意外と傑作。「知られざる」ってやつ? もっとも、こんな狭い世界で知られざるもなにもないような気も。
まず、石切り場でピラミッドの材料を手に入れる。6箇所の石切り場に、自分の色のカードを配置していく。
ちなみに、裏向きに配置である。配置が終わったら表にして、配置したカードの数字の合計を比べる。上位の人は石をもらえる。
それぞれの石切り場には、おけるカードの上限枚数とか、1位になったら何個の石を切り出せるかとか描かれている。「その場所で1位になったらもらえる特殊効果」なんてものが書かれていたりもする。
ただし、カードを全部置いていいわけでもない。
あまったカードは石を運ぶ人になる。石をたくさん切り出しても、ピラミッドまで運べなければ意味がない。使うことができる石は、余ったカードの数字の合計分までなのである。
このルールがまたおもしろい。
まあようするに、カードを伏せたオークションだ。
カード枚数で敵のやる気度はわかるが、じっさいのところは開けてみなければわからない。3枚も置いてるけどブラフだったり、するかもしれない。
この形式のオークションで思い出すのはやっぱり、モルゲンランドだ。
(他にもあったと思うけど、所有していて好きなゲームだと思い出しやすい)
ブラフだったり本気だったり、一箇所に本気出しすぎてダメだったり、欲をかいて全部失敗したりする。
こういうのけっこう好きなんだけど、悩んじゃって時間かかるから近ごろは流行らないかもなあ。
さて、石を手に入れたら、今度はピラミッドを作る。
ピラミッドは4個あるけど、みんなでいっしょに作る。今度は「どのピラミッドに石を置くか」を選ぶことになる。
各ピラミッドで、各段で何個石を置いているかによって得点が入る。1位に何点、2位に何点というのが、各段に書いてある。
もちろん、だいたいは上の段ほど得点が高いし、下の段が埋まってからでないと上の段に積めない。
石は置けるんだけど、置いちゃうと踏み台にされる……というおなじみのジレンマがある。
特殊効果の中に「一度に2個置く」なんてのがあったりもする。
これ、資材獲得とピラミッド建設は別のゲームといってもいいと思う。
もちろん関係ないわけでもないが、やってることはぜんぜん違う。「一粒で二度おいしい」みたいな?
もっとも、リソース獲得にオークションを使う建築ゲームなどはけっこうあるわけだが。そこを、独立したゲームといいたくなるところまで膨れ上がらせてしまったのが、このゲームだ。
そしてそれがおもしろい。
それほど有名なゲームではないようだが、やった人の評価は高い。
まあ、そういうものに対する評価は話半分に聞いたほうがいいけど。「知られざる○○!」という評価では、点数高くなるに決まってるから。
もちろんこの記事だってそう(笑)。
たとえばの話。
同年のアッティカ、アメンラー、コロレットなどと比べて、このゲームが特に優れているかといえば、そんなことはない。やっぱり有名ゲームはすごい。
冷静な見方でいえば、そういうものだろう。
特殊能力のルールはもう少し整理できた可能性があるとか。まったく違う2フェイズがあるというのは、やはりゲームとしてまとまっていないといういいかたもできる。
でも、じゃあおもしろくないかといえば、決してそうではない。おもしろい。
個人的な好み度でいえばけっこう上位である。
……それにしても、こんなタイトルぐぐれないよ。いまどきカタカナ2文字ではさすがに厳しい。北島マヤとか出てくるに決まってるじゃないか。
このゲームについては、いろんな人がいろんなことをいう。
「横から口出されるからドミニオンは好きじゃない」という人も、いるんじゃないかと心配してしまうくらい。
でも、そういう議論できるところがおもしろいゲームでもあるわけで。一方的に黙れということもできないかなあという気もする。
(でも他人のプレイに口を出すのはよくないです)
情報は必ず共有されるし、技術は進歩するほうにしか進まない。
だからこういうのは、本当のところを判明させてしまうのがいいんじゃないかと思う。
その一環みたいな。
というわけで、カードの強さを計測してみた。
とある知人の人が、シミュレーション用のプログラムを作ってくれまして(非公開)、それを使っての計測です。
……本作る前にやれよという話もある(汗)。
計測したのは、↓の条件の場合に属州⑥を4枚買うまでにかかるターン数。10000ゲーム試行して平均を出します。
もちろん2枚買ったほうがいいカードもあるけど、今回は1枚としました。1枚目は絶対買ったほうがいいとわかっているけど、2枚目をいつ買うのが適切かというのはわからないから。
プログラムに組み込むことはできるけど(じっさい他ではやってます)、わたしが作った判定ロジックが正しいとは限らないし。
というわけで結果発表~。
アクションカード
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ターン数 ± 誤差(δ)
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備考
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(アクションなし)
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16.81 ± 1.80
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議事堂
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14.55 ± 1.68
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公使
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14.59 ± 1.74
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鍛冶屋
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14.94 ± 1.76
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書庫
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15.40 ± 1.68
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宰相
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16.16 ± 2.10
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つねに効果を使う
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金貸し
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16.20 ± 1.80
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魔女
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16.29 ± 1.77
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鉱山
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16.40 ± 1.64
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銅貨→銀貨を優先
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役人
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17.15 ± 1.81
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小数点以下2桁の数字なんてほとんど意味ないですが、あえて載せてます。
プレイヤーの感覚というのはけっこう繊細なので、それくらいのところまで漠然と感じてるんじゃないかと思ったから。
礼拝堂や改築など、プレイングに左右されるものは検証してません。研究所や村などのように、1枚だけ投入しても無意味というカードも除外しています。
民兵や木こりも、アクションなしと変わらないので省略。
また、泥棒など他プレイヤーの存在が必要なカードも除外。
ただし公使は、今回の場合、左どなりのプレイヤーの選択に明らかな解答がある(金貨、銀貨、銅貨を捨てる)ため載せました。
冒険者は……金貨とどちらを優先するか判定するロジック作るのがめんどくさくなったのでパス。
同じ理由で2コストもパス(ぉ
議事堂が1位ですが、これはあたりまえですね。今回はソリティアの評価で、他人に引かせる分を無視してるから。強い代わりにリスクがあるカード。
そして、ほぼ同位置に公使がいます。プロモカードのくせに強いですねー。
あとはもちろん鍛冶屋。
ちなみに2枚にした場合は、議事堂と鍛冶屋が速くなり公使が遅くなります。
個人的には、宰相意外とがんばったなとか。
この結果はあくまで、アクションカード1枚の場合限定です。
たとえば金貸しや鉱山は、他のアクションを追加するとだいぶ速くなったりします。村や祝祭を使ったデッキも、ちゃんと作れば、こいつらと戦える強さになります。
(そういう複雑な作戦もプログラムは作ってますが、たぶん人間のほうが強いです。速さの比較という意味ではフェアじゃない気がするので、同列に比較はしません)
それに、呪いカードも民兵もいない。実戦ではもちろん、このとおりにいかないです。
でも、困ったらお金集めるというのは間違ってないですねえ。他のいろんな作戦と比べても、議事堂の14.6ターンというのは、そうとうに速いです。
ちょっと楽しくなってきた。
さらにくわしい話は、ゲームマーケットでコピー誌かなにかにして配布するかも。
全40ページです。値段はこれから考えます。
小説とか書くよりずっと手間がかかってるんですが、こうしてみると薄いな-という気も。
それにしても、アナログゲームの攻略本ってないんですねぇ。なにやら浮いたブースになりそうな気もしてますねー。
kamata -2009/05/16 20:38
表紙がかっこええ~。
そして私と東方VSが隣に行くときっともっと浮く(笑)。
今海外のフォーラムにバトスピ記事書いてるのでちょっと手放せませんが、週明けには東方VSの参加紹介とプレビューカード記事をブログに書きます。
てらしま -2009/05/17 01:21
ここでいい忘れてたけど、表紙は英-Ran氏にお願いしました。
IT技術屋がよく読む、オライリー本というのが元ネタだったらしい。言及していただいたブログを読んではじめて気づいたわけですが(笑)
N.K. -2009/09/04 02:11
こんばんは。初めまして。
ドミニオン・レシピ、非常に興味あります。
現在、購入する方法は、何かありますか?
てらしま -2009/09/05 10:42
ありがとうございます。もしよろしければお送りします。
てらしま(ter@h8.dion.ne.jp)宛にメールをください。
メールには住所とお名前、ご注文冊数を書いてください。返信で振込先口座と送料込みの金額をお知らせします。
一冊400円×冊数+送料 になります。
N.K. -2009/09/05 18:16
ご回答、ありがとうございます。
メールをお送りしました。もし、届いていない場合は、ご連絡ください。
「インテリ」というパーティゲームを、以前やったことがある。
って、ふと思い出したのでルールを調べたんだけど、語が一般的すぎて検索できないorz
ようやくそれらしきものを見つけたのが↓
ボードゲームプレイヤーはこういうのを見て、ルールの問題点を指摘できなければいけない。いやそんなことはないけど(笑)。
問題のひとつは「合議で得点を決める」というところ。みんなが出したネタを確認するのは楽しいだろうが、これでは声の大きい人が勝ってしまう。また、コミュニティ外の人や、あまり好かれていない人の得点はどうしても低くなる。
たとえばアップル・トゥ・アップルは、回答者を秘匿し親が正解を選ぶとすることで、この問題を解決している。てきとうに見えるパーティーゲームであっても、やっぱりちゃんと作られたゲームは違うんである。
もうひとつが「かぶったら減点」というルールだ。
かぶったらダメということは、みんなと違う回答をしなければいけない。しかし、それは簡単なのだ。世の中に単語なんか無数にある。
サッカーファンにとって「スポーツ選手の名前」を挙げることは簡単だ。サッカーだけでも五十音全部いけるだろう。しかしそうでない人にとっては、まったく知らない世界の話である。
だから、できるだけみんなが知っている名前を挙げようという余計な気遣いが必要になってしまう。正答であっても、みんなが知らなければ盛り上がれない。
そもそもパーティゲームである以上、盛り上がりに水を差すのはタブーだ。誰も知らない回答は遊びのルール(暗黙の了解も含む)を破る行為であり、「遊び破り」(ホイジンガ『ホモ・ルーデンス』)にあたる行為になってしまう。
ホイジンガは70年前にこの言葉を使ったが、最近ではこれは、別の言葉でいいあらわされることが多い。「空気嫁」と。
まあ、そういう回答がありうる問題を出すほうも悪いんだが。
遊び破りが発生しやすい、あるいは、メンバーによっては、遊び破りの発生を回避できないルールといえる。
(たとえば芸能人や流行歌を知らないアニメオタクは、他のメンバーと語彙がまったくかぶっていないかもしれない)
その意味では、メンバーを選ばなければ、ゲーム以前に遊びとして成立できない。
パーティゲームが悪いというわけではなく。むしろ、ボードゲームプレイヤーはパーティゲームのこともよく知っている。
いろんなゲームを経験したプレイヤーならすぐに、もっといいルールを思いつくことができるだろう。
「得点を合議で決める」はやめたほうがいい。あるいは「かぶったらダメ」ではなく、逆に「かぶったら得点」にすべきかもしれない。「回答者を秘匿」とするのもいい方法だろう。
そういうゲームやったことある気もする。
ボードゲームプレイヤーの経験は、こういうところに活かせるんじゃないか。いややっぱりそんなことはないけどさ。
(気心の知れたメンバーでやれば、インテリだって楽しめると思います)
T-ruth -2009/05/15 03:27
『大東京トイボックス』のネタのひとつは、これかー。発想力テストの形で使われて、ゲームとしてではなかったけど。
「回答者を秘匿」すると、ゲームとしては「人狼」な感じになりそうな。どの回答が誰の回答か(勝っている人の回答かどうか)を、合議の発言から類推して点を下げるとか。
「人狼」を誤解しているかもしらんけど。
てらしま -2009/05/15 10:46
問題は、だいたい筆跡で誰かわかるところですがw
話し合いがある以上、空気読んでそのメンバーが楽しめる回答をする必要があるわけで、そういう意味では発想力テストにはなる。か?
むしろ空気読むテストになるような気もするけどw
これけっこう好き。シャハトである。
王と枢機卿のように、手札をプレイしてその色の地形に商館を建てていく。マップには道が描かれていて、商館はその道でつながるように建てる。
マップの中央には、でかい黄金都市がある。
交易ルートを延ばしていって、黄金都市に商館を建てるのが目的だ。
「カードをプレイ」して「建物を建てる」というこのスタイル、この人はずいぶん使いたおしている。かなり枯れた(完成した)技術だ。
このゲームも、なんだか安心して遊べる。過去の作品を知っているせいかもしれないが、ルール読んだだけでもうおもしろいだろうなと思った。
同じ色のカードを2枚プレイすると、その色の地形に商館が建つ。
また、同じ色2枚の組みあわせは別の色1枚分として扱えるという「ジョーカールール」がある。過去のゲームにもあったものだが、これがいい。
このカードは、入札で手に入れる。
入札といったって、簡単なものだ。
ラウンド開始時に、2枚ずつの組みあわせが人数分作られる。スタートプレイヤーから順番に、自分がほしい組みあわせの上に手(手のかたちのタイル)をおく。
他の人が手を置いているカードがほしいのなら、お金を払えば追い出せる。
そうやって、全員が1ラウンドに2枚、手札を手に入れる。
とここまでが、基本的なルールだ。
カードを手に入れる方法に工夫がこらされているものの、大筋は、じつに見たことあるシステムなのである。
しかし、コンポーネントにはもっといろんなものが入っているんである。商品カードとか、鍵とか。そもそも、入札につかうお金はどこから手に入るのか。
それらはみんな、ボードに書いてある。
ボード上の、商館を建てることのできる場所(村)に、アイコンが書かれている。そこに商館を建てたら、示されているものがもらえる。
アイコンにはなにも複雑なことはない。ただ単に、絵に示されているとおりのものをもらえるというだけだ。お金がある村とか、商品カードがある村とか。
いろんなものが入っているわりに、非常にわかりやすい。インストもしやすい。
「いろんな要素があるけどプレイしやすい」というのは、近年流行の、ワーカープレイスメントと呼ばれるシステムの特徴である。
しかし、ワーカープレイスメントにしかできないというわけではない。
むしろ、ワーカープレイスメントが必要なゲームというのは、処理が複雑すぎるためにああいう方法で整理しなければならなかったのだといえる。
システムをちゃんと整理してあれば、あえて使う必要はない。
なにかそういう、気概みたいなものを感じた。
得点手段はけっこういろいろ用意されている。商品、川沿いの商館、黄金都市外苑、黄金都市中心部、と、それぞれが特徴的な得点獲得ロジックになっている。
そして、そういうものの選択はすべて、手札と商館の配置だけで決まるのである。
カードのめくれかたなど、乱数はかなりある。これはむしろいい。個人的な好みでは、これくらいの乱数はあったほうがいい。
村から村につながる道のリンクっぷりが絶妙で、インタラクションは強いが強すぎない。
いろいろなものが、わたしの好みどおりに配置されたゲームという気がしている。
難点はやはり、地味なところかなあ。
黄金都市というテーマも目新しくないし、システムも見たことある。
枯れた技術を使っているから安心できるけど、でも世間には、新人賞を獲った小説ばかり読む種類の読書家もいる。新人賞作品はハズレのほうが圧倒的に多いけど、新しいものだから飽きないんだよな。
そのいっぽうで、宮部みゆきを読み続けてる人もいる。当然、どちらが正しいわけでもない。
まあ往々にして、話題になるのは新人賞作品のほうだけど。