ビンチというゲームのリメイク。
ビンチは好きなゲームなんだけど、いまどきの基準からすると長すぎる、という重大な欠点があって。メンバーにもよるが、大人数でやると、ふつうに5時間とかかかる。そのため、もはやほとんどプレイできないゲームになっていた。
実際問題としてだ。新しい軽いゲームを5個やって、その中のひとつがアタリならいいというやりかたと、5時間かかる既知の傑作ゲームをやるというやりかた、どちらがいいというということはないのだが、前者のほうになりやすいのはまあ、しかたのないことだ。新しい話題を得られるわけだし。
コミュニケーションの手段としてゲームをするなら(これに異論のある人はまずいない)、新作の、かつ短時間ゲームを遊ぶほうが、話題を増やす効率がいい。
というような世間の流れがあるなか、ビンチがリメイクされたわけだから。まずはプレイ時間短縮のための改良がなされているだろうことは想像がつくし、じっさいそうなっている。
ゲームシステムのほうは、ビンチとほとんど変わらない。ビンチのレビューは過去に書いているので、そちらを読んでいただければいいかと思いますが。
なので、変わったところを書くと。
まずは、一番大きいのは世界設定の変更。前回の世界設定は、有史以前のヨーロッパだった。
ヨーロッパにあちこちから蛮族が侵入してきて、そいつらが好き勝手に国を作り、ひとときの栄華を築くもののすぐに衰退する。そうして力を失った王国は、また新たにやってきた蛮族に蹂躙される。それをひたすらくりかえす。というゲームだった。
蛮族は毎回違う能力を持っていて。それは、袋から引かれる2枚のタイルの組み合わせで表現されていた。タイル一枚一枚には、その種族が持つ特殊能力がアイコンで示されていて。各種族はタイル2枚分の能力を持っていて、タイルの組み合わせはたくさんあるから、いろいろな種族がやってくる。そのへんがおもしろいところだったわけだが。
今回のテーマは、ファンタジー。前回はただのアイコンの組み合わせだったものが、今回は「トロル」とか「エルフ」とか、ちゃんと名前がついている。
これは非常にいい改良だと思う。名前があるというのは重要なことだ。
タイルを2枚組み合わせるというところも、前作からひきついでいる。2枚のタイルをつなげると、種族の名前ができあがるんである。
たとえば「空飛ぶ」「ジャイアント」とか。「ドラゴン使いの」「エルフ」とか。おもしろい。
ただこれ、日本語版については、ホビージャパンのやっつけ仕事っぷりはいつもどおりで。
「要塞を設ける」とか「富裕な」とかにはさすがにあきれた。「設ける」? こういう翻訳をした人は、いまごろ恥ずかしくなってるだろうと思うのだけど。でも残念。もう世に出てしまっている。
もう一回いってやろうか。「要塞を設ける」だ。種族名を作ってみるなら「要塞を設ける オーク」だ。
せっかく雰囲気を大事にしてリメイクされたゲームなのに、これではだいなしなんである。
翻訳だけではない。箱に、できあいの明朝体で下品に上書きされた「日本語版」の文字といい(明朝体を横書きで使ってるだけでも許せない)。けっこう、いろいろとよくないところがある。
英語版買いなおそうかと、いま本気で考えているところだ。
とはいえ、それでも日本語版には価値がある。やっぱり、日本語版のほうがプレイされる機会が多いんである。これはどうしようもなくそうだ。最近のホビージャパンの翻訳ラッシュは、あれでちゃんとありがたい話なんである。
もう少しだけ品質にこだわってくれれば、いうことないんだけど。
余談はやめて話を戻すと。
変更点は世界観だけじゃない。ゲームを短くする工夫として、ゲーム終了条件が変えられている。
ビンチの終了条件は「誰かが100点を獲得したら終了」。だけどじつは、あれは長すぎた。種族は登場すると1~2ターンでワーっと広がり、勝利得点も稼ぐ。だけどこのゲーム、その先はもう衰退しかない。衰退したら、前の種族からはなにもひきつがずに次の種族が現れるというわけで、けっきょく、生産が拡大しない。
終了条件は50点でも100点でも変わらないんである。だからだいたい、ゲームが長くなりすぎてだれるから、「50点で終わりということにしよう」みたいな話になりがちだった。ようするに、終了条件が適切でなかった。
今回の終了条件は「8ラウンド終了時点」。そう、それでいいんだと思う。
もっとも、それでも60分以内には収まらなかったけど。
他にも、ビンチにはあった細かいルールが省かれるなど、ルールの整理がおこなわれている。
完成度はだいぶ増している。ビンチはもともと好きなゲームだったけど、スモールワールドのほうがいい。
ビンチがメジャーバージョンアップを果たしたのだ。旧バージョンはもう必要なくなるかなと思う。
白熊 -2009/08/31 22:58
面白そうですねースモールワールド!
うちのメンツはMtGが主体なんで、ファンタジーモチーフだとウケも良さそうだし。
でも2ちゃんのスレでも話題になってましたけど、エラッタはどの程度のものなんですか?
プレイに大幅に差し支えるほどアレならちょっと…と思ってます。
てらしま -2009/09/01 08:34
今回は、エラッタについては、プレイにほとんど支障ないと思いますよ。
あとは、上にも書いてるおもしろい翻訳をどこまで許せるかですが。
うちのメンツはMtGが主体なんで、ファンタジーモチーフだとウケも良さそうだし。
そうなんですよねー。軽いゲームではないですが、そういう意味で使いやすいゲームかもしれないという気がしてます。
白熊 -2009/09/02 21:53
レスさんくすです。購入を検討してみます!
おもしろ翻訳はもう、長年HJ訳のMtGプレイしてますんで耐性がっww
そういえば2,3年前にMtGの日本代理店がHJからタカラトミーに移ったんですが
それ以降はおもしろ訳の話は聞いてないっすね~
やっぱ元凶はHJだったんですかねぇ…。
rock -2009/09/11 00:19
>「要塞を設ける」とか「富裕な」とかにはさすがにあきれた。
これはちょっと言いすぎではないかと思います。
設けるには、創設するという意味が有りますし、ファンタジーの源泉の一つである神話でもよく出る表現です。たとえば北欧神話では、設けるという言葉はよく出ます。著しくファンタジーの雰囲気をこわしているとは思えないです。『富裕な』もあきれるというほどではないと思います。
むしろ権力をよく表している言葉です。スモールワールドには非常に
ふさわしい。
てらしま -2009/09/11 02:13
どうもです。
いいすぎとも思っていませんが、とらえかたが違うようですねえ。そういうふうにとらえたほうがいいということでしょうか。
たとえばなにかファンタジー小説を1冊持ってきて、そこに登場するひとつの種族名を全部「要塞を儲けるオーク」に置換してみたら……、と考えていただければ、わたしの感じた絶望がわかっていただけるかと思います。読めたもんじゃありませんよね。
いまどきこんな言葉は、文章でもなかなか使いません。神話にそうした言葉がよく出てくるのは、文筆家が書いた文章じゃないからではないかなあと思います。
ゲーム中にも、わざわざ「要塞を設ける」なんていってられません。英語に置き換えて呼んだり、「要塞オーク」と短縮したりしています。たぶんそれはみんなそうかと思います。
それなら「要塞」でよかったなあと。たとえば「地下世界の」も「地底」でいいでしょう。「要塞オーク」や「地底エルフ」ならいそうです。
まあたしかに、激しく間違っているというわけではありませんが。むしろ、間違えないように訳したように見えます。
個人的には、少なくとも呼べる名前になっていないと、雰囲気を大切にしたとはとてもいえないだろうと感じています。
rock -2009/09/11 13:43
>全部「要塞を儲けるオーク」に置換してみたら……
なるほど。確かに読むことを前提にしたらものすごくゲンナリするのは分かります。私もそうは読んでいません。
確かに捉え方がかなりちがいますね。
私の場合、呼びにくい名前でもかまわないと考えています。適当に呼称をつけますから。ボーナンザがものすごく顕著です。コロレットもクラスの女子が、ピンクのカメレオンは誘惑をするのよといって楽しんでいました。
ただできれば呼べる名前の方がいいかもしれませんね。
神話は確かにそのような面があります。どちらかというと「読むことを前提としていない表現」があるのです。北欧神話の場合、ものすごく過剰表現になると、鯨を「海に遣える使者」、戦いを「剣の嵐」のような表現がバンバン飛びます。(このように一つの単語を二つ以上の言葉に置き換える表現をケニングという。)
rock -2009/09/11 13:55
あとこのゲームはすごい面白いですね。
日本語版が出て、しかも5500円で買えて、中身を見たらものすごくコンポーネントが
良くて驚きました。カードゲームはノリで買いまくっているけど、ボードゲームになると
とたんに慎重になります、私は。なぜなら高いからです。
持っているのは三つだけです。マハラジャとエルグランデとスモールワールド。
あと結構早く終わるので、もう一回やろうとか、次はあの種族で・・とか、
いろいろ楽しめます。
てらしま -2009/09/11 22:50
いろいろ書いてるけどおもしろいのは同意です。好きなゲームだし。それはもう一度書いておきます。だからこそがっかりしたんですけど。