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サンダーストーン
 ボードゲーム

2010/11/14 17:06 てらしま

 ドミニオンクローンのひとつ。デッキ型カードゲームとか、いわれている種類のゲームだ。
 テーマは、剣と魔法のファンタジー。村でパーティーを作り、装備を調え、ダンジョンでモンスターと戦う。
 ちなみに「クローン」という言葉にはとくに悪意はない。twitterなどで最近使われている言葉のひとつだ。PukiwikiとかをWikiクローンと呼んでいた用法と同じ感覚だろう(というか、ドミニオンクローンという言葉を使いはじめた人のひとりはわたしかもしれない)。
 このサンダーストーン、わたしは大好きなのです。ドミニオン亜種だし、まちがいなくドミニオンの影響を受けて作られたゲームだろうけれど、かなり違う独特のおもしろさが構築されている。
 アークライトが最近完全日本語版を出してくれたということで、さいきんかなり遊んでいる。

 ドミニオンと違うのは、とりあえず要素が増えているところ。ドミニオンは、アクションも金貨も勝利点もすべて「コイン」というひとつのリソースで獲得する。そこが、ドミニオンのすごいところのひとつだった。ふつう、ゲームでこれをやるのは難しい。集めるべきリソースがひとつということは、すべてのプレイヤーが一様にそれを集めることになる。戦略が分岐しないため、単調で逆転できない、おそらくは1番手プレイヤーが超有利なゲームになってしまう。
サンダーストーン ゲームルールはシンプルなほうがいいのだが、シンプルすぎるとこういう問題が発生する。ドミニオンはそこを、デッキというスマートな乱数装置の活用で解決した。デッキを使うことで、リソースの使用を不均一にした。またそれをコントロールする手段をいくつか用意(ドロー、圧縮、など)した。リソースの種類ではなくリソースの動きを変化させることで、戦略を分岐させゲームを成立させている。
 しかし、この方法にもやはり欠点がある。拡張の作りづらさ、というのはたぶんあるだろう。
 既存のカードの上位互換や下位互換は作れないとするなら。あとはもはや、システムを追加するか(海辺)、リソースを追加するか(錬金術)、または、高価で強力なカードを追加するか(繁栄)。それしかない。
 わかりづらさ、というのもある。ふつうのゲームなら、選択肢に対応するリソースが用意されている。たとえば「木」「石」「鉄」とか。ドミニオンにはそういうわかりやすさがなく、リソースの動きかたを操作するやりかたを選択するという、直感的でない戦略選択を迫られる。「初心者論」「インスト論」などが語られるのはそのためだ。じっさい、ルールを把握してから勝てるようになるまでにはけっこうな期間がかかり、また上級者と初級者の差も非常に大きい。
 じつはリソースが多く複雑なほうが、わかりやすい。
 サンダーストーンや他のドミニオンクローンのいくつかでは、コイン以外のリソースが追加されている。それはじつは自然なことだし、むしろドミニオンが特殊だったわけなのである。

 手番がはじまったらまず、村にいくかダンジョンにいくかを選択する。
 村は、ふつうのドミニオンのような感じ。お金を使い、なにかを買う。武器とか、ランタンとか、冒険の必需品がいろいろ売っている。
 ドミニオンと違うのは、ダンジョン。
 ダンジョンにはモンスターがいる。このモンスターを倒すのが、ゲームの目的だ。モンスターを倒すために必要なのは「攻撃力」。お金などいくら持っていても役にたたない。
 つまり、追加されたのはこの「攻撃力」だ。
 あと、他にも「経験値」などが追加されていたりもする。
 おかげで、カードのデザインはずいぶん複雑になった。1枚のカードの中に、かなりたくさんの数字が並ぶ。
 そのあたりは、インストが難しいゲームだと思う。しかしじつは、最初はドミニオンより難しいだろうが、ゲームがはじまってしまえば、なにをすればいいのかが逆にわかりやすいんじゃないかと思う。
 とはいえまあ、ボードゲームがそれほど好きでない相手にルールを説明するのは骨が折れそうだ。
(わたしの場合、このゲームをやる相手はたいていドミニオンプレイヤーなので、覚悟していたよりはずっと簡単に導入できている。そこはこのゲームのマーケティングの狙いどおりといえるだろう)

 と、システム面の話を先行してしまったけど。それ以上にこのゲーム、雰囲気作りというような面でかなり成功していると思う。
「村にいく」「ダンジョンにいく」という選択が、とても理解しやすい。村にいって戦力を整える、ダンジョンにいってモンスターと戦う。そうすると経験値が溜まるから、村に帰ってレベルアップする。
 遊んでいたら、頭の中にファミリーコンピュータ版ウィザードリィの音楽が流れてきた。
 そういう、剣と魔法のファンタジーがやりたいことをきれいに再現できてしまっている。
 たとえば『ルーンバウンド』や『ディセント』や、その他いろいろなファンタジーものアメリカゲームの流れをくみつつ、しかし採用したシステムがドミニオン型。
 アメリカ人はほんとに、ファンタジーとゾンビが好きだなーと思うけど。
 村で準備しダンジョンに挑戦する、ウィザードリィのような世界観が、どういうわけだかドミニオン型システムととてもよくマッチして相乗効果を生んでしまった。そんな印象がある。

 ただのドミニオンクローンではない。ドミニオンとはやることもプレイ感もまったく違う。ドミニオン亜種と思っていると予想以上におもしろいし、ファンタジーの世界観も意外に楽しい。

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サンダーストーンを