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マリア様がみてる 妹オーディション
 読書

マリア様がみてる 妹オーディション
今野緒雪 集英社コバルト文庫

2005.4.10 てらしま

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 おー、戻ってきた戻ってきた。なにがって、つまり作品の勢いがである。
 なにしろ「妹オーディション」である。こういう、どこかズレたぶっとびかたがよかったんじゃないかそういえば。
 そもそもシリーズ執筆のきっかけは酒の席でのバカ話らしいし。「おにいさまへ…みたいなのをもっと軽くやったらー」という、ネタがあったから、つきぬけた世界観を実現できていたんじゃないか。
「ロザリオを渡す」とか、なんとも仰々しいしかけも、こんな世界だから自然に存在できていたわけで。
 そういえば、ということである。もうすっかり忘れていたけど、ネタ小説っていうかバカ話っていうか、そういうムダな勢いがあるところがよかったのだ。
 まあ、少なくともわたしは、そうでなければ読まなかった気がする。いまになって思えば。
 バカ話は好きだ。
 でも、そんなバカ話が、いつのまにかマジメな人間関係の話になってしまっていた。むろんそれだってなければだめなんだけど。『パラソルをさして』のあと、元どおりにぶっ飛んだ話をやろうとしても、なかなかできずにいたような感じがあった。
 一番描くのが難しいのはギャグマンガだという。毎回ギャグを考えるというのはとても難しいことで、だからマンガ雑誌では、ページあたりの報酬はギャグマンガのほうが高いらしい(少なくとも昔はそうだったようだ。いまはどうなったのか知らないけど)。
 だからギャグ漫画家というのはつらい商売なのだと、そういう話を聞いたことがある。でもそれはギャグマンガに限ったことではない。こういうシリーズだってそうだろう。特に、今野緒雪のようなひねくれた人が書くシリーズでは。
 それでつまり『マリみて』はすでに枯れかけていた。バレンタインの宝探しとか、そういうぶっとんだネタがなくなってきていた。というか、読者も含めて、思いつけなくなっていた。
 さて『妹オーディション』である。久しぶりの、オリジナルイベントなのである。修学旅行とか、学園祭とか、そんなあたりまえのイベントではもうだめだった。やっぱり生徒会主催のこういう変なイベントをやれなければ、おもしろくならない。
 すでに、一巻一ヶ月というペースは崩している。つまり読者が期待するほど話が進まないわけだが、それにもだいぶ慣れてきたわけで。
 バッティングフォームを変えてスランプに陥っていたというやつか。つまり。ホームラン狙いをやめてアベレージヒッターになろうとしたら、かえって打てなくなってしまっていた。
「妹オーディション」というネタ一発で、読者も小説も本来のバッティングを思い出したという印象である。
 今後の方向性は意外なほどはっきりと示された。というかやはり、それしかないという方向に固まった。そうすると、このあとはクリスマスに正月にバレンタインにと続くわけだから。スランプ脱出の予感は持てる。


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