ワーカープレイスメントついてはいろいろなゲームが出てるけど、じつのところ、それほどバリエーションがあるわけではない。ひとつの完成型というべきものがすでに登場していて、それを超えることができないからだ。
もちろん、ストーンエイジのことである。
いや、ストーンエイジがパイオニアではないし、唯一でもないだろう。ストーンエイジが気に入らなければ、アグリコラでもなんでもいい。
ああしたゲームを構成する要素を整理すると、どれも大差ないものになる。ストーンエイジが一番シンプルに、わかりやすくまとめられているから、ひきあいに出しやすいゲームだということだ。
デザイナーたちの苦悩が伝わってくるようだ。と思う。
ワーカープレイスメントに必要な要素を切り詰めていき、最低限どの要素を残せばゲームとして成立するか、そこにどれだけの要素を足せば「おもしろい」ゲームになるか、そうしたことを、考えれば考えるほどストーンエイジに近づいてしまう。のではないかと思う。
わたし自身もゲーム作ってみようかなとか、少し考えたり考えなかったりしていて。だから感じることなんだけど。まあわたしのような素人とプロは全然違うだろうとはいえ。
しかし、なにしろワーカープレスメントはおもしろい。そりゃあ作りたいだろう。
流行はまだ去っておらず、今年のエッセンでもいくつも登場したみたいだ。
エジツィアもそのひとつ。
エジツィアというのは、エジプトのことらしい。ナイル川の上流から船で、人足や資源を運び、畑を作ったりピラミッドを建造したりする。
最初に書いたとおり、ワーカープレイスメントだ。しかし、ふつうのワーカープレイスメントではない。
この「ナイル川の上流から」というのがポイントだ。上流から流れてくる船でワーカーを配置するから、つまり、ワーカーを配置する順番が決まっているんである。
ワーカープレイスメントがストーンエイジから脱却するために、とれる手段がもうこれしかない、という深読みをしている。
要素の種類を変えても、けっきょく既存のゲームと違うゲームにはならない。ワーカープレイスメントはそういう意味で、非常に「強い」システムだ。
差別化がはかれない。だからもう、ワーカーの配置方法自体に特徴を持たせるしかなかった。のではないかという気がする。
エジツィアのワーカープレイスメントは、上流から順に配置しなければならない。最後に置いたマスより下流にはどこにでも置けるけど、上流には配置できない。
これがとてもよくできている。おもしろい。
ワーカーは各プレイヤーに8個ずつ。これは増えも減りもしない。ストーンエイジやアグリコラのように「ワーカーを増やす」手段がないんである。
その代わり、はじめから持っている8個のワーカーはまず使いきれない。つねに一番近いマスを使っていれば使いきれるだろうが、それでは勝てないわけで。たいていは、何マスか飛ばして、欲しいマスを選んでいくことになる。そうすると、使いきる前に河口に到達してしまう。
ワーカーを使いきらないワーカープレイスメント。あるいは「配置する数を減らす代わりに自由度を得る」ことができるシステムということになるだろう。
このシステム、ほんとにすばらしいと思う。
これ、やっていることをよく分析すると、「アクションポイント制」に近いものととることもできる。
上流から河口までのマスの数が、1ラウンドに使えるアクションポイントだと思えばいい。
すぐ下のマスに配置することは、アクションポイントを1消費したと考えることができる。1マス飛ばして配置するなら、アクションポイント消費は2だ。
アクションポイントを多く消費するほど選択の自由度が上がるが、その代わり、実行できるアクションの回数は減る。というわけだ。
アクションポイント制ももちろん、おもしろいシステムなのだ。
あるいは、「マルチ・ダッチ・オークション」(※→) 的な部分もある。
エジツィアのワーカープレイスメントは、ワーカープレイスメントにそういうシステムをシームレスに組み合わせた、ハイブリッドととることもできるわけで。
しかも、じつにムダのないエレガントな方法だ。
と、個人的にはすばらしいと思っているのだけど。
難点は、ルールが複雑なことと言語依存が強いこと。カードを多用するから、翻訳ルールと首ったけにならなければプレイできない。
また、ひとつひとつのマスについてけっこう細かいルールがあったりもする。わたしがやったときも、ルールの解釈上の問題が何点か挙がっていた。
そのあたりは若干めんどうかもしれない。日本人が初プレイするときは、3時間くらいは見ておいたほうがいいと思う。
しかし、重いからといって飽きてしまうことはない。よくできたワーカープレイスメントはいつもそうだ。本当におもしろいゲームは、重くたってもう一度やりたくなる。