遊星ゲームズ
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帝国の夜明け
 ボードゲーム

2010/02/08 23:53
帝国の夜明け
Rize of Empires
2009年
Mayfair,Phalanx
Martin Wallace
4~5人(5人)
240分(公称150分)
thx to play:game
rizeofempires.jpg

 タイトルに「Empires」と入っていると、とりあえず重そう。そして、おもしろそうだ。
 これはまさに、そんな期待どおりの内容になっている。
 ワーカープレイスメントだ。そして、いわゆる「エリアマジョリティ」などの要素も含まれている。
 ワーカープレイスメントとエリアマジョリティ。このコンボである。重くないわけがない。

 ちなみに、エリアマジョリティというのを説明しておくと。
 地図上にコマを配置していく。得点計算時に、各エリアについて、配置しているコマの多寡を比べる。その結果「1位は○点、2位は△点」というように得点が加算される。そんなシステムだ。
 あえてどちらかといえば、ゲーマー向けといえるだろう。囲碁のように盤面全体を見て、どこにコマを置くのか、どこで手を抜くのかと考える必要がある。
 エリアマジョリティを採用したゲームには、忘れられない名作がいくつもある。代表的なゲームは、エルグランデ、王と枢機卿など。だろうか。

 ところで、同じようにワーカープレイスメントとエリアマジョリティを組み合わせたゲームとしては「Age of EmpiresⅢ」が思い出される。そういえばあれも「Empires」だったりする。
 なにかこう、タイトルにEmpiresを入れたらこんな感じという、不文律のようなモノを感じる。そしてそれはなぜか、我々ユーザにも共有されている気もする。
 重くて、エリアマジョリティで、最近のトレンドでいえばワーカープレイスメントを採用していそう。なのだ。

rizeofempires2.jpg しかし、ただのワーカープレイスメントではない。
 ワーカープレイスメントは完成されすぎていて、素直に採用すると過去のゲームと同じになってしまう。そして、それで間違いなくおもしろい。そういうシステムだ。もちろん、だからこそ素直に採用する手もあるだろうけれど、あえて少し改変したくなるデザイナーの気持ちはよくわかる。
 このゲームの場合は「AターンとBターン」と呼ばれるターンが交互にやってくることになった。
 Aターンでは「アクションディスプレイ」と呼ばれるワーカー配置ボックスに、プレイヤーコマを配置していく。
 もちろん、ボックスによって行動が決まっており、配置したボックスのアクションを実行する。
 アクションは、名前だけ挙げると「発展」「領土」「都市」「帝国」「貿易」。それっぽい。なにか、ある種類のゲームに特有のわくわく感がある。
 このAターンは、まあわりと一般的なワーカープレイスメントといえるだろう。
 問題はBターン。
 Bターンでは、Aターンでアクションディスプレイに配置したワーカーコマを「とりのぞく」ことでアクションを実行する。
 つまり、Bターンでは配置しないのだ。Aターンで実行したアクションと同じものを実行することになる。
 実行順序はプレイヤーの自由だ。ただし「そのコマより左に配置されているコマの数だけ資源を支払う」必要がある。Aターンでは、右からつめてコマを配置していく。だからBターンでは、Aターンで他のプレイヤーよりも後に実行したアクションほど有利、ということになる。
 これはもう、ワーカープレイスメントではない。むしろ、どちらかといえばオークションに近い。次第に安くなるオークションなので「ダッチ・オークション」というべきだろうか(「オークションの代わりのシステム」を参照)。
 Aターンはワーカープレイスメント。Bターンはオークション的なゲーム。ワーカープレイスメントとオークションが交互にやってくる、ということになる。
 なんとまあ、よくばりなゲームである。

 もちろん「発展タイル」「領土タイル」などといったものもある。それぞれ特殊効果があったり、毎ターン得点になったりといろいろある。
 もちろん「戦争」もする。
 ゲーム開始時、地図には地中海沿岸しかない。しかし、時代Ⅱ(3ターン目と4ターン目)に「航海術」が発明され、極東と新大陸のマップが追加される。などといったギミックもあったりする。

 おもしろそうな要素をこれでもかと詰めこんだ、ボリュームたっぷりの力作だ。
 一晩かけてじっくりと楽しむ、近ごろでは珍しいタイプのゲームではある。でもやっぱり、こういうのも楽しい。

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帝国の夜明けを