ボードゲームの攻略記事って、嫌だという勢力もいてアレなところもあるんですけどね。好きなだけ書こうっていうのがいつもの自分の立場なので。
まあしかし、何度も書いてることですが、対人で遊ぶゲームである以上、一人が知見を得てしまうと知らない相手との差が大きくなって楽しみを削いてしまう、という話はわからないでもない。いまのボードゲームはもっと広い世界の遊びになってると思うのだけど。特に都市圏では。でもそういう環境ばかりとも限らない。
なので、読みたくない場合は読まないでください。
(記事を畳む機能とかほしいな。このサイトそういうのないです)
とりあえず、種族によらない基本の話。
もちろん本当は、種族によって全然違う。種族別の話になったら、今回書いたことの半分以上が覆るので注意(笑)。
続き書くとは限らないけど。
テラミスティカは拡大再生産のゲームだ。そして勝利点を稼ぐゲームでもある。
つまり、序盤は生産力の拡大、後半は勝利点の獲得、という、ボードゲームではおなじみの流れが基本になる。できることが多すぎて忘れそうになるのだけど、この基本は変わらない。
生産力といってもじっさいには、労働者、コイン、パワー、司祭という4つの資源を生産しなければならない。すべての資源が必要だ。だから生産力は1つの数字で表せない。しかし全部を生産するのは難しくて、不足したところはパワーアクションやボーナスタイルで補う。
で、ほとんどの行動で必要になるうえ他の手段で補いづらいのが、労働者だ。まず生産力が確実に増える選択は、開拓地を建てること。というか開拓地を建てないと資源は増えない。
交易地は性能によるけど、まあゲームシステム的に建てるしかないので、どうせ建てる。このとき、コインやパワーがあっても労働者がいなければ意味がないことに注意。神殿にする予定がないなら、基本は開拓地が先だ。
司祭はこのゲームでもっとも替えの効かない資源だ。なので、神殿1件は必要。ただ、高価すぎるので生産力増強用としては効かない。街のサイズが増えないので得点効率も悪く、できればあまり建てたくない。ただし恩恵タイルによっては、かなり有用な生産力になる。そのあたりは後述する。
砦と聖域は勝利点用。生産力は基本的に増えない。種族によるけど。
鋤レベルは勝利点側。生産力は増えるが、高価すぎてペイしない。
船レベルも勝利点側だ。基本的には、終盤に接続のために上げる。ただもちろん、土地の都合で上げる場合はある。
もちろん種族によってぜんぜん違うのだけど。種族によらない一般論としては、そんな感じ。
勝利点寄りの行動は、むしろ生産力を低下させることが多い。そうした行動を序盤に選んでしまうと、最終的な勝利点は極端に下がる。いわゆる初心者と経験者とでは大きな差が出るのだけど、その原因はこれだ(テラミスティカに限らない話ですね)。
特に罠なのは、鋤レベル、2件目の神殿、砦あたりか。種族によるけど。あとは、交易地を建てすぎてしまうとか。
じっさいにはすべての行動が生産力でもあり勝利点でもあって、一概にいえなかったりもする。どの行動がどれくらい勝利点寄りなのか、生産力が増えるのか減るのか、といったことを考えたい感じ。
よくあるゲーム攻略の考え方として「最終形」というのがある。ゲーム終了時のかたちを想定し、それを目指してプレイする。そうして目標を具体的にすることで、ぶれずにプレイできる。正しい最終形を想定できるなら、とても有効な方法だ。
というわけで、基本的な最終形を示そう。ずばり、これ↓。
聖域を1個建てたらもう神殿は不要。神殿は街のサイズが増えない行動だから、得点効率が悪い。一方、3マスで街を作れる聖域は効率がいい。
砦は、街建設のため中盤以降に建てる。ただ高価なので、なくてもいい。
街は2個だ。もちろん3個も可能だが、2個にしておいたほうが得点が高くなるケースが多い。
鋤レベルは不要。高価すぎてペイしない。最終ラウンドに暇があれば、6点のために上げる程度。
船レベルは中盤から終盤に、接続に必要なだけ上げる。
種族によってかなり変わるのだけど。だからこそ、種族によらないこの基本形をまず把握するのがいいような気がする。種族の違いは、基本形からのアレンジで考えるのがわかりやすい。
この最終形を目指しつつ、ラウンドタイルの様子を見ながら手順を計画していく感じになる。
上に書いた最終形を目指すにあたり、まず建てるのは神殿だ。神殿は高価だし、生産力もそれほど増えないのだが、代えの効かない資源である司祭を生産する。それに、恩恵タイルも必要だ。序盤に1件は必須。
というか、開拓地を建てたくても、土地の変換ができず建てられない場合が多い。労働者3個も使って土地の変換とか、あまりやりたくないし。自然と、交易地→神殿のアップグレードを優先することになりがちだったりする。
この最初の神殿で、どの恩恵タイルをとるのか。これはとても重要な選択になる。
まず、基本。
なにしろ序盤だから、生産力の確保を優先する。【3コイン】がおすすめだが、【1ワーカー1パワー】でもいい。【4パワー】も悪くない。
最初に神殿を建て、【3コイン】の恩恵タイルをとる。これは、テラミスティカでどうしていいかわからないプレイヤーが、手っ取り早く上達するための処方箋だ。
「これを選んだら間違い」という罠が多いゲームの中で、とりあえずほとんど間違いのない選択がこれ。これをやれば、まずは安定して100点以上を目指せるようになる(と思うけどどうだろう)。
でも。少し慣れると事情が変わってくる。
上に書いた基本の最終形では、恩恵タイルは2枚しか取れない。その貴重な機会で、勝利点を取らないのはもったいない。そう考えるようになる。テラミスティカは、勝利点を取る機会が少ないゲームなのだ。
したがって。最初にとる恩恵タイルは、【開拓地2点】になる。もちろん手は遅れるけど、目指す最終形を達成できるならそれでいい。最終形のところに書いたとおり、街は2個で充分。そう割り切ってしまえばけっこう足りる。
というわけで、本当の基本はこっち。
聖域を建てたときの2枚目はというと、これももちろん勝利点。【交易地3点】が最優先だ。
【開拓地2点】と【交易地3点】。この2枚を取ることで、勝利点はだいぶ増える。勝利を目指せるラインはとりあえず120点前後だと思うのだけど、そのラインを狙うための近道がこれ。
そんなわけで、ここまで書いたのが、種族によらない基本だ。ここに、各種族別のアレンジを加えていく感じになる。
例えば砦が強力な生産力になる種族なら、砦をまず建てる。ジャイアント、スウォームリングなどが代表的。
鋤レベルは通常上げないのだけど、上げてもいい種族がいくつかある。代表的なのは、ハーフリング、スウォームリング、アルケミストあたり。
そうした特性に合わせ、種族別の基本手順をアレンジしていく。
ちなみにこの基本手順、各種族につき1ルートだけとは限らない。複数のルートを持つ種族もあるし、順序を柔軟に入れ替えることのできる種族もいる。そうした自由度の高い種族ほど安定しているといえる。
という感じで、次は各種族の基本手順を考えてみようというところだけど、そのうち気が向いたら書く。
神殿が -2023/11/10 17:03
最終形神殿0が理想なら恩恵のために神殿を優先して建てる話は変。1のタイポでは?
神殿が -2023/11/10 17:07
未プレイで誤解していた。テラミスティカは神殿→聖域になるのでおかしくない。申し訳ない。
人の集まりが悪いので(笑)、暇つぶしに2人戦。
2人戦なのでホードの枚数差がそのまま点差になった感じ。あとブラインド楽しい。
久しぶりにやったけど、セットアップと片付けのめんどくささ。拡張でさらにめんどくさくなったしなあ。やれば楽しいんだけど、最近そんなにやらないのはそのへんがあるかなあ。
何人かに薦められたやつ。
サイコロを振って、出た目のカードを獲得できる。ただし、カードは得点かもしれないし、外れかもしれない。裏を見ないとわからない。で、サイコロが外れて獲得できるカードがない場合は、場のカード1枚を選んで裏面を確認できる。
サイコロ運がよければカードを獲得できて強いんだけど、獲得したカードは外れかもしれない。サイコロ運が悪くても、情報を得ることができるから悪くない。というかたちでバランスをとってる。すごい軽いゲームとして、悪くない感じ。
なんか惜しいのは、得た情報がまったく漏れないところ。ふつうにポーカーフェイスで裏面を見てれば、ゲームシステム上、情報が漏れる場面がない。それでもいいといえばいいんだけど。情報のゲームが盛り上がる機会って情報が漏れたときなので、せっかくなのにもったいないという気はする。
なんと70年前の戦中にポーランドで作られたというゲーム。それがどういうわけか最近日本語化されたらしい。
農場に家畜を飼う。サイコロを振って、自分の農場とサイコロの目合わせて2匹ずつのペアを作る。できたペアの数だけ、その動物が増える。たとえば農場に5匹のウサギがいるときにウサギの目を1個出したら、サイコロと農場合わせて6匹なので3ペア。だから3匹増える。
サイコロは12面2個で、いろいろな動物が描かれている。ウサギはたくさんいるけど、牛などの高級な動物はほとんど出ない。最初はウサギしかいないから、まずはウサギを増やすことになる。
動物が増えてきたら、それを別の動物と交換することができる。ウサギ6匹で羊、羊3匹で豚、というふうに、レートが決まってい る。
5種類の動物をすべて揃えたプレイヤー の勝利。
あと、サイコロの中にキツネととオオカミなんてのがいて。キツネが出たら、ウサギが1匹を残して全部食べられてしまう。オオカミは、ウサギ以外全部食べる。ひどい。この被害から農場を守る手段もあって、それが犬。小さい犬はキツネを無効化、大きい犬はオオカミを無効化だ。小さい犬はヒツジ1匹、大きい犬は牛1匹 で手に入る。ちなみに、使い捨て。
そういう感じ。 動物は増えれば増えるほどさらに増える拡大 再生産的な感じなのだけど、キツネとオオカミがあまりにひどいので、防衛も考えないといけない。でも犬が高い(笑)。
ルールがあってたのかどうかすごく気になる。いちおうルールどおりやってると思うんだ けど、ほんとにこれでいいのかと思ってしま う。なんていうか、さすがに70年も経ってると感覚が違うというか。「こんなことはありえな い」と思ってマニュアルを調べちゃうんだけど、文化が違えばありえるのかもなあみたいな。70年前のポーランドなんて想像もつかない んだし。
ルールブックの書き方が曖昧なのもよくなくて、不安を煽られる。
具体的には。ウサギ18匹を抱えてるとヒツジに変換しても減らない態勢になるのだけど、これを3人がやると一人はウサギを持てなくな る。ストックのタイルが枯渇するから。ほんとにこれでいいのか……。
もうひとつ。動物の交換はストックからだけでなく他のプレイヤーともやっていいのだけ ど、その場合でもレートは固定。えそれじゃやる意味ないじゃんって話になるのだけど、 いちおう、使うケースはなくもない。今回この 交換をするから次回この交換をしてくれってい う約束を前提にすれば、他のプレイヤーの手番中に動ける分有利になれる。でも、なかなかやらないよね(笑)。今回はやっぱりそういう交渉なかったんだけど、でもそれをやってこそだったりするのかなあ。
そういう、不安になっちゃうところがあるんだけど。でも、意外と思ってたより古びた感じはしなかった。けっこう嫌いじゃない。
久しぶりだったけど、やってる途中で晩飯のピザがきたので中断。
トリックテイキング作りたいよね、でも考えてるうちにわからなくなって頓挫するんだよねっていう話などをした。
プレミアムバンダイの受注生産ゲーム。小説(アニメ)『ソードアート・オンライン』の話を再現した系のデッキゲー。
いろいろとクソゲー感高い部分は多いんだけど、やれば楽しめる。
内容はおおむねサンダーストーン。村で英雄を雇い、ダンジョンを攻略する。カードは村で使うコインとダンジョンで使う戦闘力の2つのパラメータを持っていて。で、協力ゲームだ。
一人が攻撃した後、次のプレイヤーが「スイッチ」能力を使うとコンボ、という、協力ゲームらしい要素があって。デッキゲーなのでスイッチがつながるかどうかは運で、そのあたりなども見て攻撃の機会をうかがいながら街で戦力を整える。そのへんのプレイ感もだいぶサンダーストーン的。
よくない点は、とにかく処理がめんどくさい。サンダーストーンよりさらにずっとめんどくさい。たぶんコンピュータゲームのつもりで作ってると思う。アナログゲームとして要素を整理しようとか、そういう意識はゼロ。
階層カードをめくったら「ボス山札から○○を出す」とか……。えっ、その山札セットアップでシャッフルしたよね!? みたいな整合性のなさがいたるところにある。あとデッキゲーなのでプレイヤーごとの山札があるのだけど、それ以外に場に裏向きの山札が8個あって、うち半分は裏面同じでどれがどれだかわからないとか。あとルールブックの記述がだいぶ足りなくて、曖昧なところがたくさんあったりとか。
もうとにかく、ツッコミどころがすごく多い。
でもまあ、擁護したい面もあって。協力ゲーはシステムが複雑になるんだよなとか、物語を重視するとこれまた煩雑になるんだよとか。
原作の物語を表現するためにいろいろやってるんだし実際表現できてるから、コンセプトから見ればこれでいいという気にもなる。物語というのは、キリトとアスナでいちゃいちゃスイッチ連携してると強いとかそういうのなんだけど。
めんどくさいのはサンダーストーンも同じだったし。それでおもしろくなる面も実際ある。どこまでが許されるのかというのはけっこう難しい問題。でもやっぱり、そういうのはわかってなきゃいけないことなんだし、もう少しなんとかしようぜ。
ゲームはちゃんと楽しかったけど。けっきょくサンダーストーン好きだし。
こないだTBSでやってたジンロリアンというテレビ番組があって。人狼なのに吊り投票は視聴者がやるっていう奴。あれで思い出したといったら、持ってきてくれた人がいた。
ちなみに、うちで人狼が立つとかとても珍しい。「ゲームじゃない」とか「いじめられっこを決めるための遊びでしょ?」とか、そういう発言が飛び交うような環境(笑)。といっても、そんな環境じゃ楽しめないかといえばそうでもない。やれば楽しめるんですよ。
さてこのゲーム、人狼をやってる13人のNPCを神視点で俯瞰してるというメタな設定が売り。そうすることで、少な目の人数でも人狼を遊べるらしい。
なにをするかというと。NPCの中に人狼やら占い師やらがいて、誰が誰を占ったとか、カミングアウトしたとかをチットを置いて表現する。騙りとかカミングアウトとか、人狼界隈の文化を知ってないとほとんどの要素が意味をなさない、ものすごくハイコンテクストなゲーム。
ただ個人的には、このへん評価してるところもある。オリジナルの人狼って、セオリーとか人読みとかを前提にしないと議論の材料がないじゃん。でもこのゲームは、その材料をシステムが与えてくれているわけで。おかげで、人狼文化に染まってない自分みたいな奴でも議論に参加できる。
そんな奴がここまでハイコンテクストな遊びをやるのかという矛盾はあるんだけど。
でやってみると、議論が収束しない。誰が誰に投票したっていう情報がないから、オリジナルの人狼よりもさらに議論の材料が減ってる。占いの結果が白だったといっても、占い師が人狼かもしれないとなるとけっきょくなにもわからない。なにが出てきても情報量がゼロなのだ。
これ、他のいくつかの人狼クローンでも感じたことなんだけど。人狼ってけっきょく、議論してもなにも決まらないんじゃないのか? っていう、どうにもならない部分が浮き彫りになっちゃってるような。いろんな人狼クローンをやればやるほど、その想いが強くなる。プレイヤーたちの幻想で成立してた人狼というゲームが、クローンの乱立で破壊されてる。そういう気がするんだけどどうなんだろうな。
まあそれはそれで、じゃあ人狼プレイヤーが感じてる幻想はどこからきてるんだろうっていう興味はないでもない。
メビウス便。ツォッホ。この日一番盛り上がったゲーム。おもしろかった。
地獄の釜の中から石炭を拾うんだけど、石炭は熱いからやけどする。やけどする前にどれだけの石炭を拾えるかっていうのを、ビッドする。基本は、やけどするまでにどれだけの石炭を引けるかというバーストゲーム。
ビッドは誰が達成してもいい、っていうのがポイント。ビッドに成功すれば、掛け金が倍になる。さらに、一番高いビッドで成功すれば、倍でなく3倍になる。
あと単独最下位のプレイヤーは、誰かがやけどする度にそのプレイヤーから50円もらえる、という救済がある。
すごくいいかげんな見た目と比べると、思った以上に細かいルールが多かったりする。でも細かいルールの一つ一つがおもしろさに貢献してる。作り込まれてる感じする。
バーストゲームの盛り上がりビリティがちゃんとあって、そこにいろいろと細かいルールをつけて、一方的な展開を防止してる感じか。ツォッホっぽいコンポーネントの豪華さもあいまって、かなりいい完成度のゲームになってる。
てきとうに。軽いしけっこう悪くない。
いろいろな職人が出てきて。職人カードをプレイするとなんか起こる。職人は6種類、各種5色ある。プレイした職人カードは自分の前に並べるんだけど、種類と色が同じカードは並べることができない。
で、1種類の職人が5色揃ったら、ギルドを設立する。設立したギルドの数だけ、あとで勝利点カードを買うことができる。
手番にやれることは2アクション。カードのプレイか、手札を好きなだけ捨てて6枚になるまで引くか、設立済みのギルドを使って勝利点カードを買うか。
わりとそれだけ。職人カードにいろいろな能力があるのだけど、6種類しかないし難しくはない。思ったよりコンボゲーって感じじゃなかった。
直接攻撃があるので、終盤はひどい足のひっぱりあいになる。そこでトップを叩いたりおなじみキングメイカーが出てきたりいろいろあって収束する感じのゲーム。といっても点が減るわけじゃないし、収束する仕組みもちゃんとある。
直接インタラクションてきとうだなーという印象はあるけど、このゲームはそれも織り込んでちゃんと成立してる。ちゃんとおもしろいし完成してる感じする。でもなんか地味っていうか、ふつうだなっていう感じもしてしまう。こういうカードゲームってそういう難しさがある。
メビウス便。最近お気に入りのゲームのひとつ。前に『ロール・スルー・ジ・エイジズ』というゲームがあったのだけど、あれにとてもよく似ている。意識して作られたものという気がする。
あとこれ『村の人生』の作者の人なのね。
ゲームを買うとき、とりあえず箱の浦は見ると思う。そこで「えっ」と思うだろう。
ボードの写真があるのだけど。街らしきものが描かれていて、四角のマス目が並んでいる。そこに木駒を置くんだろうと思うのがふつうだが、写真はどうも様子が違う。ボードのマス目には、明らかに手書きと思しい、妙にゆがんだ図形が描かれている。
このゲーム、駒を一切使わない。獲得した資源も、建てた建造物も、すべて水性サインペンでボードに書く。
ボードの表面がそういう風に加工されていて、ちゃんと消せる。
サインペン1本あればいいんだし、コマが不要だから、かなりのコスト削減になっているはず。それなりに複雑なリソース管理もあるゲームなのだけど、この要素数のゲームとしてはだいぶ安い。
サインペン方式の理由はそれだけではない。さっき『ロール・スルー・ジ・エイジズ』の名を挙げたけど、このゲームもあれと同じように、サイコロを振る。サインペン方式なら、サイコロが駒に当たって動いてしまうという事故を防ぐことができるのだ。じっさいちゃんと合理的な理由だと思う。
ただ斬新なコンポーネントで人目を引くだけでなく、まあいちおう合理的な理由があるあたりは感心する。
すごい斬新な発明!っていう感じではないけど。コマとサイコロを併用するゲームだってたくさんあるんだし、それで大きな問題なのかといったらそうでもなくて。これじゃなければ実現できないゲーム性ってのも特になくて、絶対必要というわけでもない。でも物珍しいし、そこに合理性があるとうれしい。
あと、同人ゲームで使ってみたくなる(笑)。コスト削減できるの魅力。
そんなところもあるので、少し考えてみたい。この方式の利点と欠点と、どういうゲームに向いているのかについて。
まず利点はさっき書いた。コストを削減できることと、サイコロの邪魔にならないこと。
もうひとつ挙げるなら、書く操作の楽しさというのもある。コマを置くのとは少し違う、独特の楽しさがある。
もちろん、木でできたいろいろなかたちのコマを置くのは楽しい。だが、やはりリッチなコマは高い。多くのゲームでは単に立方体のコマを使っていたり、紙製のチットだったりする。やっぱり製造コストの制約っていうのはあるんだと、思ってしまうゲームはけっこう多くて。一定ラインを超えてケチなコンポーネントだと、ゲームそのものの楽しさが損なわれてしまうことにもなる。
このあたりの話ってよく語られるしそのとおりではあるんだけど、その語られている言葉以上に深いところで重要だという感じを持っている。例えば「見た目がいい」がゲーム性への評価と連続していることがある。あるいは逆に「見た目よりシステム」という言葉の裏に、見た目からくる楽しさへの評価が隠れていることがある。
で、サインペン方式だ。リッチなコマを使うほどの楽しさは提供できないかもしれないが、これはこれで独自の楽しさを保証できる。という気がする。とりあえず、コマのチープさで評価を下げることはない。
コマやチットを置くのとは少し違う楽しさがある。几帳面にマークを書く人もいれば、独創的な簡略化を発明する人もいる。そういう、ゲームとは直接関係ないかもしれないが操作自体の楽しさを持っている。
もっとも、サインペン方式自体が「しょぼい」といわれてしまったらどうしようもないし、そういわれることもあると思うのだが。
欠点のほうはというと、なによりも手が汚れることだ。
いや、手だけならいい。たとえばこの方式にカードを併用したら、カードも汚れることになる。カードの裏面にインクがついてしまったら、そのカードはもう使えなくなってしまう。
コマならまだいいが、やはり汚れるのはいやだろう。そういう意味では、他に一切のコンポーネントがないゲームが理想ということになる。
サンマロの場合は、サイコロがある。理想的にいえば、サイコロだって使いたくない。とはいえサイコロの汚れはそんなに大きな問題にならないから、許容できるといったところだろう。それに、さすがにサインペンとボードだけでは味気ない気もする。
そういう風に考えていくと、サンマロはサインペンゲームとして理想的に近い。理にかなっていると思うのだ。
コンポーネントの話ばかりでゲームのことを書いていなかった。
サイコロを振る、と書いた。その振り方も、だいたいロール・スルー・ジ・エイジズと同じ。
この方式、思い出すのはGREED!だが、他にも非常にたくさん採用されている。ゾンビダイス、海賊ダイス、ドラゴンダイス、……。とにかくすごくてきとうに乱造されている。それだけ完成されており、おもしろいシステムなのだ。
いくつかのサイコロを振り、そのうちいくつかをキープして、3回まで振りなおせる。このシステムにより、運に適度にプレイングを混ぜることができる。プレイングで少し操作できる乱数、というのは、ゲーム装置の理想形のひとつといっていい。
こうしたゲームは、どちらかというとパーティゲーム、ファミリーゲームに多い。でもこれよくできてるし、ゲーマーズゲームにも使えるのではないか? という試みが、いくつか生まれている。『ロール・スルー・ジ・エイジズ』もそうだし、このサンマロもそう。『王への請願』なども入れていいだろうか。
そういう奴だ。
そんな感じでサイコロを振ったら、目を1種類選ぶ。1種類しか使えない。
「商品」の目を選んだら、出ている商品の目の数だけ、街に商品を描く。「木材」の目を選んだら、コインを2個消費して、出た木材の目の数だけ木材を獲得する(材木置き場に木材を描く)。
そんな風に、目によってルールが決まっている。
おもしろいのは、資源が利益を生むまでに何回かの変換が必要なところ。たとえばコインを手に入れるためには、まず商品を手に入れ、次に商人を手に入れなければならない。建物を建てるためには、まず木材を手に入れ(そのためにはコインがいる)、次に建築家を手に入れなければならない。そんな風に、リソースを変換するルートがある。ゲーマーズゲームっぽい、リソースマネジメント的な要素だ。
他には、海賊が攻めてくるという要素がある。サイコロの目の中に海賊があって、それが出ると、海賊トラックに1個チェックをつける。これが一定の数溜まると、海賊が攻めてくる。
海賊の強さは決まっていて、だんだん強くなる。プレイヤーは、城壁を作ったり戦士を雇ったりしてそれに備えなければならない。防御に失敗したら減点だ。
この海賊はアグリコラでいえば食料に該当する。小目標だ。
ゲームの大きな目標はもちろん勝利点を稼ぎ勝利することなのだけど、それだけでは単調になるということで、特に長めのゲーマーズゲームでよく採用される手法だ。これによりゲームにメリハリが出て、飽きない。
リソースマネジメントに小目標。ゲーマーズゲーム的な要素がしっかり盛り込まれている。でもなにしろすべてがサイコロだから、なかなか思いどおりにはいかない、パーティゲーム的な楽しさもある。
ゲーム面でも理にかなった作りだと思う。
すべてがかみ合ってる感じがする。クレバーな作りだ。傑作なんじゃないか。
今年も開催されたホビージャパンゲームフェスティバルです。いってきました。
まず書いておくけど。ドミニオンについて、自分は本気のガチプレイヤーではない。そこまでリソースを割けないのが実際。
それでも世間一般から比べたらどちらかというとガチ側ということになるだろうけど、本当のトッププレイヤーたちの情熱を見れば、比べものにならない。じっさい彼らがドミニオンに使っている時間は、自分の数十倍に及ぶだろうと思うし、尊敬に値する。
そんなわけで、予選を通過できるとはまったく思っていなかったし結果もそのとおり。でも自分としてはいい戦いができたので満足って感じ。
属州は残り4枚。自分のデッキには庭園がたくさん。デッキ枚数は36枚。手札は木こり含む4コイン。
もちろん庭園を買い足してもいいのだけど、死の荷車を買えば40枚を超える。つまり、自分の手番があと2回回ってくるなら庭園が正解、1回以下なら死の荷車が正解。さて……。
初手民兵の人がいたので、遅い展開になるかなと思って木こり-泥棒でスタートで庭園一直線。誰もついてこなかったので3山枯れにはならないし、銀貨も少し買ってのんびり目にやって40枚目指すかなという感じ。で、その狙いは悪くなかった気はする。
大きなミスもないのだけど、5コイン2購入のときに救貧院買わなかったのは明確なミス。ぜんぜん見えてなかった。といっても使えたとして1回だろうし、差がなかった可能性が高いけど、でもそういう差じゃんそういうのが強い人との違いじゃんってのはまあある。
もっと民兵撃ってもいいのよと思いながら粛々と庭園を買っていく。一人で。
で、終盤、冒頭に書いた状況。自分は死の荷車を選んだのだけど、手番はその後2回回ってきて、そのターンの下家(1番手)が属州を買って終了。4点差の2位だった。あそこで庭園を買っていれば手番差で勝ってたという結果。
あとで思い返してみれば、他のプレイヤーのデッキをよく見てれば庭園が正解の可能性も高かったなと思う。でもなー、庭園買って失敗したら3位だっただろうしなー。大会だしなー。というところ。いい戦いができたんじゃないですかね。
地下墓所だけでもいいと思う。いわゆるステロ。大会ではステロ選んだ方がいいっていうのは、いままでに何度も思ってる教訓でもある。
でもこれ、基本セットのマニュアルにある First Play っていうサプライのアレンジ場なんですよ。改築があってアクション増えてドローもあるっていう。 First Play はみんな研究してて、まあいまやかなりの引ききり優位なんですね。
今回のサプライ、 First Play との違いは、村じゃなくて城塞。鍛冶屋じゃなくて地下墓所と狩場。このへんはデメリット。改築の都合で。代わりに行進-城塞があるところは大きなメリット。
避難所じゃなくて屋敷だったら、あるいは城塞じゃなく村だったら、または地下貯蔵庫があったら、間違いなく改築からの引ききりだと思う。でもそうじゃなかった。迷った末、改築-銀貨でスタート(自分の First Play の手筋)。
最初避難所を改築できなくてしかたなく銅貨を屋敷にしたり、回りは悪かった。でも行進-城塞は予定よりもだいぶ強かった(笑)。
で、デッキがだいたい完成して、ついに引ききり発動。属州2枚ずつとれる態勢になって、じっさい1回それをやって。次のターン属州2枚と公領1枚とって勝ち。っていうプラン。で城塞から行進-狩場で8枚引いて公領とって、これで完成だなーと思ったら、城塞を1枚も引かず(笑)。その下にたくさん埋まってた。
ちょっとおもしろかった。結局アクションカードたくさん余らせて属州を1枚買ってターン終了。
結果的には、ネズミで銅貨を圧縮してれば事故率減らせたかもなーとか。手が遅れる気がしたのでいかなかったんだけど、いってもよかったかもしれない。でも難しくなりすぎてめんどくさい(笑)。あと、最初の改築スタートダッシュが失敗した時点で2枚目を早めに入れてもよかったかもね。
と後から考えれば細かいところあるけど、とはいえまああんなものじゃないかなー。
2戦目までは、勝ててないもののいい試合できてたんだけど。3戦目はボロボロ。暗黒時代の試合勘が足りてない。
具体的には、隠遁者がわかってなかった。途中で浮浪児をとっちゃったんだけど、あれが間違い。傭兵がぜんぜん機能しなかった。あれは隠遁者追加が正解だったなー。他にもあるけど、あそこが一番大きな岐路だった気がする。
と思ってたら、後で聞いたら傭兵が活躍した卓もあったとのこと。上家が議事堂を撃ってくれれば機能した感じ? 襲撃者の枚数とかいろいろ違うだろうけど、いろいろあるなーと思った。
いつも思う、勝つ人の強さなんだけど。知識不足にしろなんにしろ、こういう自分が苦手な場っていうのはある。もちろん苦手をなくすのが一番いいしそこにも差はあるんだけど、それよりも、こういうときに4位になるからダメなのよなーと。そこで大失敗になりにくいステロを選べっていう、2戦目のところに書いたのはそういうことなんだけど。
でこの日、ステロ1度もやってない(笑)。
ぜんぜん関係ないけど。こないだのコンフェデレーションズカップ、サッカー日本代表の戦いにもそんなこと思った。ぜんぜん関係なかった。
封土は少し研究してたので(笑)。封土を改築して銀貨を増やしつつ金貨で、それで属州も買える。あとは盗賊で、廃棄した封土をまた回収する。あと盗賊けっこう好き。
書庫ステロっていう手もあって、避難所だったし(共同墓地と書庫は好相性)それもいいのかなーと考えたんだけど、盗賊もあると封土の方が優位だろうな。あと騎士や盗賊のアタックにも封土がアンチなので、丸い手だと思う。でも役人は罠だなーと思ったので入れず。
でプランどおり。運もかなりよくて。相手の騎士でほとんどなにも壊れなかった。銅貨や避難所ばっかりめくれてた。盗賊や銀貨や金貨が壊れたらだいぶ苦しかったと思うしその可能性だってぜんぜんある気もする。まあ逆に封土が1枚壊れてくれればもっと楽だったんだけど。
そんなわけで最後になってやっと気分よく勝利。属州4枚と封土7枚。
そんな感じ。2位2位4位1位で、予選敗退。大会で4位だけは絶対ダメなんです。
自分に関しちゃじっさい準備が足りてないし。本気で準備してきた人たちがどれだけのことをしてきたかも見てるわけで。彼らが予選通過するのは当たり前だと思う。
ちなみに翌日の本戦では、激戦の末、入補氏が優勝でした。でもアメリカにいけないとのことで、世界大会にはてっぺい氏がいく様子。日本はこれまで世界大会2連覇しているので、今回もがんばってほしいと思います。
1日目負けたので、2日目は十二季節の魔法使い大会に参加してきました。こちらはドミニオン以上に勝てる気しないので、気楽な感じで。
このゲーム、じつは3人か2人がいいです。4人だとどうしても1人が脱落する展開になりがち。3人がベストと思う。大会主催者もそれをわかってて、スイスドローの上位卓が3人戦、下位卓が4人戦という構成になってました。
しかし考えてみればそれって、慣れていない=プレイが遅いプレイヤーが4人卓を囲むことになるわけで。大会の時間管理的には難しそうだなーとか思った。
あと、この人数(14人)でスイスドローっていう形式が本当にいいのかっていうのは思う。上位はずっと同じ相手と戦ってたし。でもそれはそれでいいか。いっそ毎回ランダムでもいいような。どうなんだろうな。
1戦目。一人は友人でやりこんでる人だったので、まあいきなり勝てない対戦(笑)。ゲーム前に話を聞いたら、もう一人はそれ以上にすごい人だったらしく。ネットで毎日やってるような人らしい。そしてその方がこの日の優勝者だった。
そんな対戦で、しかし自分の運もよくそれなりに戦えた感あった。でもさすがに最後に届かず3位。数点差ではあるけど、この差だよねえ。
2戦目。4人卓。泥棒フェアリー2枚にいわされてボロボロ。
ドラフトでは2枚とも見てないし(泥棒フェアリーは初手でピックされる類のカードです)、こういうときどうするんだろう。なんかノウハウがあるんだろうな……。
3戦目。4人卓。っていうか最下位卓(笑)。このゲームをこんなにがっつりやったのははじめてのことで、いろいろ憶えていく感じが楽しくなってきてる。
そんなに悪くないけどよくもなく、でも1位には大差をつけられて2位。たぶんドラフトで回しちゃいけないカードを回してるんだろうなーと思うけどどれなのかはよくわからない(笑)。
4戦目。ここまでで憶えたことを活かしつつ。砂時計(季節が変わる度に資源1個)を出した次のターン、カードを引いたら砂時計だった。秘本と砂時計2枚でごり押し。さすがに強かった。
会場では他にも、テンデイズゲームズのテレストレーション大会や、すごろくやのグースカパースカ選手権などいろいろやってた。
メインはドミニオンという感じにはなっちゃうんだけど、思った以上に他のゲームも盛り上がってました。
アナログゲームではなく純粋にコンピュータゲームなんだけど。なぜ」紹介するかというと、デッキ構築ゲームだから。
ブラウザ上でできる、いわゆる基本無料というかフリーミアムというかアイテム課金のゲームだ。
中野のボードゲームショップ、ドロッセルマイヤーズが開発にかんでるらしい。そんなわけで、ボードゲームの文脈から出てきたものではあるし、ボードゲーム屋が作ったゲームでもある。
いまオープンベータテスト中なので未完成ではあるのだけど。
デッキゲームではあるが、ドミニオンクローンとはいいがたい。かなり違う。それだけで一定の評価に値するというかなんというか……。
まず、手札が5枚ではない。これは大きい。ラウンド終了時に自分の山札から5枚引くルールがある限りドミニオンと大差ない、というのは確か前にも書いたと思うけど。もちろんそれが4枚でも6枚でも同じ。
このゲームの場合、手札の枚数はなんと不定。何枚でも引いていい。
どういうことかというと。「トラブルカード」というのが、デッキ中に必ず4枚入っていて。2種類各2枚入っているんだけど、同じ種類のトラブルカードを2枚引いてしまったら「バースト」する。バーストというのはとにかく、そのターンはなにもできずに終わってしまう。バーストしないかぎりは何枚でも引いていいというわけだ。
こうなるともう、デッキゲームというよりキャントストップ系の雰囲気が出てくる。
このドロー方法とも関連するのだけど、カード獲得方法もだいぶ違う。獲得したら必ず、プレイエリアから1枚を廃棄しなければならない。つまり普通にやっていると、デッキの枚数が変わらないのだ。
ここまで違うと、もはやだいぶドミニオンではない。セオリーも考え方もかなり変わってくる。
ちなみに、その他のルールはだいたいドミニオンから流用している。アクション数、コイン、購入回数、という数値はそのまま残っている。
デッキゲーをやるとだいたい思うのは「銀貨強い」だ。なぜそうなるかというと、アクションカードが本家ドミニオンより弱いから。銀貨が相対的に強くなってしまうのだ。
本家ドミニオンのデザイナーほどゲームの構造を理解していないから「強すぎるカードをあえて入れる」をやれないんだろうと思う。まあ、ヴァッカリーノほどバカになるのはなかなか難しいのだが。
または、ドミニオンにルールを付け足して作られることがほとんどだから、その付け足したルールのフレーム上で制限が発生してしまうということもある。例えば『ハートオブクラウン』は、ゲーム中に必ず1回、6コインを支払い姫を擁立しなければならない。それが勝利条件の一部なのだ。だから、6コインが出せなくなるほど強力なアタックカードは作りづらい。ハートオブクラウンはかなり攻めている方なのだが、それでも、ドミニオンの魔女と同じカードは採用できなかった。
パイレーツオブリベルタでも、銀貨は強い。他のデッキゲームよりも強いくらいだ。アクションカードは弱めに見える。
しかし、少しやっていると意外とそうでもなくなってくる。そこはやはり、ゲームのフレーム自体が違うから。
ドミニオンはだいたい、銀貨より強く金貨より弱いアクションカードが中心のゲームなのだけど、このパイレーツオブリベルタは、銀貨より弱く安いカードがけっこう重要だ。このゲーム、ゲーム開始時の生産力では銀貨相当のカードが安定して買えない。そういう調整になっている。序盤は銅貨を買う場面もかなりあるし、1~2コストのカードの使い方が重要になってきたりもする。
また、そうした安いカードが重要だから、購入権(このゲームでは獲得数)の価値がドミニオンよりも高い。
そういう調整はもう完全にドミニオンから離れつつあると感じるし、おもしろい。
というあたりまでわかってきたところだ。
最初はよくわからないからいろいろなカードを買ってみるが、もちろん負ける。次に基本に立ち戻って銀貨を買うようにすると勝てるようになる。そして、その上で改めて考えてみると、上に書いたようなことが見えてきた。こういう学習過程は、たいていのデッキゲーで辿る。
逆にいうと、初見殺しということになる。買ったら負けるカード、罠ルートが大量にあり、それを知っているプレイヤーはものすごく有利になる。ドミニオンは経験者と初心者の差がとんでもなく大きいのだけど、原因はそこにある。パイレーツオブリベルタも、そのあたりは引き継いでいる。
こういうところはやっぱりデッキゲームだなあと思ったりもする。
なので、基本的な考え方には使える部分があるともいえる。なんだ、拙著『ドミニオンレシピ』に書いた生産力の考え方とかは有効だよとかいってみればいいのか。
「初見殺し」というか習熟度が勝率に反映されるところは、デジタルゲームだと思ってみるとそのほうがいいという気もしてくる。デッキゲームはそもそもデジタルゲーム的なのかもしれない。
ドミニオンよりもずっと運ゲーだ。リスクを犯してドローに成功してしまえば、例えば序盤に金貨が取れてしまう。拡大再生産するゲームだから、そうなったプレイヤーは非常に有利になる。バーストし続けたプレイヤーはどう考えても勝てない。そのあたり、ここまで運ゲーにシフトさせる必要あるのかとはまあ感じる。つねに勝てる可能性が残るので、これはいいところでもあるのだけど。
あと、キングメイカー問題も気になる(勝利点が表示されてる!?)。
そういう、なんか気になるところはそれなりにある。まあそういうのはあるものだし、ユーザには見えない理由があったりするんだけど。
とはいえ、そういうことを語れること自体が、オリジナルのゲームである証拠というか。デッキゲームの日本での受容のひとつのかたちとして、歓迎したいと思う。デッキゲーマーとしては(笑)。
惜しいのは、というか別に惜しくないけど、デジタルだというところか。アナログゲーマーとしてはもちろん、アナログで出てほしかったりはする。
そういえば、そのあたりも話さないといけない。このゲームはデジタルゲームである必要があるのか。
いちおうルール上は、アナログで実現できそうな感じになっている。カードの中にいくつか、デジタルでなければ実現できないものはあるのだけど。
では、この同じシステムを使ったアナログゲームを作って成立するかというと、怪しい。
例えばこのゲーム、勝利点が表示されているのだけど。このためには勝利点トラックが必要で、これはカードを獲得したり廃棄したりするたびにやらなければならない。かなり煩雑になるだろう。また、毎ターン必ずシャッフルするルールも面倒だ。ドミニオン流のコイン、アクション、購入権の管理は、このドロールールと併用するには複雑すぎ管理できないと思う。
そういういろいろな(アナログでやるには)煩雑なところがあって、アナログにしてしまうとおもしろさが損なわれてしまうだろうと思う。このゲームはデジタルでなければならないのかといえば、YESだ。
じゃあ、デジタルゲームとして、はじめからデジタルゲームの戦場で戦う力があるのかどうかというと、それは難しい問題だ。わからないけどどうなんだろう。
話を広げるなら。このゲームだけの話ではなく、そもそもゲームがアナログである必然性はどこにあるのか。
この問いは、最近かなりリアリティを帯びてきている。それこそドミニオンの最近の拡張カードの中には、アナログでやるには無理があるほど複雑な効果もあったりする。ドミニオンはとっくに、デジタル環境のほうが多く遊ばれているゲームなのだ。
たとえば最近のゲームでいうとテラミスティカは、ブラウザ上でAI相手に対戦するツールがある。こういう腕が勝率に直結するゲームでは、AI相手のソロプレイはとても有効だ。なにしろ試行回数が桁違いになり、習熟度に大変な差ができてしまう。そうして習熟したレベルが前提になったとき、それはアナログで完結したゲームといえるのか。あるいは、最初からデジタルではダメだったのか。
そんなことを考えていくと、アナログゲームのアイデンティティを保つのはけっこう難しい。実際、ウォーシミュレーションゲームやロールプレイングゲームはかなりの部分デジタルに取って代わられたわけで。
というあたりの話が、先日行われた沢田大樹氏の講演で話されていた。
いわゆるドイツゲームのアイデンティティは、彼の論の中では「ポリティクス」になるだろう。これは政治や駆け引きなどを意味する言葉だが、ゲームでいえば、プレイヤー間の政治がゲームに影響を及ぼすような要素、つまり誰か他のプレイヤーを指定して攻撃したり助けたり、変化を及ぼすことができる要素のことだ。
インタラクションといってもいいのだが、それよりも明示的に対象を指定するニュアンスが含まれている。
このポリティクスがあるのなら、対面のコミュニケーションが重要な意味を持つことになる。デジタルではまだ実現できない領域は残っているわけだから、アナログであることに意味はある。確かに。
そして近年のゲームではポリティクスが失われている、という話も講演で語られていた。
なるほど、すべてに賛成というわけでもないが、たしかにそういうところはある。コンピュータ上で遊べるようになり、ポリティクスが失われ、そうした状況で、ドイツ式ボードゲームは果たして自立し続けることができるのかどうか。たしかに考えてしまう。