遊星ゲームズ
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エジツィア
 ボードゲーム

2009/11/24 23:39

 ワーカープレイスメントついてはいろいろなゲームが出てるけど、じつのところ、それほどバリエーションがあるわけではない。ひとつの完成型というべきものがすでに登場していて、それを超えることができないからだ。
 もちろん、ストーンエイジのことである。

 いや、ストーンエイジがパイオニアではないし、唯一でもないだろう。ストーンエイジが気に入らなければ、アグリコラでもなんでもいい。
 ああしたゲームを構成する要素を整理すると、どれも大差ないものになる。ストーンエイジが一番シンプルに、わかりやすくまとめられているから、ひきあいに出しやすいゲームだということだ。

 デザイナーたちの苦悩が伝わってくるようだ。と思う。
 ワーカープレイスメントに必要な要素を切り詰めていき、最低限どの要素を残せばゲームとして成立するか、そこにどれだけの要素を足せば「おもしろい」ゲームになるか、そうしたことを、考えれば考えるほどストーンエイジに近づいてしまう。のではないかと思う。
 わたし自身もゲーム作ってみようかなとか、少し考えたり考えなかったりしていて。だから感じることなんだけど。まあわたしのような素人とプロは全然違うだろうとはいえ。
 しかし、なにしろワーカープレスメントはおもしろい。そりゃあ作りたいだろう。
 流行はまだ去っておらず、今年のエッセンでもいくつも登場したみたいだ。
 エジツィアもそのひとつ。

エジツィア エジツィアというのは、エジプトのことらしい。ナイル川の上流から船で、人足や資源を運び、畑を作ったりピラミッドを建造したりする。
 最初に書いたとおり、ワーカープレイスメントだ。しかし、ふつうのワーカープレイスメントではない。
 この「ナイル川の上流から」というのがポイントだ。上流から流れてくる船でワーカーを配置するから、つまり、ワーカーを配置する順番が決まっているんである。

 ワーカープレイスメントがストーンエイジから脱却するために、とれる手段がもうこれしかない、という深読みをしている。
 要素の種類を変えても、けっきょく既存のゲームと違うゲームにはならない。ワーカープレイスメントはそういう意味で、非常に「強い」システムだ。
 差別化がはかれない。だからもう、ワーカーの配置方法自体に特徴を持たせるしかなかった。のではないかという気がする。

 エジツィアのワーカープレイスメントは、上流から順に配置しなければならない。最後に置いたマスより下流にはどこにでも置けるけど、上流には配置できない。
 これがとてもよくできている。おもしろい。
 ワーカーは各プレイヤーに8個ずつ。これは増えも減りもしない。ストーンエイジやアグリコラのように「ワーカーを増やす」手段がないんである。
 その代わり、はじめから持っている8個のワーカーはまず使いきれない。つねに一番近いマスを使っていれば使いきれるだろうが、それでは勝てないわけで。たいていは、何マスか飛ばして、欲しいマスを選んでいくことになる。そうすると、使いきる前に河口に到達してしまう。
 ワーカーを使いきらないワーカープレイスメント。あるいは「配置する数を減らす代わりに自由度を得る」ことができるシステムということになるだろう。
 このシステム、ほんとにすばらしいと思う。

 これ、やっていることをよく分析すると、「アクションポイント制」に近いものととることもできる。
 上流から河口までのマスの数が、1ラウンドに使えるアクションポイントだと思えばいい。
 すぐ下のマスに配置することは、アクションポイントを1消費したと考えることができる。1マス飛ばして配置するなら、アクションポイント消費は2だ。
 アクションポイントを多く消費するほど選択の自由度が上がるが、その代わり、実行できるアクションの回数は減る。というわけだ。
 アクションポイント制ももちろん、おもしろいシステムなのだ。

※以前このサイトで勝手につかった用語。
to.jpgオークションの代わりのシステム

 あるいは、「マルチ・ダッチ・オークション」(※→) 的な部分もある。

 エジツィアのワーカープレイスメントは、ワーカープレイスメントにそういうシステムをシームレスに組み合わせた、ハイブリッドととることもできるわけで。
 しかも、じつにムダのないエレガントな方法だ。

 と、個人的にはすばらしいと思っているのだけど。
 難点は、ルールが複雑なことと言語依存が強いこと。カードを多用するから、翻訳ルールと首ったけにならなければプレイできない。
 また、ひとつひとつのマスについてけっこう細かいルールがあったりもする。わたしがやったときも、ルールの解釈上の問題が何点か挙がっていた。
 そのあたりは若干めんどうかもしれない。日本人が初プレイするときは、3時間くらいは見ておいたほうがいいと思う。
 しかし、重いからといって飽きてしまうことはない。よくできたワーカープレイスメントはいつもそうだ。本当におもしろいゲームは、重くたってもう一度やりたくなる。

cut4.jpg

エジツィアを