遊星ゲームズ
FrontPage | RSS


ネイションズ
 ボードゲーム

2014/01/28 02:52 てらしま
ネイションズ
Nations
2013年
アスモデ出版
Rustan Håkansson / Nina Håkansson / Einar Rosén / Robert Rosén
1-5人
人数×40分
amazon
amazon

 いわゆるドイツ流ボードゲームを形成しているものの一部は、ゲームは無駄を省いたシンプルなものでなければならないという一種の美意識だろう。良し悪しはともかくじっさいの話として、この美学がボードゲーム文化の一部を形成しているわけで、なくてはならないものだ。
 しかし、世界にはそうじゃないゲームだってたくさんあった。もっと冗長で、そのぶんフレーバーの表現に長けた、ルールが多くカードやテキストがたくさん登場するようなゲーム、ドイツ的に対し「アメリカ的」と表現されてきたようなゲームだ(この言葉は完璧に適切とはいえないのだけど)。
 特に最近。ドイツ流の流れからも複雑なゲームが増え、いろいろ混じってよくわからなくなっている。ドイツゲームの流れから現れたのは確かなんだけど各国の文化をとりいれた、純粋なドイツゲームではないボードゲームが増えている。
 いわゆるアメリカ的ともまた違う。ヨーロッパの他の国だったりするし。むしろドイツゲームっぽいシンプルさを元にしているんだけど、そこにごちゃごちゃといろんなものがくっついた、美しいとはちょっといえないかもしれないキメラゲームだ。
 例えば、テラミスティカもそうかもしれない。ドミニオンからつづくTCG逆輸入の流れもそうだろう。
 もはやシンプルさは至上ではない。というより、シンプルでいいものも当然あるのだけど、特に重めのゲームを好む連中にとってはそれでは物足りない。
 こうなると美学もぶれてきて。なにがいいのかよくわからなくなってくる。でもおもしろいならしかたないわけで。
 なにがいいたいかというと、ネイションズの話だ。

 文明を選び、プレイヤーボードを受け取る。そこに建物を建てたり人物(アドバイザー)が登場したりする。時代が流れていき、それにともない建物も人物も移り変わる。
 建物などはすべてカードで表現される。場に置かれたカードを買い、プレイヤーボードに置く。プレイヤーボードに置ける枚数は決まっているし、時代が進むにつれ登場するカードが強くなるから、自然と移り変わっていくことになる。
 このへんの時代が移り変わる感じは、スモールワールド(ヒストリーオブザワールド)みたいな感じ。マップはないけど。
 人数×40分というわけで、この表記はテラミスティカより長い。まあそんなに複雑なことをやっているわけでもないんだけど、選択肢が多くて悩む。プレイ時間の長さはほとんどが長考によるもの。そういうゲームだ。

 やることはだいたい2つ(他にもあるけど)。

  • 場からカードを買う
  • カードにワーカーを置く

 カードを買うにはコインが必要。ワーカーを配置したり移動したりするには鉄が必要だ。カードを買うだけでは効果がなく、そこにワーカーを配置しなければならない。
 また、各ラウンドの終了時に、ワーカーの人数に応じて食料を支払う必要がある。
 というわけで、コイン、鉄、食料の3つの資源のやりくりが、まずすべきことになる。
 これ大事なことなのでもう一度書くけど、この3つの資源のやりくりが必要だ。おおむね3つ全部が必要。なので、序盤にまずこの資源の確保を考えて動かないと簡単に詰む。
 で、これとは別に「文化」というものがある。これが主な勝利点源だ。
 さらに、安定度と兵力というのもある。
 安定度が高いと、各ラウンド終了時に起こるイベントでなにかいいことが起きる。低いと悪いことが起きる。
 兵力は「戦争」カードで他のプレイヤーに被害を与えることができるのと、「紛争」で資源がもらえたりする。あと植民地を征服するのにも使う。
 他にも、ワンダーの建設というのもある。

 3つのリソースをマネジメントしながら、生産が安定してきたらワーカーを増やし拡大再生産、というような流れになる。
 いろいろな種類のカードが登場するわけなのだけど。ひととおり紹介すると。

  • 建物
     ワーカーを置いて生産する。また、安定度が上がったり下がったり、文化が増えたりもする。
  • 軍隊
     ワーカーを置くと軍事力が増える。代わりに安定度が下がったり資源を喰ったりする。
  • アドバイザー
     歴史上のいろんな偉人。なにか能力がある。ワーカーが必要ないので強い。
  • 植民地
     必要な兵力がないと買えない。持っていると資源が出てきたりする。ワーカーが必要ないので強い。
  • ワンダー
     有名な遺跡。ピラミッドとか空中庭園とかある。
     買うとまず「建設中」状態になる。その後手番と石を使って建設していく。完成するとなにか能力と勝利点になる。完成してしまえばワーカーが必要ないので強い。

 ここまでが、プレイヤーボードに置くカード。あとは、買ったらすぐに効果が出る使い捨てのカード。

  • 紛争
     買うには軍隊が必要。持っている中で一番強い軍隊の能力に応じ、好きな資源を何個かもらえる。
  • 戦争
     紛争は内戦のようなもので他のプレイヤーが関係ないのだけど、こっちは他人を攻撃する。戦争を起こした時点の兵力を記録しておき、ラウンド終了時にそれより兵力が小さいプレイヤーは被害を受ける。
  • 黄金時代
     書いてある資源をもらえる。

 だいたいありそうなものが全部ある感じ。
 こんな大量のカードが、場にどばっと並べられている。種類別に分かれているということもなく、全部混ざっている。3列に並べられていて、下段のカードは1コイン、中段は2コイン、上段は3コインで買えると。
 手番がきたら、前述したとおり、コインを使ってこのカードを買うか、鉄を支払ってワーカーを建物に配置するかをやる。あとワンダーの建設のために建材を買うというアクションもある。
 全員がパスをしたらラウンド終了。
 ラウンド終了時に、誰かが戦争を起こしていたら戦争の処理をする。
 その後、ラウンド開始時に公開されていたイベントが起こる。イベントはだいたい、安定度が高い人が得をするか、低い人が損をする。
 ワーカーを増やしていたらそれに応じて食料を支払う。
 2ラウンドに1度、時代が変わる。時代の変わり目には文化レベルで勝利点が入る。自分より後ろのプレイヤーの人数だけ得点。

 で次のラウンド。
 ラウンド開始時には、ワーカーを増やしたければ増やしていい。増やさない場合は、好きな資源を何個かもらえる。

 4時代8ラウンドが過ぎたら、ゲーム終了だ。プレイヤーボードに置かれたカードの得点(建物はワーカーが置かれていれば得点)を足して、最終的な得点が一番高いプレイヤーの勝利。

 とにかく大事なのは、序盤に間違えないことだ。必要なのは、コイン、鉄、食料の資源生産であって、文化ではない。
 これけっこう罠で。生産力の確保に失敗すると、戦争でさらに資源を減らされたりそのせいでワーカーを養えなかったりと悪循環に陥り、簡単に勝利争いから脱落する。まあ拡大再生産ゲームによくある罠なのだけど、このゲームの場合は特にハマりやすそうな気がする。
 あとワーカーを増やすリスクがけっこう大きい。単純に増やせばいいわけでもない。この種のゲームではわりと、ワーカー増加が単純に正義ということも多いのだけど、これはそうでもない。そのへんはいいところでもあるが、ハマりやすい要因にもなっているかもしれない。
 そういう罠がいくつかあって、初回プレイの人たちで卓を囲むと大差がつくと思う。

 でもそのあたりがわかっていれば、今度はそれほど差がつかないようになっている。要素が多いわりに、得点手段がとても少ない。だいたい、文化レベルによる得点しかない。
 ゲーム終了時に持っているカードが得点になるけど、これはけっきょく大きな差にはならない。それ以外は主に、各時代の終わりの文化レベル順位による得点だけ。他にもあるのだけど、それは戦争で資源を失いすぎて資源を支払えずに減点とか、イベントカードで条件を満たしたら1点とか、そういう一時的なものばかりだ。
 これだけ大量のカードがあるのだから、コンボとかあるのかと思うけど。そういうゲームではない。
 兵力を上げても安定度を上げても、けっきょくは文化レベルが上がったり下がったりする。いろいろあるけど最終的な出力先はだいたい文化レベルだったりする。
 文化レベル順位での得点は、4人プレイなら最大で3点しか入らない。いくら生産力に差があっても、それしか差が開かない。それに、4回しかない。
 そういえば、テラミスティカも似たような構成だった。いろいろと難しい手順を踏むのだけど、最終的な得点は支配地域の広さの順位と教団トラックの順位。多くの要素を経て最終的になにかの順位に帰着させる、この手法はひとつの方程式なのかもしれない。
 ていうか別に新しい話でもなく、エルグランデなどのエリアマジョリティがまさにそれだ。ドイツゲームの伝統的な手法のアレンジともいえる。

 こうなると。けっきょく文化レベルを比べるだけなのに、こんなにいろいろなルールが必要なのか? という疑問が、ふつふつと湧いてきたりはする。汚いゲームだなと思ったのだけど、これはそのあたり。
「汚い」ところは他にもいろいろあって。例えば兵力。
 このゲーム、兵力の用途がとても広い。紛争カードを使えば資源になるし、戦争で得点(他プレイヤーの減点)にもなる。植民地という便利な生産カードを手に入れることもできる。イベントカードの中には兵力を比べるものもあり、そこでも有利だ。つまりほぼすべてに効く。
 こういうの、たぶん調整の結果そうなったのかなあと思うのだけど。けっきょく兵力ってなんなんだ? という意味では、意味のぼやけた万能のパラメータになっている。調整をしすぎたゲームがよくそうなる。
 あとイベントカード。イベントカードはゲームに変化をもたらすために常に有効だけど、黒魔術なわけで。
 とにかくそんな感じで、整理する気はないだろう。システム的なよさとかではない、じつは雑多でてきとうなゲームだ。
 たとえばニュークリアウォーとか、ダイナマイトナースとか、あのあたりの、昔のカード次第のバカパーティゲームとなにか違うのか? といわれたら、じつは大差ないような……気もしてくる。

 いろいろ書いてるけど。けっきょくのところ、なぜ汚いと思うのか。ドイツボードゲーム的美意識と食い違うのだ。ある種のシンプルさを土台にしてはいるのだが、それを台無しにするレベルでごちゃごちゃと付け足されている。そぎ落とすという思想はたぶんない。
 で、じゃあおもしろくないの? という話だ。
 いやおもしろいですよ(怒)。
 完璧とはいわないけど。歴史テーマも、拡大再生産も、リソースマネジメントも、もちろん嫌いじゃないし。
 これ、最近特に思うのだけど。テラミスティカにしろネイションズにしろなんにしろ、最近ゲーマーズゲームと呼ばれるような長時間ゲームって、これまでの美学では計れないものになりつつあるんだと思う。
 要素が多いからツッコミどころを捜せばいくらでも見つかるんだけど、整理してみたら大したことじゃなかったりするんだけど、でも総体として遊んだらおもしろいじゃんと。
 昔のアメリカ重ゲーだってそうだったといえばそのとおり。ただ、いまのゲーマーズゲームはドイツゲームの美学が浸透した後に生まれてきたのだ。収束性とかインタラクションとか、インタフェース部分の作りとか、いろいろなものがドイツゲームの歴史を引き継いでいる。そうするとやはりまとまりが違う。少し前の重ゲーよりも、格段に遊びやすくなっている。これはこれで、いまこの時代でしか作れないゲームなのだ。
 それをどう受け取ったらいいのか、わからなくなってきたところがあると思う。というか自分にはちょっとある。

ネイションズを