参加が確定したので、発表します的な。
ご好評いただいた『ドミニオンレシピ』の続編、というか陰謀編。けっきょく書いてます。『ドミニオンレシピ:陰謀編』を、テーブルゲームフェスティバル2009で販売します。
しかも! ムダに! 前回を超えるボリューム(笑)。
いままさに鋭意執筆&編集中で、ページ数や価格はまだわかりませんが、前回より厚くなるのはたぶん必至。
あと今回、何人かに寄稿してもらったりもしてます。わたしひとりではたどりつけなかったであろう戦略とかもあって、個人的にもたいへんおもしろいです。
それにしても、陰謀は難しいです。いろいろと、基本セットとは違うところが多いです。なので本の構成も、前回と同じにはならないです。
カード追加するだけでこれほど違うゲームになってしまうんだからなんというか、攻略者に対して「これでどうだ!」と挑戦されているような気になったりもします。
でも意外と書けるなというか。書いてるうちにわかってきた気になったりもしますねー。やってみるもんですねー。
今回、なんといっても不安材料は、次のエキスパンションであるドミニオン:海辺の発売日(笑)。
なんと、テーブルゲームフェスティバルの直前です。ははは。大丈夫ですかね-。
もちろん、本の内容は次のセットが出ても役に立ちますよ。もちろん。
というわけで、乞うご期待ですか。
ボードにマス目があって。マス目とマス目の間に国境線を置いていく。陣取りゲーム。
オリジナルが1996年で、その後2003年に新版が出た。らしい。ただの再販ではなく、ルール面もだいぶ手を入れられているらしい。
昔の版はやったことないけど、オークションがあったとか? この新版にはオークションはない。たしかに、だいぶ変わっているようだ。
初期配置で、城を配置する。4人プレイなら、3個ずつ。
あとは、カードをプレイしながら国境線を置いていく。地形によって得点が違ったりはするけど、もちろん、できるだけ広い陣地をとったほうがいい。
ボードの端には国境線が必要ない。だから、最初は四隅の近くからはじめたほうがいい。そのあたりは囲碁と同じ。
ボードに星描いといてくれたらよかったと思う。
なにしろ、まったく国境線がない状態でゲームがはじまってしまう。選択肢はひどくたくさんある。
自分の城は3個あるんである。盤面のいろいろな場所で同時に、たくさんある他の城と国境争いをしているわけで。一箇所に注力すれば、他のどこかで遅れをとることになる。そういう「ここで手を抜いて他の場所に打つ」という判断が必要だったり、そのあたりも、いろいろと囲碁っぽい。
国境線が確定したあともゲームは続く。騎士を相手よりも多く持っている国なら「領土拡張」をできる。武力をつかって、国境線の押し合いをするわけだ。
「陣取りといえばこんな感じ」だ。なんとも直感的で、見事なゲームと思う。
囲碁と違うのはもちろん、プレイヤーが3人以上いるマルチゲームであること。
囲碁は1対1だから、相手を攻撃することはそのまま自分の得になる。だがマルチゲームでは、攻撃をすれば、たぶん自分よりも攻撃されなかった第3者プレイヤーが得をする。
といっても、戦うことなくすませることができるようなゲームではない。基本的にガンガン戦う、インタラクションが非常に強いゲームだ。
誰が誰を攻撃するのか、いわゆる「お仕事」を求められたりする種類のゲームである。おそらく、理屈でいえば、攻撃されなかったプレイヤーが勝つだろうというゲームだ。
こういうゲームは、たぶん4人以上でプレイするのがいい。
3人だと、2人がもう一人を攻撃するとその一人が脱落する。これはまあ、そりゃそうだろう。
インタラクションが強いゲームでは、誰と誰が戦うのかというところで陣営が分割されるわけなのだけど、その組みあわせが、3人の場合は2パターンしかない。1対1対1か、2対1か、だ。
そして、このことがゲームの結果に及ぼす影響は強い。というより、インタラクションの度合いがある一定水準を超えると、ほとんどこの影響だけでゲームが決まってしまう。
こうなればもう、ゲームシステムはなんだろうと関係ない。ゲームシステムにかかわらず、誰と誰が戦うのかという陣営分けだけで結果が決まってしまうのである。
これが4人なら、2対2とか、2対1対1とか、いろいろなパターンがありうる。ゲームの展開が、4人のほうがずっと多彩だ。
どんなゲームでも、インタラクションがないわけではない。そういう意味では、じつは 「3人が最適」 なゲームというのはほとんどないような気がしている。
少なくとも、インタラクションが強ければ強いほどそうした傾向が強い。レーベンヘルツは、インタラクションが非常に強いゲームだ。だから、2人でなければ4人、と思う。
インタラクションの影響は強い。たぶんこのゲームも、最終的には「一番攻撃されなかったプレイヤーが勝つ」種類のゲームだろう。
逆にいえば、攻撃されないように振る舞うことが重要かもしれない。いきなり巨大な領地を目指してしまうと邪魔をされやすいかもしれないから、大きくはないけど堅実な領土を作ろうとか、そういうことを考える。
よくいう「お仕事」をする場面も出てくるだろう。しかし「お仕事」のために致命的なコストを支払ってしまうと、自分が勝てなくなるという本末転倒な事態になったり。
インタラクションが強いゲームでは必ずある、そういう要素を持ったゲームだ。21世紀のトレンドからすると、かなり強すぎるインタラクションを持ったゲームといえる。
もっとも、なにしろテーマは陣取りなのだ。陣取りのインタラクションは強くてあたりまえとも思う。
マス目とマス目の間に国境線を置き、領土を争う、このテーマがとても直感的に表現されていて、楽しい。「陣取りといえば」といいたくなる傑作だ。
地味だけど。とてもシンプルで、いいゲームだ。けっこう気に入っていたりする。
どのへんが地味かって、まずこのタイトル。ドイツのゲームでは「交易」というのはとてもありふれたテーマだ。ゲームのウリになるようなことではないだろうと思う。しかし『交易王』というタイトルからは、交易するということしかわからない。
そして、ゲームルールをよく読んでみれば、別に交易してないし(笑)。
資源を生産して、それを売ってお金にして、また資源を生産して……というのが、一般的なゲームにおける交易のイメージだろうけど、交易王にはそういうプロセスがない。
商品を船に積むけど、商品はなくならない。商品はリソーストークンではないのである。
プレイヤーは2隻の船を持ち、貿易商として大航海時代に名乗りを上げたところ。
場には6枚のカードが出ている。これは、各商品の相場を表す。たとえば青いカードが4枚出ていたら、青い商品は1個4円だということを表している。わかりやすい。
プレイヤーが持っている船には、必ず1個の商品が載っている。最初は2隻の船を持っているから、各プレイヤーは2個ずつの商品を持っていることになる。
というか、商品はなくならないので、商品というべきじゃないというような気もする。その商品の貿易ルートを持っている、というようなイメージだろうか。
手番にできることは、2つ。
まず「商品を1個積み替える」ことができる。しなくてもいい。
次に「場にカードを出す」または「カードを2枚引く」をする。
場にカードを出すときは、手札から1色のカードを何枚でも、場にある6枚のカードの上に置く。そうするともちろん相場が変わる。
そして、カードを出すと、その色の決算が起こる。出した色の商品を持っているプレイヤー全員が、収入を得る。
この収入が、お金でもあり勝利得点でもある。
とてもシンプルだ。
さて、それに加えて、スペシャルカードの購入もできる。じつのところ、これが重要だ。
スペシャルカードは4種類。うちひとつは「船」だ。つまり、2隻しかなかった船が1隻増える。そんなこともできる。
それ以外に「交易所」「港湾労働者」「売買契約書」というスペシャルカードがあり、それぞれに特殊効果を持っている。
「交易所」は、毎ターンカードを1枚追加で引ける。
「港湾労働者」は、追加で1個、商品の積み替えができる。
「売買契約書」は、商品の決算でお金を受けとるたびに追加で2円もらえる。
船も含め、それぞれに強力な効果だ。
しかし、スペシャルカードを買うためには勝利点であるお金を支払わなければならない。それも、けっこう高額である。
どのスペシャルカードを使うのか、何枚使うのか、といったあたりが、そのまま戦略の選択になる。それぞれに、まったく違う戦略を考えることができる。
「スペシャルカードをつかわない!」という選択も可能だ。
そのへんが、なんともおもしろい。
商品は、ゲーム的なリソースとは少し違う。増えも減りもしないのだから。「モード選択」を表すトークンとでもいうべきだろうか。
船に積んでいる商品を変更するためには、手番が1回必要だ。つまり、リソースとして数えるべきは手番という時間のほうだろう。
他にリソースとして持っているのは、相場を変えるための手札と、お金。
限られた手番回数で、他人の手札を読み、決算の起こりそうな商品や相場が高くなりそうな商品を選択する。あるいは、手札にカードを集めてから一気に相場を変え、瞬間的に大きな利益を獲得する。
交易というより相場師なんだが。いや大して変わらないか。
もっとも、じっさいにゲーム中にプレイヤーが考えることは、いかに稼ぐかというよりも「他人との差」だ。なにしろ、決算を起こすと他人も得をしてしまう。いかに多額を稼いだとて、他人も同じだけ稼いだのでは意味がない。
そういうところにつねに気を払う、とてもゲームらしいプレイが求められる。
とにかくルールがシンプルなので、インストには苦労しない。
そのくせ、スペシャルカードの選択でいろんな作戦を考えられる。そして30分で終わる。
たとえばなにか、他の重量級ゲームの一部として組みこまれていそうなシステムだなーとも思う。たとえば、ワーカープレイスメントにこれを組みこむのは難しくないよなあとか。それほど、拍子抜けするほどシンプルなのだ。
でもその中に、なにやらいろんなエッセンスが凝縮されている気がする。
けがわ -2009/10/06 04:01
交易王は個人的には2007年のナンバーワンゲームです。この手の相手の動向推測して流れに乗ると言うゲームはクニツィアが得意とするところですよね。インターアクションも多いし、ゲーム慣れしてない人でも楽しめます。あまり知られていませんが、1995年のフェーケライと言う豚のビューティーコンテストゲームのリメイクです。しかし手が加えられていてプレイ感はかなり異なります。特殊カードはバランスもよく良い味を出していると思います。使わなくても流れによっては勝てるしね。
ところで手番でカード補充を選んだ場合は3枚でなく2枚だと思います。
てらしま -2009/10/06 20:35
どうもですー。
2枚でしたね。なおしました。
この手のゲーム、じつは個人的には、それほど好きなほうじゃなかったりします(笑) インタラクションが強すぎて、けっきょく読めなかったりすることが多いあたりが。
このゲームにもそんなところはある気もしますが(笑)、でも交易王はかなり好きなんですよね。
豚のビューティーコンテストは知らなかったです。
ドミニオン:陰謀が、ドミニオンというゲームに与えた影響はけっこう大きい。詐欺師や破壊工作員などの攻撃カードがわかりやすいわけだけど、もちろんそれだけじゃない。
なんでそういうことを書いているかというと。ドミニオン:陰謀というのは、ボードゲームの追加セットとしては希有といいたくなる成功を収めていると思うからだ。
(商売としてはどうなのかくわしく知らないけど、ここではゲームとしてという話)
ボードゲームの追加セットがやることのパターンとしては、もちろん追加ルールが挙げられるだろう。
先日日本語版が出た、パンデミック・絶体絶命などは、プレイヤーの一人を敵にしてしまうという大胆なオプションルールが入っていたりした。
デザイナーの立場に立ってみれば、そうなるのはわかる。せっかくだからルールを追加したくなるというのは、デザイナーとしては自然な発想だろう。
しかし、これはリスクもある。と思う。
ルールを追加したゲームを遊ぶためには、基本セットのルールがわかっていなければならない。追加セットを買ってしまったら、新規プレイヤーと一緒に遊ぶことが難しくなる。
とくに、コンポーネントをいろいろ追加したり、カードの一部を変更したりといったものだと、追加セットを混ぜたあとめんどくさくて基本セットに戻せなくなったりする。
そうして新規プレイヤーが増えなくなって、やがて遊ばれなくなるということが、けっこうあったりすると思うのだ。
というか、わたしのコレクションの中にはいくつかあるのだ。
驚くべきことに、ドミニオン:陰謀には新しいルールがないのである。
これはがんばって我慢したんじゃないかと思う。カードの効果は複雑になったものの、ルール自体は変わっていない。
だから、いきなり陰謀入りで新規プレイヤーにインストしても大丈夫なんじゃないかと、最近は思っている。
というか、もはやドミニオンをはじめてやるという人に会う機会がなくなってたりもするけど。
そんなところも含めて、基本ルールの完成度がとんでもなく高いということができる。
だからこそ、カードが追加されることでゲームがどう変わったのかを考察することができる。ゲームが壊れなかったからできることだし、考察したくなるほどゲームに変化があったということでもある。
というわけで、ちょっと思いつくところを挙げておいてみようと思った。
基本セットでは研究所くらいだったけど、今回はたくさんある。
また、破壊工作員という一発逆転の可能性を用意した。
……といったあたりかなあと思っている。
どれをとっても、ドミニオンの欠点を補強する意図がけっこうはっきりと感じられる気がする。
ルールを変更せず、また過去のカードに変更を加える必要もなく。カードの追加だけでそれをやれてしまうということになる。
カードセットもよく考慮されている感があるけど、それ以上に、基本システムがすごく堅牢なんだなあと思う。
なんか、また追加セットが出るようですが。こんどはどうなるのかというのも気になる。
見たこともない動物の絵と名前が出されて、その動物の生息地、体長、体重、しっぽの長さを当てるというクイズゲーム。
ルールは非常にわかりやすい。お題の動物カードがまず示されるんだが、カードの下半分が隠れるような箱が用意されていて。上半分には名前と絵しか見えない。
ボードには世界地図と、身長や体重をベットするためのマスがある。
お題に対して、プレイヤーは「ここだ!」と思う場所に自分のチットを置き、ベットしていく。
ベットに正解すれば得点。
「となり」に賭けてしまった場合も、ニアピン賞が入る。
まあ、それだけだ。
ルールがシンプルだし、非常に直感的だ。インストは5分で終わるだろう。
テーマもわかりやすく、老若男女問わず楽しめる。彼/彼女が動物学者でないかぎり。
プレイヤーを選ばず盛り上がる。そういう意味では、非常にいいゲームだ。
動物カードは360枚入っているらしく、何度もプレイできる。
でも個人的に、このデザインには疑問がある。
たとえば、我々がカタンの開拓者たちを遊んだ時間と同じだけ、このゲームをプレイしたら。
360枚のカードの、大部分を憶えただろう。そうじゃないだろうか?
いや、まあ、わたしは記憶力が弱いので自信はないけど。
人間の能力はバカにしたモノでもない。特に子供は、非常に頭がいい。本気で好きになれば、360枚を憶えるくらい造作でもないと思う。
わたしたちが子供のころ、モビルスーツの名前をいくついえただろう。キン肉マンの超人の名前は? ふっかつのじゅもんはいくつ憶えていただろう?
そういう意味で。
はじめから、やりこみを前提としてないデザインという気がする。
そこに、少し疑問を感じてしまったりする。
ああでも、拡張はすぐに作れそう。
それに、たとえば動物のネタが尽きても、次は昆虫とか、花とか、いろいろできる。なんなら、指輪物語とかクトゥルー神話とかでも作れるなー。
誰かの野球カードのコレクションを、そのままゲームに転用したっていいか。
まあ現実には、このゲームをそんなにやりこむということはたぶんない。盛り上がるゲームなので、不特定の人たちが集まるゲーム会などでは重宝できると思うが、何度もくりかえし遊んだりはしないだろう。
ゲームとしてどうかというより、シンプルに楽しい。買って損をするとは思わないかな。