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ボードゲーム
 ボードゲーム

 ボードゲームの紹介です。もちろんドイツ製が中心。
 ゲームのデータは公式ではなく、執筆者の主観です。てらしまはけっこう考えるスタイルのようなので、特にプレイ時間は長めになっています。でもメンツによって違うわね。

to.jpgボードゲーム記事一覧

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2009/04/09 03:41

ケイラス:マグナカルタ
 ボードゲーム

2009/04/09 03:40 てらしま
ケイラス マグナカルタ
Caylus:Magna Carta
2008年
Ystari Games
William Attia
2~4人(4人)
60分
thx to play:game

 まあじつのところ、ケイラスをやってない。なのであまり語りませんが。
 ケイラスといえば、ワーカープレイスメントを世に知らしめた傑作(らしい)。それをより気軽に短時間で終わるよう作りかえたものがこれ。らしい。
 プエルトリコに対するサンファン……よりはオリジナルに近そう?

 それほどワーカープレイスメントっぽく感じないなと思う。
 まず、やることがワーカーの配置だけじゃない。ワーカーを配置する代わりに「手札を引く」なんて行動を選べる。
「建物を建築」もワーカーを使わない。ラウンドの最後に「宮殿の建設」というフェイズがあったりもする。
 真性のワーカープレイスメントなら、こうはしないだろう。建物の建設にも手札の補充にも、専用のワーカー配置ボックスを用意しようとするのではないか。

 ワーカープレイスメントの真価は、ゲーム上の選択肢をすべてワーカー配置に集約してしまったところにある。
 それにより、従来は複雑なステップ処理が必要だったさまざまなリソース変換ロジックを、簡易に組み込めるようになった。
 そこまで集約してはじめて、ワーカープレイスメントは魔法のシステムになった。
 ケイラスはやっていないけど、どうやら、マグナカルタよりは(真性の)ワーカープレイスメントっぽいようだ。
 簡易版であるはずのマグナカルタが、システムとしては洗練の逆をやったということになる。

「いくらでも建設できる」としたほうがストレスが少ない、ということかなあと思う。
 ワーカープレイスメントは、いくら資源を持っていようがワーカーの配置で行動を制限される。そこにストレスがあるのかもしれない。
 また「意志がなければ得点できない」というのもストレスの要因になっているかもしれない。
 得点をとるためのワーカー配置を、プレイヤーの選択でする必要があるのである。プレイヤーは確固たる意志を持って考えなければならない。だから長考が多くなる。

 ワーカープレイスメントが「わかりづらい」という人もいるようだ。
 憶えることは少ないようになっているシステムなのだが、たぶん、抽象化されすぎているのかもなあと思う。
 プログラマの業界で「オブジェクト指向の教育コストが高い」という話と同じだろう。理解してしまえばそれなしでいられなくなるのだが、そうでない人は何年たっても理解しない。
 いやこういうのは技術屋の悪いクセなので別のいいかたをするなら「世の中には社会科が得意な人と数学が得意な人がいる」ということだろうと思う。
 憶えることが多いほうが理解できる、抽象化されていないほうがわかりやすいという人がいても、不思議はないのかもしれないんである。

 ともあれ、ゲームを重くするのは思考時間だ。軽くしたいなら、できるだけ考えなくてすむようにすればいい。
 駆け引きを減らし、自由度を減らし、運を増やす。そうすることでゲームは軽くなる。このゲームではそれをやったというわけだ。
 その過程で、真性のワーカープレイスメントからは少し外れてしまった。ゲームを1時間以内におさめるためのデザインがこれだったのだろう。
 もちろん、どちらがいいという話ではなく。

 だから個人的な好みの話になるわけだけど。個人的には、マグナカルタじゃないほうをやろうと思った。
 とはいえこれもおもしろい。

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2009/04/02 10:27

フィット
 ボードゲーム

2009/04/02 10:27 てらしま
フィット
FITS
2009年
Ravensburger
Reiner Knizia
1~4人
30分
thx to play:game
amazon

 もうこれ、写真見ればわかると思うんだ。

FITS

 テトリスですね。
 もう見たとおりのゲームなので、あまり説明する必要もない気がするけど。
 といっても、テトリスとは違うところもある。ブロックのサイズが4じゃないとか。ブロックは上から落とす(まっすぐ滑らせる)だけで、ずらし入れや回転入れはできないとか。
「テトリス棒待ち」もやめたほうがいい。テトリス棒がない。

 写真のボードと、ブロックがみんなに配られている。
 使うブロックは決まっている。同じブロックが配られているんである。
 カードをめくって、出たカードに描かれているブロックをみんなで配置する。
 それをくりかえす。
 非常にわかりやすい。

 ボードを変えられるようになっていて、ボードは4種類(2枚の両面)入っている。
 このボードでなにが変わるかというと、得点方法が変わる。
「1」のボードは普通のテトリスに似ていて、横一列埋めるごとに1点。ゲーム終了時に隙間があると、その数だけマイナスになる。
 だが「2」から先は、「ゲーム終了時にこのマークが見えていたら3点」とか、テトリスとはだいぶ違うゲームになってくる。
 4種のボードを1回ずつやって、最後に一番得点の高い人の勝ち。

 くるブロックはわかっている(順番はわからない)から、これからどうやって積んでいくかをじっくり考えるパズルという感じになっている。
 あたりまえだが、テトリスのアクション性はない。
 プレイ人数に1人が含まれていることからもわかるとおり、インタラクションはほぼない。1~4人とあるけど、2セット買えばそのまま8人でプレイできる。ゲームはなにも変わらない。
 そういう種類のゲームだ。

 とにかくわかりやすく、インストがほとんど必要ない。数秒で終わると思う。このプレイのしやすさは特徴だ。ちょっと箱が大きいけど。
 カタンを知らない人はたくさんいるが、テトリスを知らない人はいない。見てすぐにそれとわかるから、誰に見せてもすぐに興味を持ってもらえる。
 こんなに気軽に出せるゲームはなかなかないなと思う。

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2009/03/09 01:55

スペースアラート
 ボードゲーム

2009/03/09 01:55 てらしま
スペースアラート
Space Alert
2008年
Czech Games Edition
Vladmir Chvatil
1~5人
30分
thx to play:game

 っていうかコンポーネントにCDが入ってる。なにごとだこれ。
スペースアラートCD プレイヤーは宇宙船の乗組員。ボードは宇宙船。そりゃあもちろん、エイリアンが襲ってきたりはする。
 みんなで協力して、宇宙船を無事帰還させることができれば勝利である。裏切りもない完全協力ゲームだ。
 どちらかといえばバカなゲームだけど、意外と協力ゲームの本質をよく表現できている傑作と思う。

 ゲームは「アクションラウンド」と「解決ラウンド」に分かれる。
 まずアクションラウンドで、行動を決める。決めるといっても、ここでは計画するだけ。
 各プレイヤーの前にボードがある。ここにカードを並べる。このカードは、「アラートが鳴りはじめてからの自分の行動」をあらわしている。
「右に移動」とか「エレベータで下に移動」とか。「エネルギーを補充」とか「キャノン砲を撃つ」とか。
 ゲーム終了までの12分間(ターン)の行動を、アクションラウンドで決めてしまう。ここでは計画をたてるだけで、実際の解決はいっさいしないんである。
 このアクションラウンドには、物理的にも時間制限がある。みんなであたふたと騒ぎながらやる。
 で、次に解決ラウンド。
 ここではじめて、さっき決めたアクションの結果を、順番に解決していくのである。
 少しわかりづらいのだが、このシステムが非常におもしろい。

スペースアラートボード 敵がやってくるので、それをキャノン砲で撃退すればいい。でもそれにはエネルギーが必要だ。
 敵はいろんな方向からやってくるから、それに対応するキャノン砲を撃たなければいけなかったりもする。
 乗組員はあたふたと駆けずり回ることになる。
 驚異は外敵ばかりではない。艦内に敵が侵入しただのなんだのと、まあいろんなことが起こる。
「定期的にコンピュータのメンテナンスをしなければならない」なんていうのもある。コンピュータは、放っておくとスクリーンセーバーが起動して止まってしまう。だから、ときどきボタンを押してやらなければならないとか……。
(マニュアルにこう書いてある。いろいろと余計なジョークがたくさん書かれているマニュアルだ)

スペースアラートプレイヤーボード で、CDである。
 このゲームの主役はなんといってもコレ。
 アクションラウンドがはじまったら、とりあえずCDを流す。CDがゲームスタートを宣言するので、そうしたらみんなで相談をはじめる。
 少しすると突然「敵がきた!」とアナウンスがある。そうすると、敵が登場する。
 そうしたら、全員でそれに対処できるプランを考える。
 敵は次々とやってくる。一人で全部対処するのは無理だ。誰がなにをやるのか、短い時間の中で話しあって決めなければならない。
 他にも「カードを補充しろ」とか「5秒間カードを交換できる」とか、「(無線が壊れて)会話禁止!」とかいろんなことが起こる。
 CDが1トラック終了したら、アクションラウンド終了である。
 そのとき各プレイヤーの前に並べられているカードで、解決ラウンドに入る。
 全員の行動を順番に解決していって、宇宙船が無事帰還できたかどうかを決める。
 気づいてみたら、
「あれ? あの敵誰も撃ってないじゃん!」
 とか。

 こういう協力ゲームのパターンはほぼ決まっている。
 一人ががんばっても倒せない敵を出す。とても処理しきれない情報量を盛りこむ。そうすることで、協力が必須というバランスにするのである。
 というか、そうでないと協力ゲームはなりたたない。
 つまり「処理しきれない問題」がキモだ。
 その意味で、時間制限でプレイヤーを混乱させるというのは、協力ゲームにマッチしたギミックだと思う。
 ところが、協力ゲームに時間制限を導入することは、それほど簡単じゃない。
 ボードゲームで時間制限といったら砂時計がふつうだ。しかし、協力ゲームではたぶん使えない。みんな忙しくて、砂時計を見ている暇がないだろうからだ。
 それに、なにしろ協力ゲームなのだから、砂時計のようにあいまいな方法では「ちょっとぐらいならいいよね」というインセンティブが生まれてしまう。
 そこで、CDである。
 ゲームで忙しいのは目と手だ。耳は空いているんである。
 これは意外とスマートな解決方法だ。あまり真似できるものでもないけど。
(いや、ここは日本なのだから、てきとうに声優を雇って作る手はあるか?)

 それに、やっぱり、音が鳴っていると気分が盛り上がる。
 CDから次々と驚異を報されると、いやがおうにもパニック感が出る。まさにスペースアラートという気分になれる。
 このパニック感こそ協力ゲームの醍醐味だなーと思う。

 問題はやっぱり、言語依存だ。
 なにしろCDは英語をしゃべる。しかも、SFらしくコンピュータ口調の、エフェクトがかかった声だ。
 日本人にはつらいものがある。
 とはいえいちおう、CDの各トラックがなにをしゃべっているかを書いたシートもついている。見ればなんとかなると思う。
 なんなら、インストした人がプレイに参加せず、ゲームマスターをやってもいいだろう。
 見ていても楽しめる種類のゲームだ。ゲームマスターでも退屈しないと思う。

 あと、おそらくこのゲーム、プレイヤーのパニックを前提として調整されていると思う。それがテーマなのだろうからしかたないけど。
 コミュニケーション力の高いメンバーだったり、百戦錬磨の指揮官がいたりすると、わりとクリアできてしまう気もしている。
 でも、このゲームの場合、それでもいいや楽しいからという感じだろう。

 近ごろSFゲームが熱い。

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kamata -2009/03/09 09:15
 この手の機器をゲームの補助に使う『コンピューター・ボードゲーム』の類では、CDのランダムトラック演奏というのは作成がかなり手軽な部類なのではないでしょうか。メディア(CD-R)は安いし、紙コンポーネントを印刷するより安いかもしれない。
 同人アナログゲーム作成で利用できる方法かどうか、ちょっと知人に聞いてみます。

 しかし、この種のゲームはSF者には大変な魅力がありますね。ハゲやスコッティや真田さん(超万能人間たち)と一緒にエンタープライズなどを指揮するのも面白そうですが、みんな会話を富野語縛りにするときっと楽しく悲壮感が味わえる。


てらしま -2009/03/09 12:40
 初音ミクにしゃべらせればいいか。と思いました。コンピュータ口調だから音程は固定でいいし、強いリバーブをかければ違和感なさそう。
 富野口調やヤマトのセリフは、そういうメンバーだと自然に出てきそうw


てらしま -2009/03/11 19:34
 とりあえず、GeekにあるTrek Alertが大変聞きやすいw


2009/03/04 00:58

呪いのミイラ
 ボードゲーム

2009/03/04 00:58 てらしま
呪いのミイラ
Pyramid
2008年
Ravensburger
Marcel-Andre Cassasola Merkle
2~5人
30分
thx to play:game
呪いのミイラ

 この写真は、横から撮ったものなのです。磁石で、コマがボードにくっついてるのです。
 なんだこのゲーム(笑)。

 色のついたコマが、ピラミッドにやってきた探検家たち。
 ところがピラミッドには呪いのミイラが棲んでいて。墓を荒らす者たちを追い払おうとしている。
 ちなみに、白いコマがそのミイラ。
 プレイヤーの一人がミイラを担当する。その人はボードの裏側に回る。
 このミイラ、どうやら目が腐れ落ちているらしく。ボードの裏側からは、探検家の姿が見えないんである。
 でも表側からミイラの姿は見える。

 ミイラの視界↓。
ミイラ視界

 自分しか見えません。
 これを裏側から動かすと、磁力でミイラが動くわけなのだ。

「ボードを立てる」なんていわれちまったら、もう戦略がどうとか分析がどうとか、そんな話じゃない。
 セッティングがすでに楽しいし、見せるだけで盛り上がる。
 ルールはシンプルだから、インストも手早く終わる。ゲーム時間も短い。興が冷める前に終わるところがいい。
 むしろ、これで実は高度な戦略ゲームなんですよーなんていわれるほうがいやだ。

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2009/02/28 12:44

大勝負
 ボードゲーム

2009/02/28 12:44 てらしま
大勝負
Hab & Gut
2008年
Winning Moves
Carlo A.Rossi
3~5人(?)
60分
thx to play:game
amazon

 シンプルなボードに、コマが並んでいる。見てすぐにわかる(?)株ゲームだ。
 ボードに表示されているのは、現在の株価。これが上がったり下がったりする。そしてもちろん、プレイヤーはそれを売ったり買ったりする。お金を儲けるのが目的だ。
 とりあえずコンポーネントを見れば、そこまで予想できる。このゲームの場合、この予想は正しい。とても素直な株ゲームだ。
 ただしもちろん、違うところもいくつかあるわけである。

 それは、コンポーネントの「カードホルダー」と「投資ボード」。特にこのカードホルダーの使いかたがすごい。
 カードホルダーは人数分使うのだけど、プレイヤーに配られるわけではない。プレイヤーとプレイヤーの間に置かれるのである。つまり、となりの人と共有する。
 カードホルダーにはもちろんカードが立てられるわけで、一人のプレイヤーは、右側と左側2つのカードホルダーに立てられたカードを見ることができる。
 これはすごい。たしかに、カードホルダーでなければ実現できない。
 箱を開けたときは「ちょっと豪華になんか入ってるな」くらいに思ったのだけど。そうではなかった。ゲームのために必要な小道具だったんである。

 カードホルダーに立てられているのは、株価に関するインサイダー情報。どの株がいくら上がるか、いくら下がるかの情報が書いてある。「赤+4」「青-2」とか。
大勝負 まず売買フェイズがある。全員が一度ずつ、株を売るか買うかする。
 その後、株価の変動フェイズ。ここで、全員が一度ずつ、株価を変動させる。左右のカードホルダーから1枚ずつカードをとり、プレイするんである。
 片方は額面どおりに、もう片方は額面の半分で効力を発揮し、株価が動く。
 そうやって全員が変動させながら、株を売ったり買ったりする。
 ゲーム自体は大変シンプルだ。

 左右が見えているというこのルールのせいで、となりのプレイヤーとの駆け引きがあったり協調があったりと、いろいろな要素が生まれている。
 また、たとえば4人でやるなら世界の半分の情報が見えることになる。各プレイヤーに手札を配るゲームとは違うし、すべてのカードが公開されているゲームとも違う。情報の微妙な公開具合が新鮮だ。

 さらに「投資ボード」というモノがある。
 株の売買をした後、福祉団体に株を投資することができる。この株券が、投資ボードに置かれる。
 この投資、投資してしまったのだから自分のお金にはならない。のだけれど、投資しないわけにはいかない。
 なにしろ「ゲーム終了時に、投資した株の価値がもっとも低いプレイヤーは敗北」なのである。
 このルールもおもしろい。

 ただ、ゲームの完成度としてはそれほど高くない気がした。
 テーマのシンプルさからすれば、もっと短時間で終わってほしいと思う。「全額・半額を選べる」では選択の価値があいまいすぎて、ゲーム性がぼやけてしまっている気もする。
 投資ボードに関しては「本当にこのゲームで採用する必要があったのか?」と感じてしまった。
 ネタはおもしろいが、こういう奇抜なネタをゲーム性に昇華させるには、もっとチューニングしてほしかった。
 もちろんこれでちゃんとおもしろいゲームになっているし、またやってもいいと思える。だけど、このネタにはもっと上があったんじゃないかと感じる。

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2009/02/23 22:05

Age of EmpiresⅢ
 ボードゲーム

2009/02/23 22:05 てらしま
Age of Empires III
Age of EmpiresⅢ
2008年
Tropical Games
Glenn Drover
2~5人(5人)
120分
thx to play:game
amazon

 非常にいいゲームなんだが……箱に「Ⅲ」と書いてあるのが大変よくない。
 別に、なにかの続編でもなんでもない。同名のコンピュータゲームの、ボードゲーム版なのである。Ⅲだけボードゲームになったので、ⅠもⅡもないのである。

 もとのコンピュータゲームを知っていれば「あのゲームのボードゲーム版ならやってみたい」と、思うんじゃないか(わたしはⅠしか知らないんだが)。
 このゲーム、もともとがマルチプレイヤーズゲームなのである。それも、目的も終了もないMMOなどとは違う。複数のプレイヤーが同じルールで戦い、限られた時間で一人の勝者を決める、本物のゲームだ。
 そのボードゲーム化なら、そう間違ったことにならないだろう。そういう信頼感がある。
 でも、知らない人にとってはどうだろう。「ああ、ファン用のコレクターズアイテムね」という風に、見えてしまいそうな気がする。
 しかも、いきなりⅢだし。わたしも最初は、ⅠとⅡのボード版を捜した。
 というわけで、敬遠されてしまうともったいないのだが、非常におもしろいゲームなのです。

Age of EmpiresⅢ 新大陸にやってきたヨーロッパの国々の話。探検し、入植者を送り、資源を貿易し、ときには戦争したりもする。

 ゲームとしては、最近流行のワーカープレイスメントだ。

 ワーカープレイスメント、という言葉は最近聞かれるようになった。少しだけ説明すると。
 つまり、プレイヤーに与えられたコマを順番に、アクションに配置していくというシステムだ。
 まず「配置フェイズ」がある。ここでプレイヤーは、すべての自分のコマを(順番に一つずつ)盤上のアクションマスに配置する。アクションマスには定員があり、早いもの勝ち。
 Age of EmpiresⅢでは、ワーカーの配置先は「イベントボックス」と命名されている。たとえば「入植者ドック」「主要建物」「発見」というようなイベントボックスがある。ここに、順番にワーカーコマを配置していくのである。
 次には「解決フェイズ」がある。ここでは、前のフェイズで配置したアクションを解決していく。
 プレイヤーに与えられたワーカーコマは、選択できるアクションの数。アクションの選択はそのまま戦略の選択。
 定員のあるところに順番に配置するから「どの戦略を優先するか」はプレイヤー次第となる。
 また、他プレイヤーとの駆け引きも生まれる。やりたいことがあるなら、他のプレイヤーより先に配置しなければならない。そこに、強いインタラクションがある。
 ワーカープレイスメントは、いままさにトレンドのシステムだ。とにかくつぎつぎと傑作が生み出されている。
 近ごろ話題になるボードゲームはどれも、驚くほど質が高い。かつてのプエルトリコに匹敵するレベルの傑作ゲームが、ごろごろ出てくるという印象だ。
 無視できないゲームが多すぎて、ユーザとしては大変だ。
 この一因は、ワーカープレイスメントにある。と思う。
 ワーカープレイスメントは傑作生産機だ。適度なインタラクションと戦略の多様性を自動的に実現してしまう、まさに画期的発明なのじゃないかと思う。
 たぶん、そろそろ、評価基準を大幅に辛くしなければならない時期がきている。そうしないと、星5つのゲームが多すぎて、どれを選べばいいかわからなくなってしまう。

 Age of EmpiresⅢも、ワーカープレイスメントを採用したゲームである。それも、けっこう素直に王道をいっていると思う。
 チットの数や種類からの印象よりはずっとわかりやすく、プレイしやすい。これも、ワーカープレイスメントの効用だ。
 得点戦略が複数あり、その選択肢ごとに対応するアクションがある。
 基本の得点手段は「未発見の土地を探検する」「発見済みの土地に入植者を送る」の2つ。もちろん、それらに対応するアクションがあり、そこにワーカーを配置するわけである。わかりやすい。
 また、どこか『プエルトリコ』を思わせる建物が、さまざまな特殊効果を生み出したり、やはり得点になったりする。
「建物」への依存度合いもプエルトリコっぽい。ゲーム内容は違うのだが、建物の特殊効果で生産を拡大し、その選択によって戦略が分岐する感じが、よく似ている。デザイン時に意識したのではないかとも感じる。
 じっさい、プエルトリコに近い種類のおもしろさを感じている。これはなんだか久しぶりで、うれしくなったりもする。

 加えて、「戦争」もできる。新大陸は次々に開拓されていくので、やがてフロンティアはなくなってしまう。そうなったら次に起こるのは、植民地の覇権を争う戦争なのである。
 そうして、時代が進むごとにゲームが移り変わっていくあたりは、ちゃんと歴史ゲームらしい演出として機能している。
 History of the Worldとか、昔のゲームでよくあった歴史ゲームを思わせる感覚もちゃんとあり、しかし最新技術であるワーカープレイスメントを使っているから、ずっとプレイしやすい。

 いろんな作戦をやりこみたいと思う。
 近年量産されている同系列のゲームでは、ストーンエイジ次ぐ出来! とさえ思っていたりする。
 しかし。やっぱり2時間かかるゲームだ。今時じゃあ、プレイする機会が少ないかもなあと思う。
 スピンオフ作品ということで、敬遠されてしまうかもしれないというのも心配。
 箱が大きすぎるとか、ボードが大きすぎてちゃぶ台に乗らないとか、しかも、びっくりするほど大量のチットが入っているせいであまり圧縮できないとか、現実的に問題もある。
 しかもいまは、ドミニオンがあるのだ。新しい重量級ゲームに手を出す暇は、あまりない。
 でもがんばって持ち歩くつもりだけど。

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2009/02/16 21:11

パンデミック
 ボードゲーム

2009/02/16 21:11 てらしま
パンデミック
Pandemic
2008年
Z-Man Games
Matt Leacock
2~4人
60分
thx to play:game
amazon.com

 未知の病原菌が、世界中に蔓延しようとしているんである。しかも、4種類も同時に。
 人類の滅亡を食いとめるため立ち上がった、熱き勇者たち!
 というお話。

 協力ゲームということで、ゲームの結果は「全員勝利」か「全員敗北」だけ。
 こういうゲームではよくある「裏切り」もない。
 4種類のウイルスに対するワクチンをすべて完成させたら勝利、そのほかはとにかく敗北だ。「アウトブレイク」が規定回数起きたら敗北だし、山札が尽きても敗北。
 ゲームが進行すると、病原菌はだんだん増えていく。まだまだ大丈夫と思っていても、感染はどんどん加速するようにできている。「あっ」と思ったらもうゲームオーバー、という展開になったりする。
 この感染の広がりかたが、とてもよくできている。最初は少しずつだけど、ある時点で突然「アウトブレイク!」で一気に拡大する感じがウイルスらしいし、緊迫感の演出がすばらしい。
 アウトブレイクは連鎖する。ウイルスがすごい速さで世界中に拡がっていく様は、プレイヤーとしては負けてるんだが、なんとなく快感があったりして。

 協力ゲームはいままでにも多くあったけど、このゲームの特徴はこの早さ。運が悪ければ15分ほどで負けて、終わってしまうんである。
 山札が尽きても負けだから、ゲームは必ず収束する。終わりが決まっているから、ゲームがだらだらと長引かないし「あの行動がミスだった」など反省点もわかりやすい。
 だから「もう一回やろう」ということになりやすい。
 こうした早さは近ごろのゲームのトレンドだ。それを、協力ゲームにも適用してみたら、こうなったというところだろうか。

 通常のマルチゲームで「1位をとる」ことの価値は、人によって違う。
 勝つことより「盛り上がる」ことのほうが大事だと思う人もいるだろうし、「2位でいい」と考える人もいる。
「全員が1位を目指すべきだ!」という人にとって、2位でよしとする発言はいらだたしい。逆に「盛り上がる」ことを目的とする人にとっては、勝ちにいくプレイと喧嘩との区別がつかない。
 そのあたりは、ゲームがずっと抱えてきた問題点だ。
 しかし協力ゲームでは、勝ち負けの価値がよりはっきりする。プレイヤー同士は必ず味方であり、得点の優劣もつかない。結果は「全員勝利」か「全員敗北」のみなのだ。
 協力ゲームでは、間違いなく全員が目的を共有できる。
「盛り上がる」などというあいまいな概念ではなく、明確な「勝利」を共有できる。
 ウイルスは強敵だ。プレイヤーはまじめに考えないと、簡単に負けてしまう。全員が間違いなくゲームに参加できるという点で、協力ゲームは優れているのではないか。と感じた。
 目的を共有しているから、みんなでああだこうだと議論できる。ちゃんと議論しないと負けるから、みんな真剣になれる。
 勝つために議論するという、コミュニケーションツールとしてという意味では、非常によくできているのではないか。

 もっとも、協力ゲームに特有の問題はある。
「全員分の行動を一人で考えて命令する人」が、いるかもしれないのである。
 しかも、そのほうが有利かもしれない。たいていの場合、頭は少ないほうがいい。
 そういう人がいれば勝ちやすくなるだろうが、なにもしなかったプレイヤーはつまらないかもしれない。
 みんなが同じレベルならいいが、特にやりこんだ経験者がいる場合、彼が一人で考える展開になってしまうことが多い気がする。パンデミックの敵は、決して甘くない。経験者である彼が手を抜いたら、おそらく負けてしまうのである。
 ゲームの構造的に、そうした事態を防ぐことができない。この点は、致命的な欠点になるかもしれない。

 ちょうど最近、「ボードゲームはコミュニケーションツールではない」という記事を書いた。パンデミックは、この記事の中に書いた「パーティゲーム」の問題点を、そのまま抱えている気がする。
 ゲームルールの中に、プレイヤー同士の相談に関するルールがない。ということはつまり、ゲーム外の人間関係がそのままゲームに持ちこまれてしまう。
 ウイルスに勝利したとしても、なにも口を出せず楽しくなかったプレイヤーが、いるかもしれない。ひょっとしたら、ルールすらわかっていないプレイヤーがいてもおかしくない。ただいわれるままに駒を動かしていれば、ゲームを進めることができてしまう。
 これはパンデミックに限らず、協力ゲームが構造的に必ず持っている弱点だと思う。


通りすがり -2010/01/16 15:19
記述がないからダメだってどこのクレーマーですか?
誤解を招くような書き方だと思いますよ?


てらしま -2010/01/16 15:59
 わたしは協力ゲームも好きです。ダメとはいっていないつもりですし、じゃあなにがいいたいかというと上に書いてあります。
 もちろん、意図と違う読み方をされた方が1名いらっしゃったことは憶えておきますし、表現のつたなさへのご指摘と受けとって今後に活かそうと思います。
 がとりあえず、ご自身がクレーマーでないことを証明する気がおありなら、もう少し書かれたらいいと思います。できれば「通りすがり」以外のお名前を名乗られると、ここを読んだ方があなたに対して抱く印象も変わるのではないかと。


ボヤッキー -2010/01/18 22:39
多人数で協力あるいは対戦するゲームの場合、大抵どこかで盛り上がる場面が発生します。
しかし、そのピークを過ぎてしまうと、逆にダラダラと消化試合をこなしているような状態に陥る場合が多々あります。
パンデミック」は常に緊張感を持たせることにより、そういった時間を極力生まないようにしている感じがします。

>「全員分の行動を一人で考えて命令する人」
言い換えるとソロプレイが可能とも受け取れます。(携帯ゲームのコンテンツに最適かも…)


てらしま -2010/01/19 01:32
 コメントありがとうございます。
 パンデミックはよく調整されているなあと思います。アウトブレイクの危機!がだいたい1度くらいあって、ぎりぎりで勝てるくらいの展開が多いようにできてる。
 ムダのないデザインになっているし、ムダな行動はじっさいできません。ゲーム時間も長くないですがそれだけではなく、おっしゃるとおり、ゲーム中ダレるところもないですね。よくできているなあと思います。

言い換えるとソロプレイが可能とも受け取れます。(携帯ゲームのコンテンツに最適かも…)
 たしかに、ソロプレイ可能ですよね(笑)


トール -2010/03/15 20:54
昨日プレイしました。
おっしゃる通り、「一人で考えて命令する人」が出る可能性がありますね。
幸い、「十年以上の付き合いがある仲間たち」が「全員初めて」プレイしたので
そういう展開にはなりませんでしたが、そう考えるとあまり親しくない人や
目上の人とはやりにくいゲームなんですかね


ゆーぐ -2010/05/15 20:15
先日はじめてプレイしました。
私は誰とでもよく話す方なので、あまり考えずにどんどん作戦を立てる。
他の人はそれをたたき台にして、より能率的な動きを提案する。
最後に出た案をみんなで吟味して、
私が最終案を出す
という感じでプレイしました。
それなりにうまく機能したんではないかと思います。


N.K. -2010/05/16 20:15
パンデミックは非常にシステマティックで、最適戦略がわかってしまうのが問題かと。そうなると、多人数である意味がほとんどない(最適処理を目指すとソロプレイで複数駒動かしても同じになる)。
やり始めの数回はシステムが理解しきれなくて、みんなでバタバタして楽しめるけど、数回やって何人かシステムを理解すると、協力ゲームとしては微妙になるような気がします。いや、きれいにまとまったゲーム・システムとは思うけど。
ただ、パンデミックはこの手の問題が顕在化しやすいだけで、普通のゲームでも同じような問題は起こりうるのでは。逆方向だけど、人数合わせのために参加させられた人が、適当なプレイしてゲームを壊すとか。
結局、ゲーム論よりプレイヤー論(各プレイヤーのやる気の差とか、初心者育成問題とか)の割合が大きいような気はします。
長文失礼しました。


2009/02/02 00:06

もっとホイップを!
 ボードゲーム

2009/02/02 00:06 てらしま

aberbittemitsahne2.jpg
 ケーキを人数分に切り分けるゲーム。シンプルなテーマでわかりやすい。

 →のようなタイルがたくさん入っているのです。
 一目で想像できるとおり、これを円形に並べて、切り分けるんである。
 しかし、これがまた「11枚で円形になる」という大変やっかいなケーキで……。

 手番プレイヤーはまず、タイルでケーキを作る。これはランダム。
 で、それを人数分に切り分ける。
 そうしたら、切り分けたケーキを下家から時計回りにとっていく。切り分けた人は最後にとることになる。
 とったタイルは、「すぐに食べる」か「キープする」かのどちらかを選べる。
 タイルに描かれているホイップクリームの数が、すぐに食べたときの得点。
 書かれている数字は、ゲーム終了時にその種類のケーキを一番多く持っていたプレイヤーに入る得点。
 誰がどのケーキをほしがっているか。そこでどう切り分けるか。とったケーキを食べるのか、残すのか。

 ルールはほぼこれだけなんだが。
 つまり、ボードゲームプレイヤーに馴染み深いいいかたをするなら。このケーキはケーキではなく、株券なのである。
 即座に売れば3点。けれど、ゲーム終了時まで持っていて枚数がトップなら11点。なんかそういうゲームやったことある。
 基本的には、すぐに食べたほうが得点が高い。しかし、そうしてみんなが食べているなら、1~2枚で11点を獲得できてしまうかもしれない。そういうジレンマと駆け引きのゲームだ。
 ある程度ボードゲームの経験があれば、ルールを読んだだけで、どんなゲームかイメージできてしまうと思う。
(あとマジック:ザ・ギャザリングの経験があるプレイヤーには、「Fact or Fiction」と説明すればいい)

 とりあえずルールは簡単だし、軽いし、誰とでもやれる。なにより、コンポーネントがとっつきやすいし、クールだ。
 でも、ケーキが三角形の株券にしか見えない人にとっては、非常に悩むところの多い、厳しいゲームにもなってしまう。
 手ごろさの奥にそういう奥深さもある、傑作だと思う。
 とはいえ、出てくるケーキはランダムなので、悩んでも大差ない場合も多いわけだけど。

 株券ではなくケーキを使ったところが、なによりのビッグアイデアだったと思う。
 たとえばまったく同じシステムだったとしても、テーマが株だったら、対象年齢が4歳上がっている。
 また、株券ではなくひとつのホールケーキを切り分けるのだというテーマを採用したために、ケーキの順序が問題になった。
 株券だったらおそらく、順序は関係なく分けていいというルールになっていたはずだ。だがそうなると、これはもう完全に、詰んだ詰まないの殺伐としたゲームになってしまう。少なくとも最終3ターンくらいは全数検索しておかなければ勝てないゲームになっていただろう。
 プレイヤーの自由度を下げることで、圧倒的にプレイしやすくなっている(そしてもちろん、円形に並べることのできるかたちはこれしかない)。適度に運の要素を入れることに成功している。

 ケーキであるというひとつのテーマがゲーム性を規定し、そこからいろいろなものが、すべていい方向に作用している。すばらしいんじゃないか。

cut4.jpg

 タイトルの意味については、↓にちょっとまとめた。

 このゲーム、弱点はタイトルだ。内容はとっつきやすいのに、タイトルがいまいち呼びづらい。どうしても「あのケーキのやつ」とかいうことになってしまう。
 でも、ドイツ人にとってはたぶん、そうでもなかったのじゃないかと思う。


kamata -2009/02/03 10:13
 これ、いいなぁ。欲しくなってきました。
 コンポーネントもテーマも子供向けだけれど、ゲーム部分の利得計算はかなり煮詰められてタイトに感じられる。ドイツ人は子供に経済/道徳感覚を教えるためにこういうゲームやるんでしょうかね?「もじゃもじゃペーター」(これはドイツの絵本ではないですが)やタイトル元ネタのような、道徳童話が大好きなお国柄だし。
 ケーキが株券に見える大人には、米ハードボイルドのマフィアや汚職警官がサンドイッチに賄賂挟んでるイメージを意識してもらえばいいのでは。「『アンタッチャブル』 in Berlin」みたいな。「ウチのシマではこういうのが流儀なんだぜ」とか言いながら、揃ってクリームの中の札を咥えて引っ張り出す髭面のコワモテ男たち。


あおき -2009/03/17 21:58
これはあそびたい


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