ボード上に人の絵がたくさん並んでいる。サイコロを振ってそこに配置し、なにか効果を得る。というあたりは、王への請願を髣髴とさせる。
春夏秋冬と季節であらわされるフェイズが進んでいくあたりは、ヴァレンシュタインあたりを思い出させる。
でも考えてみれば、どちらもそれほど似ていないわけだが。
プレイヤーは、王に国境地方を任された知事。それぞれ別の地方の知事なので、それぞれに領土を持っている。
毎年冬に、国境の向こうからいろんなものが攻めてくる。いろんなものというのは、ゴブリンとかゾンビとか、ドラゴンとか。
そんな冬に備えて兵力を蓄えつつ、いろんなものを建てて領土を発展させようという話。
春夏秋には、生産フェイズがある。そして冬に、戦争フェイズがあるんである。
生産フェイズでは、「王の助言者」という人たちに頼んでなにかを生産する。それが、ボードに描かれている人たち。
つまり、生産してるんじゃなくて王様からもらってるんだと思う。側近に耳打ちされたから、じゃああの地方に資源を送ろう! という王様なんだと思う。
王の助言者の人たちは多忙なのか、会えるかどうかはサイコロ次第。
サイコロは3個振り、助言者のマスに置く。書かれている数字ちょうどの組みあわせで置かなければいけないので、すべて思いどおりというわけにはいかない。
基本的に自分の領土を発展させる箱庭系のゲームだけど、この助言者への配置にはインタラクションがある。他の人が置いたマスにはもう置けない。
各々の領土は離れているけど、王のいる都はひとつだし助言者の人もひとりずつしかいないんである。
そのあたり「インタラクションが強くないけどある」くらいのゲームの舞台設定(いいわけ)としては、けっこう自然かもなあとも思うわけだが。
助言者の人たちはなにか資源をくれるので、それを使って、特殊効果のある建物を建てたりする。
で戦争フェイズ。王様は気まぐれで兵士を送ってくる。サイコロ1個分の兵士が、とりあえずくる。
それに私兵を加えて、ゴブリンだのゾンビだのと戦う。
サイコロ1個って、1が出るか6が出るかでだいぶ違う。
ルールはいろいろと多い。でもめんどくさいところはないし、明確でわかりやすいのでプレイしやすい。かなり練られたものじゃないかと感じる。
システム面以外でも、舞台設定や言葉の選びかたなど、いろいろな面でよくできていると感じた。
上に書いた舞台設定のこともそうだが。
フェイズ進行に「春夏秋冬」という言葉を与えたというだけでも、だいぶわかりやすくなっている。ふつうに「3回の生産フェイズのあと戦争フェイズ」などという説明だったら、絶対に「2回だったっけ?」という話が出てくるだろう。
わざわざ寒い冬に攻めてくる敵というのも、考えてみればよくわからないけど。冬はなんか暗いイメージだし、敵がくるといわれればイメージとして納得できる。
あと、別にファンタジーである必要はまったくないのだが、「ゴブリン」とか「ゾンビ」とかいわれればどう考えたって敵だ。
直感的にそういうことが理解できて、かつそのとおりのシステムになっている。
もちろん、整理されているところはしっかりされている。コアとなるダイス配置部分は特に。けどそれ以外の部分で、無駄がないかといえばあると思う。
でもそれらが、それほど気にならない。直感から外れず、納得できるからではないかと思うのである。
ルールをそぎ落として抽象化が進んだゲームは好きだけど。こうして手作業で作りこまれたものもいい。
プレイヤーには、ロジックから理解する人と雰囲気から入る人がいる。キングスバーグはまず雰囲気から入り、そこから理解しやすい種類のゲームだ。
近年のゲームの技術力はすごい。少し前のものと比べると、ルールがものすごく洗練されている。でもその中に、いろんなおもしろさが組み込まれている。
でもそれは、抽象化が進んでいることも意味する。『ケルト』って、どのへんがケルトなんだろう?
抽象化すればルールがシンプルになるが、そのぶん雰囲気が失われる危険がある。たとえば、いわゆる「初心者」にとって、どちらが理解しやすいのかというのはわからないんじゃないかと思う。
30分を超えるゲームを敬遠してしまうということは、もちろんある。わたしもある。でも本当は「時間がかかるから」「ルールが多いから」というのは関係ない。
「ロジック派」と「雰囲気派」とを比べると、雰囲気派のほうが多い。個人的な経験上からいえば。それならむしろ、ほとんどアブストラクトゲームみたいになってるゲームよりも、キングスバーグみたいなもののほうが導入しやすいかもしれないんじゃないか。
もちろん場合によるけど。
斬新なところはどこにもないし、ルールがすごく洗練されているということもない。でもおもしろい。傑作なんじゃないか。
ちかごろは、いわゆるインタラクションが薄いといわれるゲームが増えている。と思う。時代のせいなのかなんなのかしらないが、ともかくいまはそういうゲームのほうが受け入れられやすいんだろうか。
そのいっぽう「最近のゲームには戦いがない」となげく人もいる。好みにもいろいろあるんである。
ボードゲームをはじめたばかりの人はもちろん「ゲームってなんなのか?」ということを理解していない。
現代で一般にゲームといえば、それはコンピュータゲームのこと。コンピュータゲームはふつう一人遊びだ。インタラクションなどということは考えたこともない人のほうが、圧倒的に多いわけなのである。
その意味では、インタラクションが薄いゲームのほうがうけやすいというのは納得できる気もする。
遊びにはいろいろな種類がある。「ゲーム」はその中の一つだが、他にもある。
表意文字であるところの漢字は、そのあたりのニュアンスを伝えやすいので便利だ。
いくつか例を挙げると。
「競技」の「競」は、競う遊びだ。これはまさにインタラクションの世界。「ゲーム」の訳として近いものだろうと思う。
戯れるの「戯」には、こどもがふざける様子というニュアンスがある。たわむれるときは、どちらかといえば相手がいそうだ。いなくてもいいけど。だから、インタラクションがないわけでもない。
でもゲーム的な意味とは少しちがう。勝敗をあまり重視しないパーティーゲームが近いといえるのではないだろうか。
『ホモ・ルーデンス』(ホイジンガ)で、中国の遊びの概念を説明する節に登場するのは「玩」という文字。これは「玩具」「愛玩」などにつかわれる。
「戯」よりも内向的な、どちらかといえば相手を必要とせず、なにかをもてあそんだりじっくり観察したりする、というくらいのニュアンスだろうか。
パズルやコンピュータゲームなどのひとり遊びがあたりそうな気がする。
なにしろ言葉が分かれているのだから、これらは別のモノなのである。少なくとも漢字を使う民族にとっては。
ただし、ここで話しているのはボードゲームの話だ。ボードゲームはゲームである。あくまでゲームの定義としては「競」が入っていなければならない。
それは前提で、その上での話だが。
自分専用のボードを渡されて、他人の行動をあまり見なくてもプレイできるような。いわゆるインタラクションの薄いゲームには、「玩」の要素が含まれている。
コンピュータRPGで、自分のキャラクターが育つのを見るのは楽しい。これもまた遊びだけど、相手が必要ない。
むしろ相手とのかけひきなどが含まれると、「競」的なおもしろさが強くなり「玩」が薄くなる。
インタラクションが薄いゲームがうけているのであれば、それは「玩」に類する遊びが好きなプレイヤーが多いといえるのかもしれない。
そんな感じで。
そういうのをゲーム会の雰囲気にあてはめてみると、持ちこむゲームの選定基準になりうるのかもなと。思った。
ああでも、あまりそういう分類にとらわれると、広がりがなくなっちゃってよくない気もする。「気が進まないけどプエルトリコやってみたらハマった」というケースもありうるわけで。まあてきとうに。
最初はどうつかうのかさっぱりでしたが、最近だいぶなれてきた。
ブログに書くまでもないようなどうでもいいことは、思いついたはしからtwitterでつぶやいてればいい。というつかいかたに落ちつきつつあります。
そうすると、仕事のグチとかブログに書かなくてすむなと(笑)
というかそうすると、ブログに書くのはほとんどボードゲームの話題ばっかりになってきた気が。そうかそれ以外はどうでもいいのか。
ダイレクトメッセージに気づかなくて返事返すタイミング失ったときとか、どう思われてるのかなーとか、若干不安を感じるけど。「そういうのは気にしない」がtwitterの正しいつかいかたとは思いつつも。
sakymns -2009/06/13 20:01
フォローさせていただきました。ゲームマーケットでレシピ買いました!参考になります。以前もボーナンザ(か何か)の本をコミケで買わせてもらいました。twitterは為替トークばっかしてるのでフォローしてくれなくても構いませんがよろです。
てらしま -2009/06/14 00:59
ありがとうございますー。
ゲーム関係で同人やるのは今回がはじめてなんで、たぶんボーナンザかなにかの本は別の方と思われますが(笑)
twitterもフォロー返しました。
いや楽しかったです。
販売してた『ドミニオンレシピ』ですが、おかげさまで悪くない売り上げ。
……いや、あの場でこういう内容の本としては、ひょっとしたらこれ以上望むべくもない売り上げなのかもしれませんが、よくわかりません(笑)
とにかくきていただいたお客さまには感謝です。
やっぱりああいうイベントは楽しいなーと思いつつも、しかし同じことを何度もやるのはムリという気もする。今回はドミニオンがあったからやったけど、もしこれがドミニオンじゃなかったら戦えなかったと思う。
やっぱオリジナルゲーム作るか! とか、いまはイベントの余韻のせいで思ってたりしますが。やるかどうかは知らないけど。
そういえば、ゲームマーケットで配布したフリーペーパーのPDF版を置いときます。ペーパー途中で切れてたのでorz
コンピュータシミュレーション使って、各アクションカードの威力を測定してみた系の内容です。
KTC -2009/06/01 10:59
ドミニオンレシピ読ませていただきました。これまで漠然とプレイしていましたが、銀金と価値を比較しつつカードを購入するという考え方はとてもためになりました。
戦術も、すでに使ってはいたもののまだまだシェイプアップが可能だと気づかされたものや、庭園ビートダウンのように目から鱗のものまであって参考になりました。読めばすぐにドミニオンをやりたくなること間違いなしの本書は最高のドミニオン同人誌ですね。
次回はぜひ「陰謀」のカード解説とそれを加えての戦術論をお願いします。また、金貸しと鉱山の違いについての詳細な考察や、それぞれを使ったときのプレイングなどについての記事なども面白いのではないでしょうか。どんな状況でどちらを選んでどうプレイすべきなのか、私もいまだに結論を出せずにいるので、ぜひご意見をお伺いしたいです。
「密偵+泥棒」「議事堂+民兵」など、主役にはなれないけれど使いどころもありそうなコンボについてや、1巡目に村を買ってもいい可能性についてなど、まだまだネタには不自由しないと思いますので、ぜひ次回作の執筆をご検討下さい。
それでは長文失礼しました。
てらしま -2009/06/01 19:55
どうもです。
たしかに、書くことは捜せばあるんですよ。ただ今回は、流行の勢いにのってやってた感が強いので(笑)。次にこの勢いがある瞬間とタイミングいいイベントがあるかどうか。
やれそうならもちろん検討しようと思います。陰謀と、もしあるならさらに次のエキスパンション次第ですね(笑)
陰謀楽しみです。ともかくありがとうございますー。
メビウス便でとどいた。
なんかヴァルドラというゲームが、むこうでそれなりに評判らしい。ということで、じつは楽しみにしておりました。
なにしろ最近は、ドミニオンとかパンデミックとか、すごい高稼働なゲームがたくさんあったわけで。その裏に隠れて、埋もれてる傑作があるに違いないような気もしてしまうわけで。
現に、わたしの部屋には未プレイのゲームがけっこうある(笑)
というわけで、届いた箱を空けた。
なにやら、おもしろいモノが入ってるな……。
ルール読むと、ただのカード置き場みたいですが。
本をめくれなきゃいけないので、カードは両面使う。
というかたぶん、両面にした理由は、この本のかたちをやるためだけだと思う。
明らかに過剰(笑)。
今度やろうと思う。期待。
なかたさん -2009/05/30 23:48
うちの奥様に見せたら「やってみたいです」と反応なされましたよ。というか俺もやってみたい。コンポーネントのいいゲームはそれだけで価値があるよねー