ボードゲームの紹介です。もちろんドイツ製が中心。
ゲームのデータは公式ではなく、執筆者の主観です。てらしまはけっこう考えるスタイルのようなので、特にプレイ時間は長めになっています。でもメンツによって違うわね。
弱いといわれがち。じっさい強いとはいえない(笑)。ただ、開拓系の能力を持った種族というのはそれだけで一定の強さがある。このジャイアントも、やってみれば印象よりは点が伸びる。
動きは、なによりまず砦。これがないとほとんどなにもできない。1ラウンド目に建てる。この砦、土地を問答無用で変換できる能力は文句なく強い。加えて、パワーが5出る効果もとても強い。じつはパワーアクションで戦う種族だ。
砦を建てると開拓できるようになるので、開拓地を建てるのだけど。早めに神殿がほしい。【開拓地2点】の恩恵タイルがぜひ必要だ。
余談になるけど。なんかこれ、ほとんどの種族で書いてる気がする。この恩恵タイル、誰にとっても強いのだ。そう思うと、4人以上の場合1ラウンド目の手番順がさらに重要になったりするのかもしれない。わたしはまだそういうゲームの経験が少ないのだけど、もしも本当にこの恩恵タイルが早い者勝ちになるのなら、砦から入らなければならない種族は不利なのかも。あるいは、手を曲げて神殿から入ったりするんだろうか。
さて、そこから先。砦能力で6回土地変換できるから、街2個+1マスが確定している。あと3マスで街3個分になる。土地があればだけど、がんばれば狙うことはできる。船を使って、最初から赤い土地をうまく使えるといい感じになる。
あと、鋤レベルを上げる手もあると思うのだけど、やっぱりなかなか難しい気もする。
どう考えたって砦に頼らなきゃならないわかりやすさがあって、やりやすい。まあ弱いといわれている種族だし、勝ちきれないかもしれないけど。
ノマドの下位互換? たしかにノマドは強いのだけど。いちおう巨人の利点はある。砦と交易地から出るパワーだ。ノマドの場合パワーは他の種族からもらうのだけど、巨人のパワー生産は他のプレイヤーに左右されない。また、安定しているぶん配置で無理をしやすく、例えば妨害に向いているかもしれない。
あとは、鋤の得点タイルで4点とれるとか……。
変態種族その3。なんかもうぜんぜん違うゲームをやらされる。
初期の開拓地が1個というのはもう大変な不利なのだけど。代わりに、恩恵タイルをとるときに2枚とれる。つまり、開拓地が足りない分は恩恵タイルで生産力を上げろと。
最初はとにかく神殿。
恩恵タイルのとりかたにすごく幅がある。研究しがいがあると思う。とりあえずワーカーもコインも足りないので、生産力から入るのが基本ではあるだろう。けれど、それより教団ボーナスのほうが大事かもしれない。あと、やっぱり早めに勝利点系をとっておくことも大事。
神殿→聖域で恩恵タイル4枚なのだけど、それじゃ足りない(笑)。神殿をもう1件以上建てたほうがいいと思う。
あと、砦も悪くない。ワーカー2個出るし少し安いし。ただ、神殿が強すぎるから積極的には建てないなあ。
あらかじめ手順を決めるというよりも、途中の選択肢が広いので盤面に合わせていく種族だと思う。発展のかたちも、いろんな最終形がありえる。わたしが充分に研究できてないせいもあるかも。なのでここに書けることが少ない(笑)。
選択肢が広いだけに、うまくはまるとすごい伸びる。街3個作ってるところをよく見る(点になってるかどうかはともかく)。でも失敗したり邪魔されたりすると極端に苦しくなる。腕がものをいう感じ。
初期配置3個というのが強い。多くの種族に隣接してパワーをもらいたい。
あと、砦。これも強い。1ラウンド目に建てるのは間違いではない。ただ、しょせん地形を変換しているだけではあって。結果的に苦手地形を変換するなら得だが、その必要がないなら大した得にならない。他に地形変換の手段を用意できるなら、砦は必須ではない。
やはり初期3件というのが一番の特徴になる。パワーをもらいまくる展開を作れれば有利になる。また、自然に街3個を目指せるから積極的に狙っていきたい(無理なときは無理だけど)。
恩恵タイルはもちろん【開拓地2点】がほしい。もう1枚は【交易地3点】をとりたいけど、街3個のための資源が足りないと思えば生産系でもいいかもしれない。
つまり、砦を先行しないならおおむね基本どおり。勝利点をとる能力はないから、恩恵タイルなどでとれる機会を逃さずとる。
パワーが潤沢にもらえてるとうまくいく。ってそりゃ誰でもそうなんだけど、初期開拓地が3件だからそうなりやすい。
きつい種族。というかドワーフに対して有利な点があまり思いつかない。いま一番弱いと思っている種族だ。
砦は弱い上に高い。ひとまず存在を忘れていい。2マス飛ぶ能力は得点手段としてそれなりに有効なので、終盤に建てるなら悪いわけでもない、くらい。あと接続用。
で初動は神殿。
目指す最終形は、神殿1~2個+聖域(恩恵タイル3~4枚)。神殿を多めに建てる。あと神殿で得た司祭を早めに教団に送って教団ボーナスを狙う。
ちなみにこれ、じつは種族によらない話だったりするのだけど。最初の基本編に書いた手順では、恩恵タイルは神殿と聖域で2枚としていた。各種族の攻略もだいたいそれにしたがって書いていたのだけど。いまさらだけど、あれは少し乱暴で。教団ボーナス、特に鋤を拾えそうな展開のときは、神殿を多めに建てることができて、そのほうが点が伸びたりする。
ファキアはそもそも弱い。教団ボーナスでももらわないとやっていけない。そういう意味で、別に教団に強いわけでもなんでもないけど教団ボーナスを狙っていく。たぶん。
似たような話は、特徴が少ない種族ではだいたいあてはまる。ウィッチとか、マーメイドとか、砦を使わないノマドとか。得点能力がある分、種族の性能自体はファキアも悪くない。それなのに弱い印象の原因は、地形の弱さと種族相性だなーというところがある。
というわけで、戦い方はたぶんそんな感じなのだけど。じゃあファキアを選ぶ理由があるのかといったら、ここまでの話では、ないのだ。
そこで、どういうときにファキアをとるのかを考えたい。
まず、種族の相性。隣接色の茶、赤はもちろん、ひとつ離れたダークリングやドワーフあたりに邪魔されることもあるので注意。なにしろもともと地形が悪く、街を作る土地が不足がちだ。邪魔されるとさらにきつい。
いっぽう青と緑はおおむね味方。
このゲーム、隣人の動向はとても大きな要素だ。これだけでも充分黄を選ぶ理由になる。つまり番手が遅めのときに消極的に選ぶという話ではあるけど。
次に、得点タイルの流れ。ファキアの特徴は、最終ラウンドに絨毯飛行を使って少し加点できるところ。絨毯飛行には貴重な司祭が必要なので、終盤に司祭が余るまではなかなか使えないのだけど、最後に追い込みで使うだけでも悪くない点になる。というわけで、最終ラウンドの得点タイルが開拓地2点だといい。絨毯飛行でうまく得点できれば、街1個で足りることもある。
あとは、上にも書いた教団ボーナス。鋤を何回かとれないときつい。
そのあたりで条件が揃えば、選ぶこともあるかなあという感じ。じつは個人的には嫌いじゃないんだけど。
砦が強そうなのだけど、まあ強いんだけど思ったほどではない。1ラウンド目に建てて頼りきれるほどでもない感じ。
しょせん開拓地1個、1ワーカー2コイン分でしかない。砦に頼らずにいけるのならそのほうが早いだろう。本質的には、神殿先行のほうが効率がいい。そこは変わらないと思う。
むしろ、街建設時に5VPの能力が地味に強い。本体はこっちだ。できれば街3個を目指したいところ。
砦を除けば強いところがあるわけでもない。しかし街で5点追加の能力のおかげで、うまくいったときの最大得点は高め。安定して高得点が取れる種族ではないが強いときは強い、バクチっぽい種族だと思っているんだけどどうだろうな。
動きはわりと基本どおり。神殿を先行する。途中で砦が建ったら、3個目の街のために離れたところに開拓地を置ける。都合のいい土地が空いてるといいなあ。
街3個を目指すので、【街サイズ減少】や【1ワーカー1パワー】、【3コイン】などの生産系恩恵タイルは相性がいい。とはいえ勝利点系はやっぱり必要。
砦のタイミングといい恩恵タイルの選び方といい、なんかいちいち選択肢があってジレンマ。最終的には他プレイヤーの動き次第で得点が大きく変わるんだろうな。
最弱じゃね? と思ってたけどそうでもない(いま勝てる気しないのはファキア)。
砦で恩恵タイルをとれるというのは、思ったより強い。基本形の動きをしたとき、恩恵タイルが2枚でなく3枚取れる。
オウレンの砦は、教団レベルを上げる能力、若干のパワー生産、恩恵タイルの3つを同時に得られる。そう思うととても強いわけで、基本的に砦を先行する種族だ。砦先行する種族は動きがわかりやすくなるから、気楽でいい。
砦を建てたら、恩恵タイルは生産系か【開拓地2VP】をとる。恩恵タイルを3枚とれるから、生産系か【街サイズ減少】あたりを1枚組み込めるのがオウレンの強み。
砦の次は、開拓地を増やしながら神殿→聖域。もちろん教団ボーナスも積極的に狙っていく。教団系種族はみんなそうだけど、ワーカーや鋤を教団ボーナスでうまく拾えるかどうかが勝利の鍵になる。逆にいえば、そのへんをうまくとれそうなときに教団系種族を選ぶ。
恩恵タイルの生産力と教団ボーナスのブーストがうまくはまると、爆発的な発展を見せることもある種族だ。地味な印象のわりに。
種族の前に色の特性について。灰色の最大の強みは、東大陸でハーフリングやダークリングと共存できることだ。地形的にそうなっている。相手は開拓系種族なので、初期配置からずっと隣のマスで動き続けてくれる。そうなれば得をするのはこちらだ。パワーに困らない。
初期配置はとりあえず東大陸で、茶や黒の隣に配置する。その後は赤や緑を掘りつつ、砦能力で灰の土地に開拓地を建てる。飛び先(東大陸南地方)の隣には、すでにハーフリングかダークリングがいるだろう。裏面のエンジニアもそうなのだけど、地形がいいから計算しやすくて、わりとはっきりと手順を決めて打てる。なので、得点タイルがその手順に合っているときにドワーフを選べばいい。
まずは神殿だ。恩恵タイルは【開拓地2VP】。砦は生産力にならないので、最初は建てない。当面はパワーアクションなどで地道に地形変換する。パワーは隣接種族からもらう。
能力を使ったときに入る4点がとても強い。場合によっては街1個でも足りてしまうことがあるくらい。隣接した土地には使えないので、できるだけ穴を掘れるように開拓の順番を考えたい。
神殿のあとは、ひたすら開拓地を建て続ける。4ラウンド目あたりで、交易地が得点になるラウンドを狙い交易地をまとめて建てる。交易地も強いので、ここで一気にパワーとコインの収入が増える。
で、その収入を使って5ラウンド目に砦。その後は、砦の能力で穴を掘りまくってエリアをつなげる。
土地が足りていれば、聖域はなくてもいい。手順的に建てるタイミングがないのと、恩恵タイル1枚でも穴を掘っていれば点が足りてしまうのだ。聖域を建てる場合は、手順をみて交易地得点2種を使い分ける。
かなり確定した手順がある種族だ。色がいいからか、あるいはたまたまわたしが得意なのかもしれないけど。こういう種族は安定するので強い。
エリア得点は必要なので狙うのだけど、要所を邪魔されることがあるので注意。
教団は得意ではないけど、司祭の使い道がないのでボーナス狙いで送っていく。そうしていればそれなりに点になる。教団が不得手な種族はみんなそうだけど、1~2箇所狙いを決めて他を捨てるのがポイント。
強い種族のひとつだと思う。トップ5に入るのではないか。
変態種族その2。スウォームリングとは逆に、建物のコストが安い。その代わり生産力が低い。
いろいろ難しいところが多い種族なのだけど、要点をつかむととたんに動きやすくなる。要点というのは、2件目の神殿だ。これ、なぜか司祭ではなく5パワーが出る。
もうとにかく、2件目の神殿を建てないと話にならない。2ラウンド目には建てたい。
神殿2個がある限りパワーはどんどん沸いてくる。それをつかって、パワーアクションで土地の変換をする。スウォームリングとは逆の事情で、資源1個あたりの価値が高い。だから鋤レベルを上げることができない。パワーアクションでしか掘れないと思ったほうがいい。
神殿2件のあとはというと、終盤にパワーを捨てて聖域を建てるか、神殿3件目を建てるか。他の種族よりも恩恵タイルを多くとりやすい。なにしろ1資源あたりの価値が高いから、生産系の恩恵タイルの威力が高い。上に書いた最終形例では恩恵タイル4枚をとっている。
砦は、基本的には5ラウンド目に建てる。4ラウンド目ならもっといい。橋で勝手に勝利点が入ってくる能力は非常に強くて、基本的には街3個目よりもずっと強い。5ラウンドまでに2個目の街を完成させておき、橋で接続してしまうのが典型的な動きになる。
そんな感じで考えていくと、手順がだいぶ決まってくる。それを実現するように動けばいいわけで、慣れると得点が安定しやりやすい種族になる。
展開によるけど、教団も意外といける。司祭が余るから、教団に送れる。恩恵タイルでも進んでるし。ただ教団系種族が他にいる場合は追いつけなかったりすると思う。展開次第。
あと、砦+橋3本が完成した後の6ラウンド目。建物のコストが安いので、すごい回数動ける。なので6ラウンドで加点できそうなゲームのほうが、エンジニアに向いている。交易地3VPのときとか特によさそう。
安定している上爆発することもある、かなりの強種族のひとつだ。
とにかくまずはコンポーネント。大きくずっしりとしたポーカーチップがついてくる。だいたいこれと同じようなやつ。すごい。このへんはツォッホらしい感じ。
十数ミリの厚紙のチットとか、ボドゲだと多いしたしかにそれでもゲームできるんだけど、やっぱり、用具がしっかりしてるとやる気が違う。抵抗できない魅力というのがある。
そして、このてきとうなボード。この絵はなに? 外周のこれは勝利点トラックなの?
なんかもう、見た目がとりあえずすごいのだ。
ゲームのほうはというと。一言では説明できないのだけど、まずはバーストゲーだ。
窯から石炭を拾うのだけど、窯だから熱い。あんまりやると火傷してしまう。写真の黒いチップが石炭。表面には、数字か悪魔の絵がある。悪魔をめくったらその時点で失敗。バーストゲーだ。悪魔をめくらずにどれだけ価値のある石炭を拾えるか。
そんなバーストゲーを核に、オークションというかビッドも取り入れられている。
ラウンドが始まったらまず、ポーカーチップを手に握る。この握った額というのはなにかというと、石炭の数字の合計がどこまでいくかの予想だ。
おもしろいのは、ビッドを達成するのは自分でなくてもいいところ。誰か1人が達成すればビッドは成功になる。
ビッドが終わったら、石炭を引くフェイズ。スタートプレイヤーから順番に、石炭を引いていく。何枚引いてもいいけど、悪魔をめくったらその時点でバースト。バーストしたら、単独最下位のプレイヤーに50点支払わないといけない。
全員が引き終えたら、得点計算。ビッドに成功したプレイヤーは、ビッドした額と同額を受け取る。一番高いビッドをしたプレイヤーが成功していたら、さらに同じ額を受け取る。
あと、めくった石炭の価値の合計が一番高かったプレイヤーにはボーナス50点。めくった石炭の枚数が一番多かったプレイヤーにもボーナス50点。
で、次のラウンドだ。
めくった石炭は戻さずに次のラウンドにいくのだけど、石炭を真ん中に集めて釜の絵の口に収まるまで減っていたら、石炭を全部戻す。このへんのてきとうさもちょっと楽しい。
バーストとビッドを組み合わせて、さらに調整のため細かいルールを付け足した感じ。その結果、妙な味のあるゲームになっている。
で、おもしろいのかといったら、これがすごくおもしろい。独特で説明しづらいけど、おもしろいのだ。
なんだろうなあ。バーストの盛り上がりをちゃんと活かせてるのと、ビッドが楽しいのと。あとすごく分散の大きい乱数を使ってるからいつでも逆転の可能性があるとか。最下位を救済するルールがきっちり働いていて大差がつかないようになってるとか。
こういう細かいルールで調整されたゲームって、ぼやけた印象になることが多いと思う。調整のためとはいえ、ゲームの中心的なメカニクスと関係ないところから得点をもらってしまうと、軸がぶれなにをしているのかわからなくなってしまう。印象が薄れてしまう。あるいは、下位を救済するルールが機能しすぎて、なにをやっても差がないゲームになってしまったり。そういうゲームけっこうある。
このゲーム、そういうぼやけたゲームになってもおかしくなかったと思う。じっさいなっている面もあるのだけど。でも、おもしろいし盛り上がるのだからこれでいいのだ。
ぎりぎりの綱渡りですごくいいポイントを探り当てたという感じがする。それはコンポーネントの好印象も含めてのことかもしれない。
たぶん間違いなく盛り上がれるゲームだ。プリミティブなおもしろさというよりもきれいに調整された安定感があり、外れることが少ないと思う。オープンなゲーム会などにも安心して持っていける種類のゲームだ。
メビウス便。最近お気に入りのゲームのひとつ。前に『ロール・スルー・ジ・エイジズ』というゲームがあったのだけど、あれにとてもよく似ている。意識して作られたものという気がする。
あとこれ『村の人生』の作者の人なのね。
ゲームを買うとき、とりあえず箱の浦は見ると思う。そこで「えっ」と思うだろう。
ボードの写真があるのだけど。街らしきものが描かれていて、四角のマス目が並んでいる。そこに木駒を置くんだろうと思うのがふつうだが、写真はどうも様子が違う。ボードのマス目には、明らかに手書きと思しい、妙にゆがんだ図形が描かれている。
このゲーム、駒を一切使わない。獲得した資源も、建てた建造物も、すべて水性サインペンでボードに書く。
ボードの表面がそういう風に加工されていて、ちゃんと消せる。
サインペン1本あればいいんだし、コマが不要だから、かなりのコスト削減になっているはず。それなりに複雑なリソース管理もあるゲームなのだけど、この要素数のゲームとしてはだいぶ安い。
サインペン方式の理由はそれだけではない。さっき『ロール・スルー・ジ・エイジズ』の名を挙げたけど、このゲームもあれと同じように、サイコロを振る。サインペン方式なら、サイコロが駒に当たって動いてしまうという事故を防ぐことができるのだ。じっさいちゃんと合理的な理由だと思う。
ただ斬新なコンポーネントで人目を引くだけでなく、まあいちおう合理的な理由があるあたりは感心する。
すごい斬新な発明!っていう感じではないけど。コマとサイコロを併用するゲームだってたくさんあるんだし、それで大きな問題なのかといったらそうでもなくて。これじゃなければ実現できないゲーム性ってのも特になくて、絶対必要というわけでもない。でも物珍しいし、そこに合理性があるとうれしい。
あと、同人ゲームで使ってみたくなる(笑)。コスト削減できるの魅力。
そんなところもあるので、少し考えてみたい。この方式の利点と欠点と、どういうゲームに向いているのかについて。
まず利点はさっき書いた。コストを削減できることと、サイコロの邪魔にならないこと。
もうひとつ挙げるなら、書く操作の楽しさというのもある。コマを置くのとは少し違う、独特の楽しさがある。
もちろん、木でできたいろいろなかたちのコマを置くのは楽しい。だが、やはりリッチなコマは高い。多くのゲームでは単に立方体のコマを使っていたり、紙製のチットだったりする。やっぱり製造コストの制約っていうのはあるんだと、思ってしまうゲームはけっこう多くて。一定ラインを超えてケチなコンポーネントだと、ゲームそのものの楽しさが損なわれてしまうことにもなる。
このあたりの話ってよく語られるしそのとおりではあるんだけど、その語られている言葉以上に深いところで重要だという感じを持っている。例えば「見た目がいい」がゲーム性への評価と連続していることがある。あるいは逆に「見た目よりシステム」という言葉の裏に、見た目からくる楽しさへの評価が隠れていることがある。
で、サインペン方式だ。リッチなコマを使うほどの楽しさは提供できないかもしれないが、これはこれで独自の楽しさを保証できる。という気がする。とりあえず、コマのチープさで評価を下げることはない。
コマやチットを置くのとは少し違う楽しさがある。几帳面にマークを書く人もいれば、独創的な簡略化を発明する人もいる。そういう、ゲームとは直接関係ないかもしれないが操作自体の楽しさを持っている。
もっとも、サインペン方式自体が「しょぼい」といわれてしまったらどうしようもないし、そういわれることもあると思うのだが。
欠点のほうはというと、なによりも手が汚れることだ。
いや、手だけならいい。たとえばこの方式にカードを併用したら、カードも汚れることになる。カードの裏面にインクがついてしまったら、そのカードはもう使えなくなってしまう。
コマならまだいいが、やはり汚れるのはいやだろう。そういう意味では、他に一切のコンポーネントがないゲームが理想ということになる。
サンマロの場合は、サイコロがある。理想的にいえば、サイコロだって使いたくない。とはいえサイコロの汚れはそんなに大きな問題にならないから、許容できるといったところだろう。それに、さすがにサインペンとボードだけでは味気ない気もする。
そういう風に考えていくと、サンマロはサインペンゲームとして理想的に近い。理にかなっていると思うのだ。
コンポーネントの話ばかりでゲームのことを書いていなかった。
サイコロを振る、と書いた。その振り方も、だいたいロール・スルー・ジ・エイジズと同じ。
この方式、思い出すのはGREED!だが、他にも非常にたくさん採用されている。ゾンビダイス、海賊ダイス、ドラゴンダイス、……。とにかくすごくてきとうに乱造されている。それだけ完成されており、おもしろいシステムなのだ。
いくつかのサイコロを振り、そのうちいくつかをキープして、3回まで振りなおせる。このシステムにより、運に適度にプレイングを混ぜることができる。プレイングで少し操作できる乱数、というのは、ゲーム装置の理想形のひとつといっていい。
こうしたゲームは、どちらかというとパーティゲーム、ファミリーゲームに多い。でもこれよくできてるし、ゲーマーズゲームにも使えるのではないか? という試みが、いくつか生まれている。『ロール・スルー・ジ・エイジズ』もそうだし、このサンマロもそう。『王への請願』なども入れていいだろうか。
そういう奴だ。
そんな感じでサイコロを振ったら、目を1種類選ぶ。1種類しか使えない。
「商品」の目を選んだら、出ている商品の目の数だけ、街に商品を描く。「木材」の目を選んだら、コインを2個消費して、出た木材の目の数だけ木材を獲得する(材木置き場に木材を描く)。
そんな風に、目によってルールが決まっている。
おもしろいのは、資源が利益を生むまでに何回かの変換が必要なところ。たとえばコインを手に入れるためには、まず商品を手に入れ、次に商人を手に入れなければならない。建物を建てるためには、まず木材を手に入れ(そのためにはコインがいる)、次に建築家を手に入れなければならない。そんな風に、リソースを変換するルートがある。ゲーマーズゲームっぽい、リソースマネジメント的な要素だ。
他には、海賊が攻めてくるという要素がある。サイコロの目の中に海賊があって、それが出ると、海賊トラックに1個チェックをつける。これが一定の数溜まると、海賊が攻めてくる。
海賊の強さは決まっていて、だんだん強くなる。プレイヤーは、城壁を作ったり戦士を雇ったりしてそれに備えなければならない。防御に失敗したら減点だ。
この海賊はアグリコラでいえば食料に該当する。小目標だ。
ゲームの大きな目標はもちろん勝利点を稼ぎ勝利することなのだけど、それだけでは単調になるということで、特に長めのゲーマーズゲームでよく採用される手法だ。これによりゲームにメリハリが出て、飽きない。
リソースマネジメントに小目標。ゲーマーズゲーム的な要素がしっかり盛り込まれている。でもなにしろすべてがサイコロだから、なかなか思いどおりにはいかない、パーティゲーム的な楽しさもある。
ゲーム面でも理にかなった作りだと思う。
すべてがかみ合ってる感じがする。クレバーな作りだ。傑作なんじゃないか。
アナログゲームではなく純粋にコンピュータゲームなんだけど。なぜ」紹介するかというと、デッキ構築ゲームだから。
ブラウザ上でできる、いわゆる基本無料というかフリーミアムというかアイテム課金のゲームだ。
中野のボードゲームショップ、ドロッセルマイヤーズが開発にかんでるらしい。そんなわけで、ボードゲームの文脈から出てきたものではあるし、ボードゲーム屋が作ったゲームでもある。
いまオープンベータテスト中なので未完成ではあるのだけど。
デッキゲームではあるが、ドミニオンクローンとはいいがたい。かなり違う。それだけで一定の評価に値するというかなんというか……。
まず、手札が5枚ではない。これは大きい。ラウンド終了時に自分の山札から5枚引くルールがある限りドミニオンと大差ない、というのは確か前にも書いたと思うけど。もちろんそれが4枚でも6枚でも同じ。
このゲームの場合、手札の枚数はなんと不定。何枚でも引いていい。
どういうことかというと。「トラブルカード」というのが、デッキ中に必ず4枚入っていて。2種類各2枚入っているんだけど、同じ種類のトラブルカードを2枚引いてしまったら「バースト」する。バーストというのはとにかく、そのターンはなにもできずに終わってしまう。バーストしないかぎりは何枚でも引いていいというわけだ。
こうなるともう、デッキゲームというよりキャントストップ系の雰囲気が出てくる。
このドロー方法とも関連するのだけど、カード獲得方法もだいぶ違う。獲得したら必ず、プレイエリアから1枚を廃棄しなければならない。つまり普通にやっていると、デッキの枚数が変わらないのだ。
ここまで違うと、もはやだいぶドミニオンではない。セオリーも考え方もかなり変わってくる。
ちなみに、その他のルールはだいたいドミニオンから流用している。アクション数、コイン、購入回数、という数値はそのまま残っている。
デッキゲーをやるとだいたい思うのは「銀貨強い」だ。なぜそうなるかというと、アクションカードが本家ドミニオンより弱いから。銀貨が相対的に強くなってしまうのだ。
本家ドミニオンのデザイナーほどゲームの構造を理解していないから「強すぎるカードをあえて入れる」をやれないんだろうと思う。まあ、ヴァッカリーノほどバカになるのはなかなか難しいのだが。
または、ドミニオンにルールを付け足して作られることがほとんどだから、その付け足したルールのフレーム上で制限が発生してしまうということもある。例えば『ハートオブクラウン』は、ゲーム中に必ず1回、6コインを支払い姫を擁立しなければならない。それが勝利条件の一部なのだ。だから、6コインが出せなくなるほど強力なアタックカードは作りづらい。ハートオブクラウンはかなり攻めている方なのだが、それでも、ドミニオンの魔女と同じカードは採用できなかった。
パイレーツオブリベルタでも、銀貨は強い。他のデッキゲームよりも強いくらいだ。アクションカードは弱めに見える。
しかし、少しやっていると意外とそうでもなくなってくる。そこはやはり、ゲームのフレーム自体が違うから。
ドミニオンはだいたい、銀貨より強く金貨より弱いアクションカードが中心のゲームなのだけど、このパイレーツオブリベルタは、銀貨より弱く安いカードがけっこう重要だ。このゲーム、ゲーム開始時の生産力では銀貨相当のカードが安定して買えない。そういう調整になっている。序盤は銅貨を買う場面もかなりあるし、1~2コストのカードの使い方が重要になってきたりもする。
また、そうした安いカードが重要だから、購入権(このゲームでは獲得数)の価値がドミニオンよりも高い。
そういう調整はもう完全にドミニオンから離れつつあると感じるし、おもしろい。
というあたりまでわかってきたところだ。
最初はよくわからないからいろいろなカードを買ってみるが、もちろん負ける。次に基本に立ち戻って銀貨を買うようにすると勝てるようになる。そして、その上で改めて考えてみると、上に書いたようなことが見えてきた。こういう学習過程は、たいていのデッキゲーで辿る。
逆にいうと、初見殺しということになる。買ったら負けるカード、罠ルートが大量にあり、それを知っているプレイヤーはものすごく有利になる。ドミニオンは経験者と初心者の差がとんでもなく大きいのだけど、原因はそこにある。パイレーツオブリベルタも、そのあたりは引き継いでいる。
こういうところはやっぱりデッキゲームだなあと思ったりもする。
なので、基本的な考え方には使える部分があるともいえる。なんだ、拙著『ドミニオンレシピ』に書いた生産力の考え方とかは有効だよとかいってみればいいのか。
「初見殺し」というか習熟度が勝率に反映されるところは、デジタルゲームだと思ってみるとそのほうがいいという気もしてくる。デッキゲームはそもそもデジタルゲーム的なのかもしれない。
ドミニオンよりもずっと運ゲーだ。リスクを犯してドローに成功してしまえば、例えば序盤に金貨が取れてしまう。拡大再生産するゲームだから、そうなったプレイヤーは非常に有利になる。バーストし続けたプレイヤーはどう考えても勝てない。そのあたり、ここまで運ゲーにシフトさせる必要あるのかとはまあ感じる。つねに勝てる可能性が残るので、これはいいところでもあるのだけど。
あと、キングメイカー問題も気になる(勝利点が表示されてる!?)。
そういう、なんか気になるところはそれなりにある。まあそういうのはあるものだし、ユーザには見えない理由があったりするんだけど。
とはいえ、そういうことを語れること自体が、オリジナルのゲームである証拠というか。デッキゲームの日本での受容のひとつのかたちとして、歓迎したいと思う。デッキゲーマーとしては(笑)。
惜しいのは、というか別に惜しくないけど、デジタルだというところか。アナログゲーマーとしてはもちろん、アナログで出てほしかったりはする。
そういえば、そのあたりも話さないといけない。このゲームはデジタルゲームである必要があるのか。
いちおうルール上は、アナログで実現できそうな感じになっている。カードの中にいくつか、デジタルでなければ実現できないものはあるのだけど。
では、この同じシステムを使ったアナログゲームを作って成立するかというと、怪しい。
例えばこのゲーム、勝利点が表示されているのだけど。このためには勝利点トラックが必要で、これはカードを獲得したり廃棄したりするたびにやらなければならない。かなり煩雑になるだろう。また、毎ターン必ずシャッフルするルールも面倒だ。ドミニオン流のコイン、アクション、購入権の管理は、このドロールールと併用するには複雑すぎ管理できないと思う。
そういういろいろな(アナログでやるには)煩雑なところがあって、アナログにしてしまうとおもしろさが損なわれてしまうだろうと思う。このゲームはデジタルでなければならないのかといえば、YESだ。
じゃあ、デジタルゲームとして、はじめからデジタルゲームの戦場で戦う力があるのかどうかというと、それは難しい問題だ。わからないけどどうなんだろう。
話を広げるなら。このゲームだけの話ではなく、そもそもゲームがアナログである必然性はどこにあるのか。
この問いは、最近かなりリアリティを帯びてきている。それこそドミニオンの最近の拡張カードの中には、アナログでやるには無理があるほど複雑な効果もあったりする。ドミニオンはとっくに、デジタル環境のほうが多く遊ばれているゲームなのだ。
たとえば最近のゲームでいうとテラミスティカは、ブラウザ上でAI相手に対戦するツールがある。こういう腕が勝率に直結するゲームでは、AI相手のソロプレイはとても有効だ。なにしろ試行回数が桁違いになり、習熟度に大変な差ができてしまう。そうして習熟したレベルが前提になったとき、それはアナログで完結したゲームといえるのか。あるいは、最初からデジタルではダメだったのか。
そんなことを考えていくと、アナログゲームのアイデンティティを保つのはけっこう難しい。実際、ウォーシミュレーションゲームやロールプレイングゲームはかなりの部分デジタルに取って代わられたわけで。
というあたりの話が、先日行われた沢田大樹氏の講演で話されていた。
いわゆるドイツゲームのアイデンティティは、彼の論の中では「ポリティクス」になるだろう。これは政治や駆け引きなどを意味する言葉だが、ゲームでいえば、プレイヤー間の政治がゲームに影響を及ぼすような要素、つまり誰か他のプレイヤーを指定して攻撃したり助けたり、変化を及ぼすことができる要素のことだ。
インタラクションといってもいいのだが、それよりも明示的に対象を指定するニュアンスが含まれている。
このポリティクスがあるのなら、対面のコミュニケーションが重要な意味を持つことになる。デジタルではまだ実現できない領域は残っているわけだから、アナログであることに意味はある。確かに。
そして近年のゲームではポリティクスが失われている、という話も講演で語られていた。
なるほど、すべてに賛成というわけでもないが、たしかにそういうところはある。コンピュータ上で遊べるようになり、ポリティクスが失われ、そうした状況で、ドイツ式ボードゲームは果たして自立し続けることができるのかどうか。たしかに考えてしまう。
タイルにエラッタとか、かなりやっちまった感ある。しかも変なかたちのタイルで。
さらにルールブックがわかりづらいようで、エッセン後のレビューには「見るたびにルールが違う」なんてのがあった。読んでみるとたしかに、マニュアルの構成がいくぶん悪い。とはいえ思ったほどでもなかったけど。もともと独特で説明しづらいメカニクスでもある。
それよりもコンポーネント。いかにも間に合ってない。蟻のかたちのコマはいいんだけど、その他が。「育児蟻」は八角柱だし、幼虫はキューブだし。勝利点トラックに置く勝利点マーカーは厚紙じゃなくて木ゴマであるべきだよなあとか。ヘックスマスの描かれたボードにタイルを置くんだけど、ボードの六角形とタイルの六角形のサイズが合ってないとか。なんか全体に感じる野暮ったさとか。ちょっと難点が多すぎるんじゃないかなあ。
そんなわけでなかなかに印象悪い。なのだけど、いちおう、去年のエッセンの話題作の一角だったりする。
悪印象のせいもあったかもしれない。買ったのはだいぶ前なのに、いままで遊んでいなかった。でも遊んでみれば、さすがにおもしろかった。
ゲーム自体はワーカープレイスメントのアレンジだ。
2重の構造になっているのが特徴。ワーカー的なコマが2種類あって、それぞれ役割が違う。誕生フェイズには育児蟻コマを使い、働き蟻フェイズには働き蟻コマを使う。
育児蟻の仕事は、蟻の生産だ。幼虫と、働き蟻と兵隊蟻を作る。または巣の拡張とかもやる。ここは同時に処理するし、どう割り振るかだけ。
あ、ちなみに、幼虫はほとんどただの資源だったりする。資源コマと同じ大きさのキューブだし。食べれるし。
働き蟻はもうちょっとワーカープレイスメントっぽいことをやる。巣の中で資源生産に従事するか、巣の外に出ていって資源を探す。巣の外に出ていった働き蟻は帰ってこないので、どんどん消耗されていく。育児蟻で生産し続けないと、すぐにいなくなってしまうというわけだ。
ワーカーを作ったり簡単に死んだり、幼虫食べたり、このへんの蟻の世界の気持ち悪さが、とてもいい。簡単にコマが生まれたり消えたり変換したりするボードゲームの世界に妙にぴったりハマってて、じつに気持ち悪い。
ワーカープレイスメントって書いたけど、じっさいには違うというべきだ。ワーカーの働き先が共有地ではないから。その部分にインタラクションはない。少し先祖がえりして、ターン進行を分割したアクションポイントの変形といったほうが実情に近い。そのあたりは『エクリプス』もそうだった。
ワーカープレイスメントの欠点は時間がかかること。例外なくすべての行動に強いインタラクションがあるから、プレイヤーが悩んでしまう。そこがいいんだけど、そのままだとストレスが強すぎるのかもしれない。じっさい、ケイラスのあのジレンマのすべてが必要なのかといったらそうでもない気もする。
共有地をなくしたプレイヤーボード上でのワーカープレイスメント、つまりアクションポイントの変形にしてしまうことで、インタラクションによる考慮時間増加を抑えることができる。
そういうわけで、このゲームにはプレイヤーボードがある。プレイヤーボードはもちろん、蟻の巣。そして共有ボードは外の世界だ。共有ボードのマップ上に巣穴があって、巣から出た働き蟻はそこから出てくる。
この対比はすごくきれいだ。雰囲気はほんとにすばらしいと思うし、……もう少しボードの見た目がきれいなら、すごいゲームになれたんじゃないかと思ったりもする。それはいいすぎかな。名作になるかどうかってのは、ちょっとしたことの積み重ねだったりするなあとは思う。
他にもいろいろな要素が入っている。最近のゲーマーズゲームらしいところは、ゲーム環境を変える乱数。それも、ゲーム開始時などあらかじめわかっているかたちで使われる。結果を判定する乱数ではなく、最初に環境を変える乱数だ。これはもちろんドミニオンの王国カードに由来するものなんだけど。
テラミスティカのラウンドタイルやボーナスタイルと種族ボード、カッラーラのルールタイル、などなど、けっきょくいまのゲーマーズゲームにはだいたいある。ゲームによっては、いかにもムリヤリ加えられていたりもする。リプレイ欲求を煽るための非常に優れた仕組みなのは確かで、無視できないのだろう。
この蟻の国の場合、ゲーム開始時に「目標タイル」が6枚だけ配置される。達成したら勝利点が入る目標で、たくさん入っているけど6枚しか使わない。また、各年度の開始時にサイコロを振って、その年の各季節に起こるイベントが決まる。これは奇しくもテラミスティカのラウンドボーナスと同じもの。テラミスティカと同じくムリヤリ感はあるけど。
この組み合わせ、現代ボードゲームの最新理論のひとつといっていいと思っている。
革新的なものはなく名前がつくゲームシステムというわけでもないが、このように組み合わせることがだ。
重要なのでもう一度まとめると。
共有地を使わない、というのは、個人ボード上とか手札とかそういう意味。ワーカープレイスメントでなくてもいい。共有地はあってもアクション選択では使わないか、一部だけ使う。上にも書いたけど、ジレンマとストレスを減らして考慮時間を減らす効果がある。ソロプレイ感とかいわれるかもしれないけど、プレイしやすくはなる。
そうしてプレイしやすくしてどうするかというと、そのぶんさらに複雑な要素を盛り込むことができると……。
環境を決める乱数については、考えてみればカタンのマップだってそういうものだった。別に新しいものではない。ただ、当時より意識的にやっていると思う。
この組み合わせ、よく探せば過去のゲームにもあっただろう。単純に新しい斬新な発明ではない。しかし、それが具体的に意識してデザインされるようになったのはここ数年のことだ。特にワーカープレイスメント以後の試行錯誤と、ドミニオンショックの解釈と受容をめぐる混乱を経て、だんだんとかたちになってきた。
みたいな、そういう歴史の積み重ねの上で開発された、ゲームデザインの技術があるといえるんじゃないか。そのひとつが、上に書いた組み合わせだったりするんじゃないか。
蟻の国はそんな、最新式のゲームのひとつだとは思う。
プレイ感といい作りといい、テラミスティカによく似ている感じがあったりもする。同時期にテラミスティカがあったのは不幸かもしれないけど、ゲームとしてのまとまりでいえば蟻の国が上だろう。あとこの気持ち悪さもいい。
わたしの評価は高い。でもだからこそ、コンポーネント面の残念さがなんとも残念だ……。
前回忘れてたやつと新しく遊んだやつを追加。
いわゆるアイドルプロダクションをなんとかっていうテーマのゲーム。絵がいいですなー。
トリックテイキング的なことをやるんだけど獲得したものが手札に入る。特徴は、獲得した色1色はプラスの得点なんだけどそれ以外はマイナスというところ。
あと、リードされたカードによってルールが変わる。数字が大きいほど強いとか、小さいほど強いとか。でもこの部分は余分だなあと思った。
トリックテイキングで1色はプラス他はマイナスっていうだけでだいたい成立してるので、切り詰めるデザインならそれ以上加える必要ない。とはいえ、数字とスートのゲームとなってしまうとどうしても「あのゲームとどう違うの」になるだろうしなあ。ルールを加えたくなる感じもわからないでもないって感じ。とはいえ無駄ではあるしなー。
なにやら話題の奴……なんだけど、個人的にはそんなにピンとこなかった感じ。
「活版印刷」というのが強すぎるらしく。パッチが検討されているなんて話も聞いてて。わたしがプレイしたときは、活版印刷禁止でやった。なので使ったことないんだけど、あれは強そうだとは思った(笑)。ゲーム的には、序盤で戦略を分岐させて教会にいくルートを作りたいという意図があるわけで。そう思うと、禁止するのがいいとは限らないような気もする。
あと、収束しないケースがありそう。インドを目指しても勝てないとき、どうせダメだからあきらめてゲームを終わらせる、いわゆるキングメイカーがいないと終わらない場合がかなりある予感がする。船を進めなくても勝利点を稼ぐことができてしまうのだけど(活版印刷もそちら側だし)、それが意図通りならもう一つ終了条件が必要だろう。
コンポーネントの不親切さは一番気になった。建物には勝利点アイコンを書けたはずだし、商品売却時の勝利点はマニュアルとは別のサマリーが必要のはず。
など正直いろいろある。
とはいえおもしろいし、コマを金庫番にしたり勝利点記録に使ったりというところは美しいルールだ。
要は500円で出すべきゲームじゃなかった。と思うところもある。ゲームがふさわしいかたちを与えられなかったことは不幸なことで。500円だからとはわたしにはいえない。必要なコンポーネントとかカードのデザインとか、バランスの変更とかいろいろ含めて、5000円で作りなおしてほしい感じ……。
2人用ワーカープレイスメント。これたぶんわりとよくできてる。たぶんというのは、遊んだときにルールを一部間違えたらしいからなんですが。
ワーカープレイスメントなんだけど、ワーカーをその場で使う代わりに後宮に送ることができる。後宮に送るとしばらく帰ってこないからワーカーが減ってしまうけど、帰ってくるときに普通より強い効果がある。
意図がとてもわかりやすく、それがちゃんと表現されているようにも思う。
コンポーネントは白黒印刷の紙と手製のチット。それが悪いなんて無粋はいわない。これが好きで買う奴もいる(笑)。
けど、なんかもっとコストパフォーマンスのいい方法はあるだろうなとかは思う。これくらいの水準からはゲームの差より見た目の差のほうが大きくて、きれいならもっと遊ばれるのかもしれないなーとかも。どうだろうな。
中国古武術の師範が、弟子に奥義を伝える。奥義は3つあって、それらが4世代に渡って伝わっていく。できるだけ長く奥義を伝えたプレイヤーの勝ち。いい感じのテーマ。これを、カードを並べて表現するわけなんだけど。
カードは白黒印刷。でも1枚1枚の弟子に名前がついてるし、絵もついてる。よく見ると物語も書いてあったりしてうれしい。
弟子カードには、継承できる奥義のアイコンと矢印がカードに描いてある。矢印がつながるようにカードを置いて、奥義チットを矢印どおりに動かしていく。
そんな修行をしつつ、ときどき敵の道場との抗争もやる。同じ世代の相手の武狭を指名して、殴る。数字を比べて小さい方は死ぬ。そうすると、習得していた奥義は初代の手に戻ってしまう。
これもちゃんと成立してそうだと思った。1回しかやってなくてわからないところもあるけど。
2人用ならではの直接インタラクションがいい。あとテーマともかみあってる気がする。まあゲーム自体はわりと抽象的なんだけど、それを補強するフレーバーテキストがついてるところもいい。
ただ見た目がこう地味だと、プレイされること自体が難しいだろうなあと思う。でもこのゲームは、少なくともカードのデザインに関してはこの味がいい気もしてくる。難しい。
ドット絵の描かれたカードをドラフトして、獲得したカードを使ってチットを集める。同じ色のチットを4枚集めたら勝ち。ドラフトに少し工夫があって、右回りと左回りを同時にやる。
あとはカードの内容なんだけど。相手からチットを奪うとか直接インタラクションがけっこうあったりする。
カードの効果が複雑、というか特徴がなくて、なにをとったらいいかよくわからない。っていうと「この程度で?」っていうくらいの話ではあるんだけど、これはプレイヤーの印象の話だ。カードに2個ずつの効果を持たせてるのがよくないんだと思う。どっちを見ていいかわからない。あるいは、チットの色に特徴があるといいのかもしれない。「赤をとる」と「青をとる」との間に選択肢としての差がないケースが多い。あとインタラクション強すぎ問題も大きい。「どうせ奪われるならなんでも同じ」とプレイヤーに思考をあきらめさせてしまう。それが大きそうかな。
そんないろいろで、カードの選びようがないからドラフトの価値もわからないままだった。
個人的に評価高い。なにより絵がいい(笑)。
じゃあ絵がよくなかったらどうなのかというと、ふつうの評価になるかもしれないんだけど。いや絵って、みんなが考えるよりもずっと重要で、ゲームの一部だと思うんですよ。
まず、お金を使ってカードを買うフェイズがある。場に並んでいる1円から5円までのカードから、好きなものを選んで買う。所持金は番手によって違うんだけど、例えば1番手なら9円しか持っていない。お金は基本的に足りない。所持金がゼロになったら、0円で最弱の「市民」をとる。
そうやって、5枚のカードを持った状態でゲーム開始。スタートプレイヤーはカードを表向きに出す。他のプレイヤーは裏向きに出す。いっせいに公開。一番強い数字の勝ち。勝ったらそのトリックで登場したカードを全部獲得して、得点になる。
それだけ。シンプル。ただ、カードにはちょっとした特殊効果があったりもする。
去年話題になったラブレターみたいな、シンプルすぎるルールでくりかえし前提系の分類に入れてる。
これだけなので、なんだろう、地味というか、悪くないけどフックのないゲームっていう感想になってもおかしくない。でも絵やカードのデザインがほんとにいいのと、あとランダムサプライなのでちょっともう一回遊びたくなる。
ゲーム的なところでは、バランス感覚があってまとまりがいい。特殊効果テキストはあるんだけど、決して煩雑ではない。あくまで軽いプレイ感が大切にされている。そのあたりにぶれがなくて、完成度高く仕上がってる。
プレイヤーが美少女になって、主人公のハートを射止める話。雇われギルドと同じサークル3D6。個人的には今回、一番注目なのがこのサークルの2作だったりする。
美少女には表の性格と裏の性格があって、裏側は非公開。表にも裏にも特殊能力がいろいろあって、それをカードで使う。
えっそれじゃあ、裏の能力使ったらバレるじゃんって話なんだけど、そこは、ゲームマスターが処理するという。ある意味強引なやり方なんだけど、惨劇RoopeRとかもあったし。
昼間は学校でいろいろなイベントが起こって、それによって好感度が上昇する。このときは表側の能力を使う。
夜はというと、裏側の能力を使って陰湿に他人を妨害したりする。この処理をゲームマスターがやるんだけど、けっこう大変そうだった(笑)。
で、朝。夜の結果を受けて、他人の正体を推理する。「あなたじつはヤンデレでしょう!」とかそういうことをいう。当たったら、相手の好感度が下がり自分の好感度が上がる。
わりと適度に情報が出てきて推理できる感じで、楽しいんだけど。
ちょっと思うのはこれ、正体がばれても好感度が下がるだけなのだ。ばれても負けるわけじゃない。それだけの要素を実現するにしては、ゲームマスターにかける負担がずいぶん大きい気がする。
でもまあ、マスターの苦労はかまわないというのはある意味正しい。間違いさえなければ、少なくともプレイヤーは楽しめるわけだ。
いろいろ同人ゲームを見てきた中で、これは悪いというゲームにはいくつか類型がある。同人ゲームのアンチパターンだ。
そのひとつが、ジャンケンをアレンジしたゲーム。カードにアイコンかなにかがあり、その強さが3すくみになっているというやつ。たしかに3すくみというのはきれいなんだけど、ジャンケンはやっぱり楽しくないんだよなーという。
さてこのゲーム。ジャンケンそのものがゲームに組み込まれている。これはもう文字どおりの、手でグーチョキパーを出すあのジャンケン。カードに描かれたアイコンとかそういうのではなく。ここまで思い切っちゃうと逆にすごい。
たしかに、カードを使っても結局最後は運勝負、っていうゲームは多いわけで。それでいいのなら、いっそこれでもいいのかもしれない。いやどうだろう(笑)。
ゲームの感想としては、そこよりも調整が気になった。なにしろジャンケンなので、単純に勝てば有利なのは当然だしそれでいい。でも、それにしても救済が足りない。1回のジャンケンですごい差がつき、差がさらに開いていく。その構造が強すぎる。そこは残念。
もう少し別のルートを用意したり、勝利点を取るほど不利になるフィードバックを入れたり、なんかいろいろいじりたい気がする。
ここまでやったら、これはもうせっかくだから、納得いくバランスのゲームを見てみたくなる。
今回もたくさん出た人狼クローンのひとつ。注目すべき点はなんといっても、こっくりさん。狼が食べる村人を選ぶとき、こっくりさんで選ぶ。
どういうことかというと。まず全員でコインに指を置く。それの動きで食べられる村人を選ぶ。つまり、指に力を込めて動かしていいのは狼だけなのだ。
これすごくない? これならたしかに、ゲームマスターがいなくても秘密の選択を実現できる。
まあ、あとの内容は人狼そのものなんだけど。わたしは人狼ゲーマーじゃないから、人狼部分はゲームに見えない。
とはいえ人狼としてもたぶん怪しくて、なにしろ占い師がいない。たぶんこっくりさん方式で実現できないから。だから、情報がまったくないのに誰かを吊らなければならない。そのあたりはちょっと微妙だろうと思う。
でも、どうだろう。この方式で実現できる役職をなんとか考えて組み込めば、少人数のすごい人狼ができたりしないかな。もしかしていいんじゃないかこれ。っていうのを、ちょっと考えたくなった。
(つまらないことをいえば、素直に伏せカードで選択させればいいんだけど)
テーブルに動物タイルをぶちまけて、ひもでそれを囲む。「ネコ科1枚ごとに何点」とか「夜行性動物1枚ごとに何点」みたいな指示があって。
とても素直に楽しい感じ。ひもでできることを自然にやっていて、それがちゃんと楽しい。ってことは完成度高いといえるんだけど、印象は普通になりがちかもしれない。
タイルのデザインはなんか工夫したい。テーブルにぶちまけるとタイルの向きがバラバラになるわけだから、四隅にアイコンがあるデザインは見づらくなる。アイコンは1タイル1個までにして、代わりに色とか形とかにしたい。
なによりテーマがわかりやすいというか、ずるい。日本で一番普遍的なテーマはけっきょくこのへんのなのかもなーと思った。あえてがっつり世界観を作らない、あくまでコンピュータゲーム由来のファンタジーで、プレイヤーが最初から知っている世界を利用する。
知らなかったらどうなんだろうってのはもはやわからないんだけど。
ドット絵のゲーム今回多かった印象なんだけど、そこもたいへんずるい(笑)。とはいえこのゲームについては、あくまでそういうテーマなのでこれで正解だ。
ゲームは、髑髏と薔薇+ガントレット・オブ・フールズ的な感じといえばわかりやすい(でもそんなに似てない気もする)。シンプルで、ちゃんとおもしろい。
これが別のテーマでドット絵じゃなかったら、どうだろうな。イマイチになりそうな気がする。ありえないんだけど抽象的にしちゃったら、ダメそうだと思う。このテーマだからいい。
ただ考えてみると、プレイヤーは複数いるのに冒険者が一人だったり、カードをダンジョンに埋めたりキープしたりなにをやってるんだろうとか、ゲーム中にふとそのへんに気づいてしまったりはする。
勇者側と魔王側に分かれて戦う。魔王側は一人、勇者側はたくさん。
直球なタイトルどおり、トランプを使う。それ以外にキャラクターカードがついていて、これは絵がドット絵。まただ。前回のワンナイト人狼の影響とかなのかなあ。
すごく関係ないんだけど。魔王と勇者の話って、昔は確かに掃いて捨てるほどあったけど、いまはもうパロディしか残ってない気がする。アニメとか見ててそう思う。いまの若者たちってどうやって生きてるのかなあ。
まあそういうやつだから、我々おじさんに馴染み深いのは確かだ。
1回やったゲームでは、頭数が多い勇者側がずいぶん有利だった。あれルール合ってたのか。それとも展開によるのか。
ゲーム自体はちゃんと遊べるしキャラクターカードの能力もいろいろあって楽しい。「魔王がすごい強くてしっかり連携しないと倒せない!」という展開になるなら楽しそうだと思うんだけど、どうなんだろうな。
追記:やっぱり間違ってたらしい。けっこう違うのかもなのでまたどこかでやります。
ぜんぜんやってないなー。
人狼系と一部の地雷系や一発芸系を除くと、似たようなクラスのゲームがたくさんあるっていうのがいまのところの印象だったりします。まあ世間を騒がせてるアレとかアレをやってないんだけど。
ゲーム面では水準に届いてるのが多くて(あるいは、一カ所直せばというくらい)。あとは、まあけっきょく、絵や見た目で差がつくというか……。
まあ個人的に、絵が占める割合はかなり高くなってるんです。プロパー作品と比肩できる見た目だと星2個分くらい上がります。ていうか同人の絵って、すごいやつはプロよりも上にいっちゃうことあるけど。
これはたぶん、自分だけの話じゃなくて。マニアはなんでもやるかもしれないけど、そうじゃない人はそもそもきれいじゃないと遊んでくれないです。見た目が不足してるものは「それなり」までしかいえなくなってしまってる。と思う。
今回自分が見た中で多かったのがドット絵ですが。あれはそのあたりの空気をどっかで感じて、でも絵描きが用意できない場合に有効なのかなーと思った。技術がなくても、例えば32x32のドット絵なら、1024回クリックすればできる……ごめん嘘ですそんなことないですが、まあ普通に考えて、普通のイラストよりは手間がかからないわけで。でもやっぱり見慣れてくると、ごまかしの技法に見えてくる気もする。次回くらいにはもう飽きられて通じなくなったりするのかもなあ。