神の使命は、定命の者たちとその文明を正しく導くことです。とはいえ、神もボランティアではありません。
あなたは天上の神の一柱となり、地上の文明に投資します。ゲームには4つの文明が登場します。文明の株券を購入し、文明が成長したら売ってお金を稼ぎましょう。文明を適切に導くことができれば、それはあなたの利益につながるのです。 |
『ワールドモンガー』は、株を売買する投資のゲームです。ただし、投資対象は文明、プレイヤーであるあなたは天上の神です。
各文明はそれぞれの山札(デッキ)を持っています。毎ラウンド、山札から5枚のカードがめくられ、それによりそのラウンドの文明の株価が決まります。プレイヤーはそれを見て、株券を買ったり売ったりします。
文明の山札には、さまざまな効果を持つカードが追加されていきます。それにより、株価は激しく上下します。タイミングを見計らい、安く買い高く売りましょう。あなたの神としての才覚が試されます。
下記からダウンロードできます(カードと同じサイズ)。
※マニュアルにわかりにくい箇所があったため、補足ページを追加しています。必ずこちらも合わせて読んでください。
ゲームマーケット2014秋で販売します。
下記から当日のお取り置き予約を受け付けています。
規定数に達したため、予約は締め切りました。ありがとうございました。
随時更新します。
なんとなくサイトの名前変えようと思ってあれしたけど、ゲームマーケット前にすることじゃなかったような気もしますね。
Magicmaker っていう、Steamのインディーゲームを最近やってて。これが大変おもしろいんだけど、別に話題作でもなんでもなく、むしろぜんぜんやってる人いない。それはまあいいんだけど。
いろんな効果を組み合わせて自分だけの魔法を作ろう! っていうゲーム。
たとえば壁に反射するとか、3方向に撃つとか、そういうのを3~4個組み合わせるとオリジナルの魔法ができあがる。
写真は、6方向に撃つやつと途中で5つに分かれるやつを組み合わせた状態。6×5は30。
これを光線にしてみるとこんな感じ。
あるいは、重力に従うようにして壁に反射させると、こうなる。
こういう調子で、好きなように魔法を作れる。
まあありそうなゲームだしじっさいいくつもあるので、このゲームが特別すごいというわけでもなかろうけど。ただ難易度とか自由度とか長さとか、そういうのが全体的に、自分の好みに合っていたのだろう。やっていてとても楽しい。
創発という言葉があって。ゲームの話ではよく出てくる言葉なんだけど、Wikipedia から引用すると
創発(そうはつ、英語:emergence)とは、部分の性質の単純な総和にとどまらない性質が、全体として現れることである。局所的な複数の相互作用が複雑に組織化することで、個別の要素の振る舞いからは予測できないようなシステムが構成される。
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ということらしい。つまり、言葉だけ有名な「バタフライ効果」とかのカオス理論の話だ。
単純なシステムから複雑な結果が生まれる、このことは、よいゲームの特徴として語られることが多かったりする。
便利な言葉なので、ビジネスとか芸術とかあたりの意識高い人たちが少しずれた使い方してたりしていて、だんだんバズワードに見えてくるのだけど。でもゲームの話ではとても大事なので、誤解を恐れず使うしかない。
あいまいになっちゃうことには理由があって。定義はあっても現象の特定が難しいのだ。たとえばゲームでいえば、ストーリーの分岐を選ぶだけのアドベンチャーゲームはどう考えても創発しないだろう。しかし、その選択で100個ある内部パラメータが変動するとしたらどうなのか。けっきょく結果は選択肢の数しかないのだから、プレイヤーから見たらなにも変わらないけど、創発しているといえないこともないのではないか。あるいは、文字で語られるストーリーがプレイヤーの内面になにか影響を与えるとしたら、それこそ選択肢などなくても創発があるのだと言い張ることもできる。じっさいそういう無理目の議論が、ゲーム界隈ではしょっちゅう語られていて、混乱を招いているところはあるよなあと思うけど。
というややこしい話はあるとした上で。 Magicmaker は創発のゲームだ。わたしが好きなのもまさにそこ。
組み合わせによってはとんでもなく強い魔法ができたりする。ボスも瞬殺できてしまったり、ハメパターンみたいなことも発生したりする。バグに見える振る舞いもけっこうある。
作り手がコントロールしきれていないと思う。でもそれでいい。魔法でなにができてしまってもかまわないと、覚悟してしまったゲームなのだ。インディーでしかありえない作り。そこが楽しい。
自分の場合、ゲームをおもしろいと感じるとき、創発があることは重要な要素になっている。これはいわゆる加点法の評価だ。
でもこれ、いわゆる「バランスが悪い」といわれたらそのとおりというしかないだろう。こちらは減点法の評価。
創発が強すぎるとバランスは崩れる。創発するということは、ゲームデザイナーが意図しない展開も起こりうるということで。「バランス」を求めるならないほうがいいという話になりかねない。欠点を埋めていく作り方では創発をスポイルしていくことになる。
作り手によりしっかりコントロールされた展開を望むプレイヤーも、もちろん多い。
この二律背反って、ゲームにはつねにつきまとっていて。たぶん、ゲーム関連のめんどくさい話の半分くらいはこれじゃないかなあ。みたいなことを、なんか考えた。
新作『ワールドモンガー』の入稿が済みまして、どうやら予定どおりゲームマーケット2014秋で販売することができそうです。これからまだ箱詰めとかやらなきゃいけないけど。
今回は、その『ワールドモンガー』のデザイナーズノートをなんか書いてしまったので掲載しとこうと思います。
『ワールドモンガー』の原型はかなり以前からあったのだけど、現在のかたちになったのは2年と少し前のことだったと思う。きっかけとなるゲームがあった。『メルクリウス』だ。
なんかこう、この文章がプレゼンテーションのつもりならもっと有名なゲームを出せよという気もするけど。本当なんだからしかたない。
『メルクリウス』は、株を売買するゲームだ。本当に素直にそういうゲームで、ゲームボードにはそっけない株価チャートが、どーんと大きく印刷されている。
ただ少しだけ違うのは、数ラウンド後の株価が予想できるところだ。
各プレイヤーは毎ターン、手札から株価を上下させる「価格変動カード」を出す。そうすると株価が変わる。ここまではありそうなシステムだし見たこともあるだろうけど、もちろんこれだけではない。メルクリウスならではの、独特なアレンジがある。それは、プレイした価格変動カードがその後3ターンの間持続するというところだ。
それが、プレイヤーの前に、カードを3枚置くことができる個人ボードがある。この上にカードを置く。カードは左端に追加し、すでに置かれているカードは右にずらす。右端のカードは押し出されて捨てられる。
例えば「エルクハイゼン社の株価を1上げる」というカードがある。このカードを1度プレイすると、3ラウンドの間この効果が持続し、エルクハイゼン社の株価はこの後3回上がる。
数ラウンド後の状況がある程度見えている状態で、株の売買をするということだ。この将来を予想できるというところが、とてもいい。
じっさいの市場でも、株価の変動というのはただのランダムではなく、トレーダーたちの意志により上下するものだろう。それを模倣した株式ゲームは、ただのランダムで株価を動かしてはならない。と思う。
もちろん完全に予想できてはいけないが、まったく予想できない乱数でもいけない。適切なカオス系でなければならない。そうでなければおもしろくないからだ。
これはゲームだからというだけではなく。そもそも現実の株の取引だって、まずおもしろかったからこそ世界中に浸透したシステムだったのではないかと、個人的には思う。
株価の増減を、どのような装置で実現するか。この装置の作りが、株ゲームの見せ場であり醍醐味だ。
メルクリウスの株価は、プレイヤーの行動で上下する。そして3ラウンド後までの変動が見えている。予想できるのだ。しかし他のプレイヤーの手札の状況やそれを元にした思惑はわからない。
予測できる部分とできない部分が、ひとつのメカニクスの中にきちんとおさまっている。そこに感心した。これすごくいいなと。思ったのだ。
将来のことがいくらか読める乱数と、プレイヤーの意志。これは、自分がゲームに求めるものの中で上位に位置する項目だ。
このことを美しく表現したゲームメカニクスのひとつが、デッキ。このタイトルは出さないわけにいかない。『ドミニオン』だ。
個人的に。ゲームデザイナーよりもユーザとしての話だけど、デッキゲームにはこだわりにこだわってきた。ドミニオンとはなんだったのか、デッキがゲームにもたらしたものはなんだったのか、そんなことを、何年もずっと考えてきた。これはいまも考えている。
そうして、いま自分が持っている理解のひとつがこれ。デッキとは、プレイヤーの意思を込めることができる予測可能な乱数装置である。
つまり、先ほど書いた『メルクリウス』の価値変動カードと同じ機能を持っている。といえる。メカニクスとしてはまったく違うものだけど、ゲームにもたらすものは同じなのだ。
ゲームのメカニクスは、ゲームに対しなにかの機能を持っている。そしてメカニクスは複数が絡み合いひとつのゲームを構成する。ゲームに必要な機能にはいくつか決まったものがあり、いくつかのメカニクスの機能でそれらを網羅すれば、ゲームが完成する。
そんな話は『テーブルゲームデザインの本』にも書いたかもしれない。
別に変なことはいっていない。あたりまえのことともいえるだろう。しかしこの考え方は、重要な知見をいくつか与えてくれる。そのうちのひとつは「同じ機能を持つメカニクスは可換である」ということだ。
メルクリウスの価値変動がドミニオンのデッキと同じ機能を持つのであれば、デッキを使った株ゲームを作ることができるということになる。
ワールドモンガーのゲームデザインはそうして出来上がった。
こうして言葉にすればすぐできたように見えるけど、もちろんそんなことはなく……。いろいろと考えては作りなおし、多数の試作品をボツにし、ある日ふと思いついたというのがじっさいのところなのだけど。
といっても、メルクリウスとは株ゲーだという一点しか似ていないし、デッキゲームを作ったという感覚もなかったりする。
ところでデッキ+株ゲームといえば、もっと近い作品がある。メルクリウスよりも前のタイトルになるのだが『暗黒の金曜日』だ。
作者のフリードマン・フリーゼは、世界で一番、デッキゲームの呪いを受けたゲームデザイナーだと思う。『ビール侯爵』『ラクラク大統領になる方法』『ロビンソン漂流記』などなど、デッキゲームを再解釈したタイトルが多数ある。そればっかり作っていたといってもいいんじゃないか。
暗黒の金曜日にデッキは登場しないのだが、まったく同じ役割を持つギミックがある。巾着袋だ。このゲームでは、株を買うと袋の中にコマが投入される。株を売ると、袋からコマが減る。毎ラウンド、袋から決められた数のコマを取り出し、出てきた色の株価が上がる。株が買われるほどその株の価値が上がり、売られるほど下がる、株価の動きをそうして表している。これ、かたちが違うだけで、機能はデッキそのものだろう。
わたしは暗黒の金曜日も好きだ。今回は直接意識したわけではないのだが、影響を受けていないはずがない。頭の中の回路のどこかにこのゲームがあったのは間違いない。
他にもたぶんある。『アクワイア』の、途中で資金がショートするあのバランスとか。『1830』の、プレイヤーは株主だが社長にもなり、その行動で株価が上下する感じとか。『スモールワールド』/『ヴィンチ』/『ヒストリーオブザワールド』の、超越者の視点で地上を見下ろすあの感覚などもたぶん意識にあっただろう。
ワールドモンガーは、株ゲームでありデッキゲームだ。この組み合わせは非常によくかみ合った。美しいゲームシステムができたと思う。
次の問題は、テーマ設定だ。
さてしかし、これは難題だぞ。と、最初は思った。でも最初だけだった。じっさいには苦労しなかったのだ。
テーマを考えるにあたり、まず最も重要と考えたのは、投資対象である各会社のキャラクター性だ。各会社の株券はプレイヤーと直接関わるトークンであり、これがはっきりしたものでないとゲーム全体の印象がぼやけてしまう。と考えた。
株ゲーは地味な印象になりがちで、おもしろくても卓がたちづらいという欠点がある。株を買ってもそのうち売ってしまうのだから、つまりそれは自分のものではない。そのままでは、プレイヤーが感情移入する焦点がない。例えば自分の箱庭を成長させていくようなタイプのゲームと比べ、そういう点で不利だといえる。
ゲームのシステムやバランスの善し悪しやなどといった論理的な価値基準とは別の話として。こうしたものも間違いなく、おもしろさの要素のひとつだ。
最近のボードゲームシーンでは特に。いまは、ものすごくたくさんのゲームがある。少し前ならヘビーローテーションされていただろうすばらしいゲームが、1回遊ばれただけで積まれている状態だ。
その中であえてこれを遊ぼうというモチベーションを持ってもらうためには、ゲームの完成度だけでは不充分だ。いや、あえていえば、完成度よりも重要ななにかが他にある。寂しいといえば寂しいのだけど、じつはずっと昔からそうだったし、ゲームに限らずどんなメディアでも同じだ。
と、こう書くといやらしい話のようだけど。じっさいの話、単純に、キャラクター性があったほうが楽しいし遊びやすいという話だ。
株券に名前があれば「○○社を買います!」ということができる。それだけで、プレイしやすさがだいぶ違う。さらに、それぞれの株に少し特徴があれば、プレイヤーが選択するための基準になる。選択肢のそれぞれに特徴があり、それが引っかかりにならないと、思考が滑ってしまう。引っかかりがありそこに名前があれば、それを他とは違うものとして認識できる。「○○社つえー」みたいな会話が、起こってほしい。
と、そういう考えのもと、各会社に名前をつけなければならないということになった。
トヨタとかホンダとか、実在の会社にすることも考えた。でもしっくりこない。このゲーム、株価の変動が非常に激しい。実在の株はこんなに激しく動かない。そんなことを考えると、実在の会社名をつけるのも適切ではない気がしてくる。
あるいは、ぜんぜん関係ないテーマにしたほうがいいのかもしれない。流行っぽくキャッチーに、アイドルとか。ファンタジー世界にしたらどうだろうとか。『キング・オブ・トーキョー』や『モンスターズ アメリカの脅威(モンスター・メナス・アメリカ)』のような、怪獣に特殊能力をつけていくゲームという案もあった。しかしどれもしっくりこないのだ
……あ、でも、最後のあたりはいま思うと悪くなさそうだな。
まああとで考えよう、カードの効果を先に作っておき、テストプレイをたのむ友人たちにアイデアを募ってみよう。そう考え、とりあえず、ただなんとなく古代文明の名前を株券に書いた。別に理由などなかった。
そうしたら、これがはまったのだ。
テーマに合わせ「神殿」「交易地」などのカードをぽんぽんと思いつく。しかも、名前と効果がセットで。このかたちになってからの試作品1号はすぐに完成した。
それでもしばらくは他のテーマも考えていたのだけど、テストプレイをくりかえすうちにだんだんと、これが一番いいような気がしてきた。もはや他のテーマではありえない。最終的には、これがいいんじゃないかという友人の一言で決定した。
古代文明に投資する天上の神々。強欲な世界商人「ワールドモンガー」の誕生だ。
見てのとおり、無理のあるストーリーだ。なんで古代文明が株券なのか。でもどこか、なんとなく説得力があるような気もする。
文明というのは、キャラクター性も非常によく出る。急速に発展したり衰退したりする動きもそれらしいし、はっきりとしたテーマがあるからこそ、このカオスさが見ていておもしろい。それを天上から見下ろす神の視点の、ボードゲームとの相性のよさもある。
「株券」という言葉も、おもしろいからそのまま残してしまった。このくだらなさでいい。
いまではもう、奇跡の配役だったかもしれないと思っている。自分が表現したかったゲームにぴたりと合うのは、このテーマしかありえない。
『ワールドモンガー』はだいたいそんな感じで作られた。さまざまな思いつきがぴたりとはまった感覚がある。自信作だ。
生産コストの高さゆえ数を作れないのが残念なのだけど、機会があればぜひ遊んでみてほしい。
『ワールドモンガー』は、ゲームマーケット2014秋で販売します。下記からお取り置き予約を受付中です。当日販売分もありますが、数が少なめのため、確実に手に入れたい場合はお早めに予約することをお薦めします。
ワールドモンガー
内容物:カード320枚
※内容物以外に、ポーカーチップなどを別途用意する必要があります。
プレイ人数:2~5人くらい(推奨3~4人)
プレイ時間:45分
発表されてたので。おなじみワンドローの『ロストレガシー』に、最後の拡張「レジェンド」が出るらしく。
今回は最後のお祭りということで、8人のゲームデザイナーによる8個のロストレガシーが入ってるそうです。いかにもレジェンドって感じでお祭りらしくて楽しそうですね。
で、このロストレガシーレジェンドに、わたし寺島も参加しているのです。ロストレガシーを1個、作ったんです。
わたしが作ったのは『ロストレガシー:宇宙の真理』です。
はるかな未来。辺境の惑星で「宇宙の真理」が発見されたという噂が銀河を駆け巡り、各国を震撼させたのでした。すぐに、宇宙の大国たちが探索をはじめました。争奪戦は激しさを増してゆき、やがて銀河じゅうを巻き込む大戦争に発展しました。プレイヤーはそんな宇宙国家のひとつとなり、宇宙の真理を捜索します。戦乱の中、他国を出し抜き宇宙の真理を手にすることができるでしょうか。
というようなストーリーはあまり書いてないと思いますが、そういうロストレガシーです。さまざまな宇宙種族が登場し、彼らの力を使って失われた遺産を捜します。
ロストレガシーって、じつは拡張セットとカードを混ぜても遊べるらしいです(←やったことない)。ですが今回は混ぜない前提ということで、かなり勝手に作らせてもらいました。
基本ルールもちょっといじっちゃったし、やりすぎかなと思ったんだけど。でも木皿儀さんがOKといっていたのでたぶんいいんだと思います。
他の方のロストレガシーも、まだ全部は見てないですが、みなさんかなり自由に作られてます。
テーマを決めた短編アンソロジーというと小説やマンガではたくさんあるけど、ボドゲではそんなに見ない気がします。こうして決まったフォーマットの中でいろんな人が作ると作家性がよく出ると、ワンドロートークで中村誠さんがおっしゃっていたことなんですが、これそのとおりで。
そういうものとして、ロストレガシーは意外と恰好のテーマなんじゃないかと、作っていて感じました。
ロストレガシーが好きな方はもちろんなんですが、そうでない方にもぜひ見てみてほしいです。