点と、どういうゲームに向いているのかについて。
 まず利点はさっき書いた。コストを削減できることと、サイコロの邪魔にならないこと。
 もうひとつ挙げるなら、書く操作の楽しさというのもある。コマを置くのとは少し違う、独特の楽しさがある。
 もちろん、木でできたいろいろなかたちのコマを置くのは楽しい。だが、やはりリッチなコマは高い。多くのゲームでは単に立方体のコマを使っていたり、紙製のチットだったりする。やっぱり製造コストの制約っていうのはあるんだと、思ってしまうゲームはけっこう多くて。一定ラインを超えてケチなコンポーネントだと、ゲームそのものの楽しさが損なわれてしまうことにもなる。
 このあたりの話ってよく語られるしそのとおりではあるんだけど、その語られている言葉以上に深いところで重要だという感じを持っている。例えば「見た目がいい」がゲーム性への評価と連続していることがある。あるいは逆に「見た目よりシステム」という言葉の裏に、見た目からくる楽しさへの評価が隠れていることがある。
 で、サインペン方式だ。リッチなコマを使うほどの楽しさは提供できないかもしれないが、これはこれで独自の楽しさを保証できる。という気がする。とりあえず、コマのチープさで評価を下げることはない。
 コマやチットを置くのとは少し違う楽しさがある。几帳面にマークを書く人もいれば、独創的な簡略化を発明する人もいる。そういう、ゲームとは直接関係ないかもしれないが操作自体の楽しさを持っている。
 もっとも、サインペン方式自体が「しょぼい」といわれてしまったらどうしようもないし、そういわれることもあると思うのだが。

 欠点のほうはというと、なによりも手が汚れることだ。
 いや、手だけならいい。たとえばこの方式にカードを併用したら、カードも汚れることになる。カードの裏面にインクがついてしまったら、そのカードはもう使えなくなってしまう。
 コマならまだいいが、やはり汚れるのはいやだろう。そういう意味では、他に一切のコンポーネントがないゲームが理想ということになる。
 サンマロの場合は、サイコロがある。理想的にいえば、サイコロだって使いたくない。とはいえサイコロの汚れはそんなに大きな問題にならないから、許容できるといったところだろう。それに、さすがにサインペンとボードだけでは味気ない気もする。
 そういう風に考えていくと、サンマロはサインペンゲームとして理想的に近い。理にかなっていると思うのだ。

 コンポーネントの話ばかりでゲームのことを書いていなかった。
 サイコロを振る、と書いた。その振り方も、だいたいロール・スルー・ジ・エイジズと同じ。
 この方式、思い出すのはGREED!だが、他にも非常にたくさん採用されている。ゾンビダイス、海賊ダイス、ドラゴンダイス、……。とにかくすごくてきとうに乱造されている。それだけ完成されており、おもしろいシステムなのだ。
 いくつかのサイコロを振り、そのうちいくつかをキープして、3回まで振りなおせる。このシステムにより、運に適度にプレイングを混ぜることができる。プレイングで少し操作できる乱数、というのは、ゲーム装置の理想形のひとつといっていい。
 こうしたゲームは、どちらかというとパーティゲーム、ファミリーゲームに多い。でもこれよくできてるし、ゲーマーズゲームにも使えるのではないか? という試みが、いくつか生まれている。『ロール・スルー・ジ・エイジズ』もそうだし、このサンマロもそう。『王への請願』なども入れていいだろうか。
 そういう奴だ。
 そんな感じでサイコロを振ったら、目を1種類選ぶ。1種類しか使えない。
「商品」の目を選んだら、出ている商品の目の数だけ、街に商品を描く。「木材」の目を選んだら、コインを2個消費して、出た木材の目の数だけ木材を獲得する(材木置き場に木材を描く)。
 そんな風に、目によってルールが決まっている。
 おもしろいのは、資源が利益を生むまでに何回かの変換が必要なところ。たとえばコインを手に入れるためには、まず商品を手に入れ、次に商人を手に入れなければならない。建物を建てるためには、まず木材を手に入れ(そのためにはコインがいる)、次に建築家を手に入れなければならない。そんな風に、リソースを変換するルートがある。ゲーマーズゲームっぽい、リソースマネジメント的な要素だ。

 他には、海賊が攻めてくるという要素がある。サイコロの目の中に海賊があって、それが出ると、海賊トラックに1個チェックをつける。これが一定の数溜まると、海賊が攻めてくる。
 海賊の強さは決まっていて、だんだん強くなる。プレイヤーは、城壁を作ったり戦士を雇ったりしてそれに備えなければならない。防御に失敗したら減点だ。
 この海賊はアグリコラでいえば食料に該当する。小目標だ。
 ゲームの大きな目標はもちろん勝利点を稼ぎ勝利することなのだけど、それだけでは単調になるということで、特に長めのゲーマーズゲームでよく採用される手法だ。これによりゲームにメリハリが出て、飽きない。

 リソースマネジメントに小目標。ゲーマーズゲーム的な要素がしっかり盛り込まれている。でもなにしろすべてがサイコロだから、なかなか思いどおりにはいかない、パーティゲーム的な楽しさもある。
 ゲーム面でも理にかなった作りだと思う。
 すべてがかみ合ってる感じがする。クレバーな作りだ。傑作なんじゃないか。


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